薬用植物の遺伝的・形質的多様性の極長期保存技術構築に関する研究

文献情報

文献番号
199900032A
報告書区分
総括
研究課題名
薬用植物の遺伝的・形質的多様性の極長期保存技術構築に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
吉松 嘉代(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 下村講一郎(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
熱帯多雨林地帯をはじめ地球上に分布する多様性に富んだ植物資源は、現代医療でも完治が難しいとされるアレルギー等の各種疾患や新たに見い出される感染症等に有効な次世代の新薬開発原料として重要であり、欧州、米国等の先進国で特に注目されている。しかしながら、アジア、アフリカ地域での急激な人口増加、大気汚染、森林伐採の継続ならびに大気中二酸化炭素の増加による地球温暖化にともなう世界的な環境破壊および砂漠化により、地球上の植物の遺伝的多様性が失われつつある現状にあり、これらの多様性の維持および保存技術の確立は緊急性の高い課題である。本研究では、最新技術によるこれらの多様性の保存法の構築を行う。
研究方法
国内外の種々の薬用植物を材料に、培養条件(温度、栄養培地、植物生長調節物質等)を検討し、組織培養による植物種および多様な形質を持った植物の維持法の確立を行う。また、同様に培養方法を改良し、それらを有効利用するための大量増殖および種苗生産技術を確立する。そして大量に得られた組織培養物を材料に、極長期保存技術として現在最も有望視されている液体窒素温度(-196℃)における超低温保存技術の構築のため、ガラス化法による超低温保存法について検討する。また、確立した組織培養系および超低温保存後の組織培養物の薬用成分について、HPLC法による定量定性分析を行う。
結果と考察
平成11年度においては、オーキシン非要求性のヒヨス不定根(非形質転換根)培養を確立し、増殖のための液体培養条件を調べると共に、ガラス化法による超低温保存条件を調べた。その結果、超低温保存前の液体培養条件、前培養条件および超低温保存試薬の調製に用いる基本培地の組成が、保存後の再生率に影響を与えることが判明した。ヒヨス不定根はMS培地よりWP培地で良好な生育を示すが、MS培地で約2週間培養した対数増殖期の不定根を材料として、前培養培地はWP培地、脱水およびガラス化液処理はMS培地を用い、0℃で10分間ガラス化液処理後、超低温保存した不定根の解凍後の再生率は90%以上であった。この結果は、毛状根と同様に非形質転換根においても、保存前の根の生育状態が保存後の再生率に与える影響が大きいことを示唆している。超低温保存後再生したヒヨス不定根のトロパンアルカロイド生産能は速やかに回復することが判明した。さらに、ビャクダンの種子胚を培養し、植物ホルモン無添加培地で増殖し再生する不定胚培養系を確立した。オタネニンジン、オウレン、ケシ、ビャクダンの不定胚を、グリセロールと高濃度の糖を含む培地で前培養後、ガラス化液処理を25℃で20ないし30分間行うと、超低温保存が可能なことが判明した。
結論
非形質転換根においても、ガラス化法による超低温保存が可能であり、種々条件を最適化することにより、高い再生率が得られることが判明した。また、熱帯性植物のビャクダンを含む薬用植物不定胚は、高濃度の糖と共にグリセロールを添加した培地で前培養を行うことにより、超低温保存後、良好に再生し復元植物体が得られたことから、種子に替わる遺伝子資源として期待できるものであることが判明した。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-