基礎自治体(広域型・単独型)における介護保険制度の効率的運用と政策選択基準に関する研究

文献情報

文献番号
199900014A
報告書区分
総括
研究課題名
基礎自治体(広域型・単独型)における介護保険制度の効率的運用と政策選択基準に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
野口 定久(日本福祉大学)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田和明(日本福祉大学)
  • 平野隆之(日本福祉大学)
  • 木戸利秋(日本福祉大学)
  • 近藤克則(日本福祉大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、介護保険制度の円滑な運用をめざして、基礎自治体(広域方式と単独方式)における社会サービス提供システムの効率的運用手法及び介護サービスや実践の臨床的分析から政策評価・事業評価につなげるためのの手法を開発することにある。この実証的政策評価研究の目的は、第1に介護保険制度の導入前と導入後において、基礎自治体それぞれの対応型(広域方式と単独方式)における社会サービスの供給量や供給システムの変化並びに福祉政策とその財政効果の評価分析を行うこと、第2に介護保険下で提供される医療・保健・福祉サービスの効果分析を進めるための臨床的評価尺度手法の開発とその実用化を図ること、第3に広域方式型及び単独方式型の介護保険制度の効率的な運用システムの評価指標の開発などに絞られる。
研究方法
研究推進組織を以下のように構成した。1.政策・計画ワーキンググループ(WG)① 行政評価の先進国である英国のコミュニティケア政策を中心に英国で進行している福祉政策評価の分析② 基礎自治体において介護保険制度の運用方式は広域方式と単独方式に分けられるが、主として広域方式の類型化に基づく、各類型毎の特色の分析③ 広域方式と単独方式の事例研究法による計画項目の選択等の分析④ 介護保険制度をめぐる「福祉計画」と「行政評価」の位置づけ及び介護保険事業計画と高齢者保健福祉計画の位置づけの分析2. 臨床・評価指標ワーキンググループ① 高齢者・要介護者に関する事前評価;介護保険制度導入前実施の調査に独自項目を加えた分析② 介護保険政策の臨床的評価研究の基本構想づくり;多専門分野にわたる研究協力による3ヵ年間の縦断的研究法の採用③ 文献学的研究に基づく臨床的尺度の開発;高齢者の要介護状態に関する先行研究を文献学的に考察し、政策評価に必要と思われる因子分析
結果と考察
Ⅰ.英国との比較研究では、今後の英国の地方自治体レベルでのコミュニティケア政策の展開と政策評価の継続的なフォローアップが本研究の進展にとって不可欠であると思われる。Ⅱ.介護保険と広域連合との関係関係では、広域連合による介護保険事業の取り組みのメリットの一つとして、人事・財政面の経費削減にあるとともに、「中心市型」では相対的に中心市の負担が大きくなる傾向がみられるが、「小規模連合型」「対等型」では単独型に比して規模の拡大によるメリットがみられることが判明した。Ⅲ。広域方式・単独方式の比較では、広域方式の選択を行った基礎自治体では、市での選択比率が少なく、村の選択率が高くなっており、脆弱な介護基盤整備をカバーする機能として町村が選択していることなどが判明した。Ⅳ.福祉行政の評価に関する研究では、アメリカにおける行政評価制度(オレゴン改革委員会)のベンチマーキングの項目をわが国の福祉先進自治体として知られる愛知県高浜市に応用させ、高浜版の具体的な評価項目を設定した上で、実験的に行政評価手法の開発を試みる可能性をみることができた。Ⅴ.医療・福祉サービスの効果分析では、次年度以降の分析結果に基づいた、より簡便で実用性と信頼性・妥当性のある介護評価のための最小限評価尺度の組み合わせの開発が期待される。
結論
① 介護制度における英国と日本の違いにもかかわらず、政策枠組みや評価の内容において一定の方向への収斂が認められた。② 現在進展中の広域連合による介護保険事事業への取り組みがいくつかの面で制度運営の効率化と公平化に寄与していることが判明した。③ 基礎自治体が採用した「広域方式」は、比較的資源基盤の脆弱な町村対策として推進され、そ
の積極的な対応を図った岐阜と三重を調査対象にしえたことは本調査研究の有効性を高める結果となった。④単独方式の場合には、財政力指数や在宅介護力指数、在宅サービスの基盤整備率が影響していることが分かった。⑤高齢者、要介護者、介護者を評価するためには、臨床レベルの評価研究の基本構想づくりのプロセスを通して、CGAの枠組みおよび各因子の尺度を選択したことが分かった。

公開日・更新日

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更新日
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