文献情報
文献番号
199900006A
報告書区分
総括
研究課題名
保健医療福祉連携支援のコーディネート機能のあり方と情報化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
関田 康慶(東北大学大学院経済学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
保健医療福祉システムにおける望ましい連携コーディネートのあり方、およびコーディネートを支援する情報化や情報システムについて提言する。
研究方法
前年度に引き続き、保健医療福祉システムの連携を支援し促進させるコーディネート機能について、病院の医療ソーシャルワーカー(以下、MSWとし、精神医学領域のソーシャルワーカー=PSWを含める)の視点から実態調査を実施し、患者レコードによる全国レベルのデータベースを構築し、その分析を行なう。上記の実態調査の参加協力者として、全国各地の病院勤務MSWを継続して募集する。募集に際しては、地域的偏在のないように配慮する。
本研究の推進にあたって、MSWのコーディネート機能を次のように定義する。MSWのコーディネート機能:「MSWのコーディネート機能とは『患者や家族が主体的に医療を受けつつQOLの向上や低下予防を図れるよう、患者と院内外の様々な社会資源とを、包括的に調整しながら適切かつ円滑に結びつける機能』である。この機能は、保健・医療・福祉システムにおけるインターフェースとして、システムの効果的・効率的な運営にも重要な役割を果たす。」
前年度に実施した第1次調査(平成11年2~3月、調査票Version14使用)の経験を踏まえて、調査票(個票)のVersion upを図る。Version up作業においては、異なるVersionの調査結果によるデータベースを統合させるため、項目定義等を設計することで、調査項目間の互換性を保障する。また、旧Version同様、患者名、病院名、MSW名などのプライバシーに関する部分は調査項目に入れず、調査関係者のプライバシー保護に配慮する。
実態調査は、前年度同様、参加協力MSWが自らコーディネートを実施したケースについて調査票を用いた面接調査を行なう。その結果をデータベース化し、それをもとに医療ソーシャルワーク、行動科学、情報科学、社会心理、サービス評価等の視点から分析する。分析手法は、多変量解析や分布関数分析などを含む多面的な統計解析を駆使し、コーディネート機能について解析するとともに、それらの成果に基づき、コーディネート支援のための情報化と情報システムについて提言する。さらに、データベース利用のためのプロトコールを作成し、原則として本研究の参加協力者間の共有化を図り、多くの視点からの分析と提言を期待する。
本研究の推進にあたって、MSWのコーディネート機能を次のように定義する。MSWのコーディネート機能:「MSWのコーディネート機能とは『患者や家族が主体的に医療を受けつつQOLの向上や低下予防を図れるよう、患者と院内外の様々な社会資源とを、包括的に調整しながら適切かつ円滑に結びつける機能』である。この機能は、保健・医療・福祉システムにおけるインターフェースとして、システムの効果的・効率的な運営にも重要な役割を果たす。」
前年度に実施した第1次調査(平成11年2~3月、調査票Version14使用)の経験を踏まえて、調査票(個票)のVersion upを図る。Version up作業においては、異なるVersionの調査結果によるデータベースを統合させるため、項目定義等を設計することで、調査項目間の互換性を保障する。また、旧Version同様、患者名、病院名、MSW名などのプライバシーに関する部分は調査項目に入れず、調査関係者のプライバシー保護に配慮する。
実態調査は、前年度同様、参加協力MSWが自らコーディネートを実施したケースについて調査票を用いた面接調査を行なう。その結果をデータベース化し、それをもとに医療ソーシャルワーク、行動科学、情報科学、社会心理、サービス評価等の視点から分析する。分析手法は、多変量解析や分布関数分析などを含む多面的な統計解析を駆使し、コーディネート機能について解析するとともに、それらの成果に基づき、コーディネート支援のための情報化と情報システムについて提言する。さらに、データベース利用のためのプロトコールを作成し、原則として本研究の参加協力者間の共有化を図り、多くの視点からの分析と提言を期待する。
結果と考察
前年度の第1次調査に用いた調査票Version14をもとに、調査票Version15を設計した。調査票Version15による第2次調査を平成11年10~12月に実施し、437ケースの回収を得た。調査結果により構築されるデータベースは、ソフトを問わない標準ファイルとし、Excel、Access、SPSS、汎用機においても対応可能なように設計した。
データベースを用いて、以下の分析を行なった。
(1)「MSWが行なったコーディネートに対する当事者およびケース関係者の満足度評価分析」。これについては次の結果が得られた。①家族・親族および患者の満足度が、他の評価者に比べて相対的に高い傾向がみられた。②院内ケース関係者の満足度が、行政・非行政の院外ケース関係者よりも相対的に高い傾向がみられた。③満足度評価の調査者がMSW自身であるため、MSW以外の評価者の満足度に何らかのバイアスのかかった場合が考えられる。これらの分析結果から、患者・家族はMSWを通してコーディネートの内容を把握していることが、満足度が高い傾向の一因と考えられる。また、他のケース関係者が患者・家族よりも満足度が低い傾向であったのは、それぞれコーディネートの一部にしか関わらない場合が多いことにも起因していると思われる。
