文献情報
文献番号
199900013A
報告書区分
総括
研究課題名
DRG導入検討モデルとしての冠動脈インターベンション(PTCA)全国コストデータベースに関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
茅野 眞男(国立病院東京医療センター 循環器科)
研究分担者(所属機関)
- 山口徹(東邦大学医学部付属大橋病院)
- 中西成元(国家公務員共済虎ノ門病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は冠動脈インターベンョンたる経皮的冠動脈形成術(以下PTCA)症例に限定した本邦初のコストデータベース(以下DB)を作成し、これをモデルとして、将来に予想される医療費の疾患別定額払い(DRG/PPS)施行の問題点を早急に検討することである。
研究方法
日本心血管インターベンション学会保険委員会の協力を得て全国規模のデータベースを作成、各病院急性心筋梗塞を含む連続50例を中央入力するのであるから、参加しやすいという特徴がある。登録実績は、参加病院38施設、登録症例1900例である。それを、急性心筋梗塞にprimary PTCA施行群(以下急性心筋梗塞群)と、primary PTCAを施行しない群(以下待機群)の2群に分けた。
PTCA施行例の初回入院に於ける入院日数、該当月入院費、全期間入院費をそれぞれ従属変数として、患者特性、病院特性およびPTCA手技関連特性、合計46因子を説明変数とした。従属変数値の変動に寄与する説明変数の程度をみる指標として、p値でなく、決定係数(相関係数の二乗)を使った。解析は統計解析会社スタッツに依頼した。
国立病院等での試行DRG/PPSでは、PTCAで159万円、手技料17万円を加えて175万円を参照値とした。
参加病院の全体会議は、平成11年3月と平成12年4月に開かれ、欠損値問題、病院名と患者個人情報の守秘問題が検討された。
PTCA施行例の初回入院に於ける入院日数、該当月入院費、全期間入院費をそれぞれ従属変数として、患者特性、病院特性およびPTCA手技関連特性、合計46因子を説明変数とした。従属変数値の変動に寄与する説明変数の程度をみる指標として、p値でなく、決定係数(相関係数の二乗)を使った。解析は統計解析会社スタッツに依頼した。
国立病院等での試行DRG/PPSでは、PTCAで159万円、手技料17万円を加えて175万円を参照値とした。
参加病院の全体会議は、平成11年3月と平成12年4月に開かれ、欠損値問題、病院名と患者個人情報の守秘問題が検討された。
結果と考察
概要では初回全入院費の検討のみ述べる。
1.基本統計量
急性心筋梗塞群616例、待機群1231例の2群に分けて平均値を述べると、平均入院費は254万円と175万円、材料費(技術料16万円を含み、主にPTCAバルーンballoon代)は、147万円、120万円、平均在院日数25日と16日、平均ステント数0.65本と0.61本、平均使用バルーン(ステントを除く)1.6本と1.6本。待機的群での難治typeC病変20%、PTCAか冠動脈バイパス手術(CABG)の既往20%であった。
米国のmedicare part A &Bでは、急性心筋梗塞の有無にかかわらずPTCA100万円とされている。日本のPTCA入院は米国と比べて高額であり、その理由は材料費の内外価格差である。
2.PTCA入院医療費の変動要因の分析
いちばん大きな決定係数をもつ因子は急性心筋梗塞primary PTCAの有無であったので、以下はそれを分けて述べる。急性心筋梗塞群で寄与の大きい因子は、病院番号23%、急性心筋梗塞重症度16%(IABP24%を含む)、次いで使用材料(バルーンとステント10%、同一入院で複数回PTCA8%を含む)、病院経営主体8%であった。待機群では、入院死亡23%、IABP 17%,合併症後CABG 12%といった手技後合併症に関する項目、次いで使用材料(バルーンとステント13%、同一入院で複数回PTCA10%を含む)、そして病院番号7%の順であった。
初回全入院費に対する決定係数の大きい順に、得られた結果を述べると、
1)急性心筋梗塞の有無でDRG番号を分けるべきである、2)バルーンやステント本数といった材料費関連の寄与が大きい、3)病院番号の決定係数が大きいので、PTCA-DBでは登録症例数より病院数拡大が重要である、4)急性心筋梗塞の有無で分けて検討すると、急性心筋梗塞症群では重症群で入院費が約100万円高額となる。5)待機群では、PTCA合併症の寄与が大きく、合併症後CABGになる場合は500万円以上の病院損失となる。6)待機群では同一入院複数PTCAが大きな決定係数であり、DRG/PPS施行の場合は分割入院の対策をとってくると予想される。7)試行DRGでは参加病院が国立病院に偏っている。待機的PTCAでは問題でないが、急性心筋梗塞では問題である。
急性心筋梗塞の重症度やPTCA後合併症で入院費の変動が大きくなるのは当然の結果と理解でき、DRG/PPSの際に考慮すべき点である。
3. 長期入院例での病院損失
長期入院例の定義は、国立病院試行に於けるPTCA特定入院期間(high cutoff point)45日を越える症例とした。待機群に於いて、PTCA施行前に既に持っている疾患(併存症)と、PTCA施行と関係して発生した問題(合併症)に分けて、入院費を検討した。
待機群の入院費全期間は平均175万円、PTCAを施行した該当月のみの入院費は平均162万円。そのうち長期入院例68例(平均76才、院内死亡3)、その入院期間は平均70±25日、入院費全期間は平均515±284万円。
併存症群55例は高額の順に、心臓大血管手術 11例(入院日数70日、全期間入院費576万)でうちCABG 5例。ちなみに試行DRG/PPSでは、high cutoff point93日、CABGで360万円である。同一入院複数PTCA 7例(63日、374万円), 腫瘍4例(同337万円)、透析6例(63日、316万円)、理由が特になし 14 例(58日、286万円)であった。心臓大血管手術や同一入院複数は、入院分割により対処されると予想される。
