医療への患者参加を促進する情報公開と従事者教育の基盤整備に関する研究

文献情報

文献番号
199900012A
報告書区分
総括
研究課題名
医療への患者参加を促進する情報公開と従事者教育の基盤整備に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
岩井 郁子(聖路加看護大学)
研究分担者(所属機関)
  • 石田昌宏(日本看護協会政策企画室)
  • 香春知永(聖路加看護大学)
  • 小谷野康子(聖路加看護大学)
  • 佐藤紀子(東京女子医科大学)
  • 辻本好子(ささえあい医療人権センターCOML)
  • 豊増佳子(聖路加看護大学)
  • 鳥羽克子(聖路加国際病院)
  • 中木高夫(名古屋大学)
  • 樋口範雄(東京大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
9,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフォームド コンセント(以下IC)の理念に基づく医療の重要性が高まっている中で、医療法の改正や、診療情報開示に関する提言がなされた。これらのわが国における革新的な政策が、その本来の目的を達成するためには、国民・患者および医療従事者がこれらの目的・意義を共通認識することが必須の条件となる。そこで本研究では、診療情報の積極的な提供とその一環としての診療記録の開示の目的が適切に運用・活用されるための基盤整備への提言を目的とする。
研究方法
目的を達成するために1999年6月~3月、昨年度の調査の記述統計と質的分析から得られた結果、および追加調査から得られた結果から、基盤整備の課題やその背景についての分析と明確化をさらに深め、課題解決の方向性を探究し、提言を行う上での資料を得た。
具体的には①医学生を対象に昨年度と同様の調査を実施し、分析、②実態調査約870人の自由記載の内容を質的に分析し、記述結果で明らかになった課題の背景および基盤整備に関する課題を探究、③医療の実態に応じた情報提供・開示のあり方を明らかにする目的で、有識者から直接意見を聞き検討した。
結果と考察
医学部5・6年生、181名(回収率71%)を対象とした情報提供に関連する実態調査結果、情報提供には関心を持ち、消極的ながら、診療記録の開示にも賛成をしている。開示について「とてもそう思う」と答えた医師群が20%であったのに対し、医学生は15%であった。開示によって起こることについても、「患者は理解できない」82%、開示の準備は「書き方の検討」91%、「法制化賛成」30%など昨年度の調査対象との比較においても、国民・患者との乖離が著しいこと、また、情報提供は専門家基準に基づくと考えており、危険因子に関する情報提供には消極的であった。基盤整備として、医学教育において、インフォームドコンセントの理念とその実際、本政策の目的・意義の認識への教育、倫理教育などの必要性が示唆された。
実態調査に自由記載した約870名中有効記載834件の分析結果、国民・患者群は、情報提供・開示に向けた、慎重な対応、意識改革、医療システム・教育の改革など多様な提言であった。
医療従事者群は、情報提供・記録開示の前提として解決すべき課題に関する意見が多く患者側の意識改革、コスト保証、医療システムの検討、記録の整備、倫理意識の向上、法制化是非など多岐にわたっていた。
積極的情報提供をめぐる課題を中心とした有識者(国民・患者および医療従事者)からの直接的な意見として、国民・患者は、本政策の積極的推進への期待および法制化への期待であり、患者側が取り組むべき課題および医療従事者側が取り組むべき課題が指摘された。
診療記録管理の立場からは、記録管理上の課題として、物理的、人的、質的な課題と医療システムの再構築の検討、記録の基準化と整備、診療録管理士の強制的配置案など課題解決への提言があった。
医療従事者医師、看護婦・士、薬剤師)はインフォームド コンセント実現の条件として、医療従事者側の課題、患者側の課題、新たな支援システムの構築・医療機関の治療水準、アウトカムリサーチの公開、リスクマネージメントを含めた医療の質管理法の設定などの積極的提言があった。
これらの研究によって、診療情報提供とその一環としての診療記録開示に関する国民・患者および医療従事者の認識とその背景にある要因、ならびに基盤整備への提言の基礎資料が得られた。
結論
以上の研究によって、下記に関する基盤整備への提言が可能となった。
①国民・患者および医療従事者が取り組むべき共通課題と基盤整備への提言
②国民・患者が取り組むべき課題と基盤整備への提言
③医療従事者が取り組むべき共通課題と基盤整備への提言
④医師、薬剤師、看護婦・士、診療情報管理士そぞれが取り組むべき課題と基盤整備への提言
⑤医学教育ならびに看護教育の課題と基盤整備への提言

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