(2)「コーディネートの困難度指標化の検討」。これについては次の結果が得られた。①コーディネートを行なった項目の数は、「『療養生活の環境整備に関するコーディネート』における困難の有無」と関連性をもつ因子である。②MSWの判断によるニーズが経済関連のものである場合、「経済関連のコーディネートにおける困難の有無」とある程度対応する。③コーディネートを行なった項目の数は、「経済関連のコーディネートにおける困難の有無」に直接的な関連をもつ因子ではない。④MSWの判断によるニーズが療養生活の整備関連のものである場合、「『療養生活の環境整備に関するコーディネート』における困難の有無」と対応しない。これらの分析結果から、コーディネートの困難度の指標化は、コーディネート領域やコーディネート項目数等の組み合わせで表現することが考えられ、今後この問題の検討をよりいっそう深めていく必要がある。
(3)「コーディネートの困難度に基づく『コーディネート・レベル』の概念構築」。これについては次の結果が得られた。①MSWの経験年数は、「コーディネートにおける困難」と直接的な関連をもつ因子ではない。②「コーディネートの過程で検討した社会資源の数」は経済関連のコーディネートにおける困難と直接的な関連をもつ因子ではない。③「コーディネートの過程で検討した社会資源の数」は、「『療養生活の環境整備に関するコーディネート』における困難」に関連性をもつ因子である。
(4)「介護必要量(ADL)と活用社会資源分析」。介護必要量を独立変数とし、各種の活用社会資源を従属変数として重回帰分析を行なった結果、訪問看護ステーションの利用については、身体レベルの更衣(上半身)、排尿コントロールが有意な変量であった。すなわち、訪問看護サービスについては、更衣(上半身)および排尿コントロールを支援するサービス・コーディネートが資源利用として標準的であることが明らかになった。コーディネートの効率や資源利用の効率を考えた場合、これら標準的サービスを中心にコーディネートを行なうことが効果的であるといえる。
本研究で構築したデータベースは名称をMCDB(Mプロジェクト・コーディネート・データベース、「Mプロジェクト」とは本研究プロジェクトの通称である)といい、その項目内容は次のとおりである。1)患者受診病院の属性(218項目)、2)MSW・PSWの属性(27項目)、3)患者属性(79項目)、4)コーディネート実施前の患者の状態・状況(287項目)、5)コーディネート実施後の患者の状態・状況(287項目)、6)コーディネートの内容(283項目)、7)コーディネートの評価(72項目)。MCDBはExcel対応を標準としているが、変量、データ量が膨大であるため、分析者のデータベース利用ソフトに対応したデータベース編集を行なっている。MCDBは、本研究プロジェクトの参加協力メンバーに開放されており、次の手続きにより利用することが可能である。1)利用申請者は、MCDB管理委員会に対して利用目的等の書類を提出する。2)MCDB管理委員会において、申請者の利用目的の妥当性を検討し、調整を行なう。3)利用許可を得た申請者は、利用目的に応じたMCDBのデータ編集を管理委員会に要請する。4)MCDB管理委員会は、利用許可を得た申請者に、編集したデータを提供する。5)利用許可を得た申請者は、MCDB利用に際して注意事項を遵守する。6)MCDB利用者は、利用成果を管理委員会に報告する。MCDB利用は、研究目的、業務支援などに利用できるが、今のところ約150名の本研究プロジェクト参加協力メンバーに限定して開放している。したがって現時点ではクローズドであるが、このMCDBを基礎にして、病院のコーディネート支援情報システムとしての活用が可能である。データベースには、個人や病院、MSWなどを特定する情報は入っておらず、倫理面で十分な配慮をしている。今後コーディネートケース数をさらに蓄積し、MCDB利用体制を整備した後、新たに利用者の範囲を拡大して、将来的には広範囲に開放して利用できる体制を検討している。
データベースを用いて、以下の分析を行なった。
(1)「MSWが行なったコーディネートに対する当事者およびケース関係者の満足度評価分析」。これについては次の結果が得られた。①家族・親族および患者の満足度が、他の評価者に比べて相対的に高い傾向がみられた。②院内ケース関係者の満足度が、行政・非行政の院外ケース関係者よりも相対的に高い傾向がみられた。③満足度評価の調査者がMSW自身であるため、MSW以外の評価者の満足度に何らかのバイアスのかかった場合が考えられる。これらの分析結果から、患者・家族はMSWを通してコーディネートの内容を把握していることが、満足度が高い傾向の一因と考えられる。また、他のケース関係者が患者・家族よりも満足度が低い傾向であったのは、それぞれコーディネートの一部にしか関わらない場合が多いことにも起因していると思われる。