合併症群は9例、それぞれ入院中死亡3、IABP挿入 6(施行前1)、同一入院でCABG施行5(全期間入院費平均1080万円)24時間以内CABGが1、24時間以降4で、PTCA後ひきつずいてCABGになった場合は700万円もの病院損失になると予想される。
1.基本統計量
急性心筋梗塞群616例、待機群1231例の2群に分けて平均値を述べると、平均入院費は254万円と175万円、材料費(技術料16万円を含み、主にPTCAバルーンballoon代)は、147万円、120万円、平均在院日数25日と16日、平均ステント数0.65本と0.61本、平均使用バルーン(ステントを除く)1.6本と1.6本。待機的群での難治typeC病変20%、PTCAか冠動脈バイパス手術(CABG)の既往20%であった。
米国のmedicare part A &Bでは、急性心筋梗塞の有無にかかわらずPTCA100万円とされている。日本のPTCA入院は米国と比べて高額であり、その理由は材料費の内外価格差である。
2.PTCA入院医療費の変動要因の分析
いちばん大きな決定係数をもつ因子は急性心筋梗塞primary PTCAの有無であったので、以下はそれを分けて述べる。急性心筋梗塞群で寄与の大きい因子は、病院番号23%、急性心筋梗塞重症度16%(IABP24%を含む)、次いで使用材料(バルーンとステント10%、同一入院で複数回PTCA8%を含む)、病院経営主体8%であった。待機群では、入院死亡23%、IABP 17%,合併症後CABG 12%といった手技後合併症に関する項目、次いで使用材料(バルーンとステント13%、同一入院で複数回PTCA10%を含む)、そして病院番号7%の順であった。
初回全入院費に対する決定係数の大きい順に、得られた結果を述べると、
1)急性心筋梗塞の有無でDRG番号を分けるべきである、2)バルーンやステント本数といった材料費関連の寄与が大きい、3)病院番号の決定係数が大きいので、PTCA-DBでは登録症例数より病院数拡大が重要である、4)急性心筋梗塞の有無で分けて検討すると、急性心筋梗塞症群では重症群で入院費が約100万円高額となる。5)待機群では、PTCA合併症の寄与が大きく、合併症後CABGになる場合は500万円以上の病院損失となる。6)待機群では同一入院複数PTCAが大きな決定係数であり、DRG/PPS施行の場合は分割入院の対策をとってくると予想される。7)試行DRGでは参加病院が国立病院に偏っている。待機的PTCAでは問題でないが、急性心筋梗塞では問題である。
急性心筋梗塞の重症度やPTCA後合併症で入院費の変動が大きくなるのは当然の結果と理解でき、DRG/PPSの際に考慮すべき点である。
3. 長期入院例での病院損失
長期入院例の定義は、国立病院試行に於けるPTCA特定入院期間(high cutoff point)45日を越える症例とした。待機群に於いて、PTCA施行前に既に持っている疾患(併存症)と、PTCA施行と関係して発生した問題(合併症)に分けて、入院費を検討した。
待機群の入院費全期間は平均175万円、PTCAを施行した該当月のみの入院費は平均162万円。そのうち長期入院例68例(平均76才、院内死亡3)、その入院期間は平均70±25日、入院費全期間は平均515±284万円。
併存症群55例は高額の順に、心臓大血管手術 11例(入院日数70日、全期間入院費576万)でうちCABG 5例。ちなみに試行DRG/PPSでは、high cutoff point93日、CABGで360万円である。同一入院複数PTCA 7例(63日、374万円), 腫瘍4例(同337万円)、透析6例(63日、316万円)、理由が特になし 14 例(58日、286万円)であった。心臓大血管手術や同一入院複数は、入院分割により対処されると予想される。
合併症群は9例、それぞれ入院中死亡3、IABP挿入 6(施行前1)、同一入院でCABG施行5(全期間入院費平均1080万円)24時間以内CABGが1、24時間以降4で、PTCA後ひきつずいてCABGになった場合は700万円もの病院損失になると予想される。
結論
1.DRG番号の数は例えば500が適当とされ、何を独立した番号に採用するかのルールを公開する必要があるが、決定係数が以上の成果からも有用である。
2.DRG/PPS施行の前に、材料費問題(内外価格差)を検討すべきである。
3.待機的PTCAでは、初回入院のみの包括では意味が無く、追跡調査データにもとずいた検討が必要である。
4.急性心筋梗塞では、病院番号が大きな寄与を示しているので、今後作られるDBは、登録症例数を増やすより登録病院を増やす必要がある。重症加算はDRG/PPSでは一般に認めないが、重症群の決定係数が高いので、重症例の入院拒否や虚偽記載問題が議論されるべきである。
5.入院費バラツキを抑制する方法として、DRG/PPSが唯一の対策か、例えば学会治療ガイドラインの徹底も有効ではではないか。
2.DRG/PPS施行の前に、材料費問題(内外価格差)を検討すべきである。
3.待機的PTCAでは、初回入院のみの包括では意味が無く、追跡調査データにもとずいた検討が必要である。
4.急性心筋梗塞では、病院番号が大きな寄与を示しているので、今後作られるDBは、登録症例数を増やすより登録病院を増やす必要がある。重症加算はDRG/PPSでは一般に認めないが、重症群の決定係数が高いので、重症例の入院拒否や虚偽記載問題が議論されるべきである。
5.入院費バラツキを抑制する方法として、DRG/PPSが唯一の対策か、例えば学会治療ガイドラインの徹底も有効ではではないか。
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