地域歯科医療における感染症に対する危機管理システムの検討に関する研究

文献情報

文献番号
199900010A
報告書区分
総括
研究課題名
地域歯科医療における感染症に対する危機管理システムの検討に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
花田 信弘(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 田沢光正(岩手県庁)
  • 佐藤保(岩手県歯科医師会)
  • 及川慶一(岩手県医師会)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律案」が施行されたが、歯科の分野では十分な感染症に対する危機管理の検討がなされていない。在宅訪問診療や老人介護施設における歯科診療に際してどのような病原体に遭遇しているのかを具体的に調査し、その対策を立案する。
研究方法
調査対象は、65歳から105歳までの介護が必要な特別擁護老人ホ-ムの高齢者291名(平均年令82歳)と自立した自宅在住高齢者464名(71歳)である。シードスワブ1号による擦過にて材料採取をおこない、研究所へ輸送後、培地にて培養して検出した。検査材料は、歯垢(表層)、咽頭ぬぐい液である。
結果と考察
平成11年度は、自宅在住高齢者と比較して要介護高齢者の歯や義歯にはどのような病原体が定着しているのかを調べた。歯垢からは、Candida albicans(健常者30%、要介護者37%)、Enterobacter cloacae(健常者6%、要介護者16%)、Pseudomonas 属(健常者6、要介護者14%)、Xanthomonas maltophilia (健常者2%、要介護者8%)、Staphylococcus aureus(MSSA) (健常者2%、要介護者5%)、Staphylococcus aureus(MRSA) (健常者1%以下、要介護者2%)、Pseudomonas aeruginosa(健常者1%以下、要介護者3%)が検出された。上気道炎、肺炎の原因菌であるブランハメラ(Branhamera catarrhalis)も歯垢から分離できた。日和見感染をおこす病原菌の多くは、要介護者の方が検出頻度は高かった。
また、要介護者の口腔ケアを効率的に行うために、ドラッグ・リテーナー(個人用のマウストレー)を開発した。ドラッグ・リテーナーは、内部に抗菌剤を塗布し歯面にだけ抗菌剤の薬効が届くように工夫した装置である。
結論
このように要介護高齢者の口腔からは呼吸器系感染症に関連する病原体が多数検出されるので、現在行われている歯科衛生士によるプロフェッショナル・メカニカル・トウース・クリーニング(PMTC)だけでは不十分である。歯面のバイオフィルムの病原菌を効果的に除去するためには、抗菌剤を歯面に的確に作用させる、デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム(3DS)が必要である。さらに歯科における迅速な細菌検査体制の整備が求められることが判明した。

公開日・更新日

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