(2)「コーディネートの困難度指標化の検討」。これについては次の結果が得られた。①コーディネートを行なった項目の数は、「『療養生活の環境整備に関するコーディネート』における困難の有無」と関連性をもつ因子である。②MSWの判断によるニーズが経済関連のものである場合、「経済関連のコーディネートにおける困難の有無」とある程度対応する。③コーディネートを行なった項目の数は、「経済関連のコーディネートにおける困難の有無」に直接的な関連をもつ因子ではない。④MSWの判断によるニーズが療養生活の整備関連のものである場合、「『療養生活の環境整備に関するコーディネート』における困難の有無」と対応しない。これらの分析結果から、コーディネートの困難度の指標化は、コーディネート領域やコーディネート項目数等の組み合わせで表現することが考えられ、今後この問題の検討をよりいっそう深めていく必要がある。
(3)「コーディネートの困難度に基づく『コーディネート・レベル』の概念構築」。これについては次の結果が得られた。①MSWの経験年数は、「コーディネートにおける困難」と直接的な関連をもつ因子ではない。②「コーディネートの過程で検討した社会資源の数」は経済関連のコーディネートにおける困難と直接的な関連をもつ因子ではない。③「コーディネートの過程で検討した社会資源の数」は、「『療養生活の環境整備に関するコーディネート』における困難」に関連性をもつ因子である。
(4)「介護必要量(ADL)と活用社会資源分析」。介護必要量を独立変数とし、各種の活用社会資源を従属変数として重回帰分析を行なった結果、訪問看護ステーションの利用については、身体レベルの更衣(上半身)、排尿コントロールが有意な変量であった。すなわち、訪問看護サービスについては、更衣(上半身)および排尿コントロールを支援するサービス・コーディネートが資源利用として標準的であることが明らかになった。コーディネートの効率や資源利用の効率を考えた場合、これら標準的サービスを中心にコーディネートを行なうことが効果的であるといえる。
本研究で構築したデータベースは名称をMCDB(Mプロジェクト・コーディネート・データベース、「Mプロジェクト」とは本研究プロジェクトの通称である)といい、その項目内容は次のとおりである。1)患者受診病院の属性(218項目)、2)MSW・PSWの属性(27項目)、3)患者属性(79項目)、4)コーディネート実施前の患者の状態・状況(287項目)、5)コーディネート実施後の患者の状態・状況(287項目)、6)コーディネートの内容(283項目)、7)コーディネートの評価(72項目)。MCDBはExcel対応を標準としているが、変量、データ量が膨大であるため、分析者のデータベース利用ソフトに対応したデータベース編集を行なっている。MCDBは、本研究プロジェクトの参加協力メンバーに開放されており、次の手続きにより利用することが可能である。1)利用申請者は、MCDB管理委員会に対して利用目的等の書類を提出する。2)MCDB管理委員会において、申請者の利用目的の妥当性を検討し、調整を行なう。3)利用許可を得た申請者は、利用目的に応じたMCDBのデータ編集を管理委員会に要請する。4)MCDB管理委員会は、利用許可を得た申請者に、編集したデータを提供する。5)利用許可を得た申請者は、MCDB利用に際して注意事項を遵守する。6)MCDB利用者は、利用成果を管理委員会に報告する。MCDB利用は、研究目的、業務支援などに利用できるが、今のところ約150名の本研究プロジェクト参加協力メンバーに限定して開放している。したがって現時点ではクローズドであるが、このMCDBを基礎にして、病院のコーディネート支援情報システムとしての活用が可能である。データベースには、個人や病院、MSWなどを特定する情報は入っておらず、倫理面で十分な配慮をしている。今後コーディネートケース数をさらに蓄積し、MCDB利用体制を整備した後、新たに利用者の範囲を拡大して、将来的には広範囲に開放して利用できる体制を検討している。
結論
保健医療福祉システムの連携を促進・支援するコーディネート機能の実態について、病院の視点から調査し、患者レコードを単位とするデータベース(MCDB)を構築した。実態調査は、病院におけるコーディネート機能の多くを扱っているMSWの協力を得て実施し、400例を上回る回収を得た。本調査は、1人の患者に対するコーディネートをフォーローして作成する方式を採用しているため、1人の調査対象者の調査開始から終了までの期間が一様でなく、数年以上を要するケースもある。このような労力を要する調査データの蓄積は大変困難な作業であるが、それゆえ貴重なデータであり、データベースとしてオープン型で利用可能な情報システムを構築している。すでにこのデータベースを用いたいくつかの検討が行なわれており、コーディネートサービスに対する満足度評価、コーディネートの困難度の概念定義や指標化、介護必要量とコーディネートサービスの関係、コーディネートに関する資源の有効活用等について明らかにされている。今後も本研究を基盤とする多くの研究成果を期待するとともに、本研究の参加協力者に深甚なる感謝の意を表したい。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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