文献情報
文献番号
199800897A
報告書区分
総括
研究課題名
試験管内ALアミロイド線維形成機構の反応速度論モデルの開発、および生理的重合阻害分子ならびに非ペプチド性重合阻害剤の探索
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
内木 宏延(福井医科大学)
研究分担者(所属機関)
- 下条文武(福井医科大学)
- 上田孝典(福井医科大学)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 重点研究グループ 事業名なし
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
全身性ALアミロイドーシスは、日本におけるヒトアミロイドーシスの約半数を占めるが、他のアミロイドーシスと同様、有効な治療法はおろか発症機構の詳細は未だ解明されていない。われわれは、ALアミロイド線維沈着機構の解明、および沈着阻害剤の開発を目指し、以下の諸項目を3年計画の本研究課題の目標とする。(1)全身性ALアミロイドーシス患者から得たAL蛋白、Bence Jones蛋白(BJP)、および臓器沈着ALアミロイド線維を用い、試験管内ALアミロイド線維形成を反応速度論的に解析する実験系を確立する。(2)上記実験系を用い、アミロイド線維形成を阻害する生体分子、および非ペプチド性重合阻害剤を探索する。(3)多発性骨髄腫患者におけるALアミロイドーシス合併の有無と、BJPの1次/2次構造および試験管内アミロイド線維形成能を相関させ、BJPの構造および試験管内線維形成能から、ALアミロイドーシス発症を予測出来るか検討する。(4)アミロイド形成性BJPの1次/2次構造および試験管内線維形成能を臨床的諸因子、特にアミロイド沈着の臓器分布パターンと比較し、生命予後に大きな影響を与える心臓、腎臓などへのアミロイド沈着を予測出来るか検討する。本研究によりもたらされる非ペプチド性重合阻害剤の投与、およびアミロイド線維形成を阻害する生体分子の薬理学的産生促進/分解抑制により、ALアミロイドーシスの発症予防、および線維沈着速度の抑制が可能になり、患者の生命予後およびQOLの著しい改善、ひいては難病医療・福祉の向上が期待出来る。
本研究課題の初年度である平成10年度は、以下の諸項目を本研究班の目標とした。(1)全国の病理医・臨床家の参加により、全身性ALアミロイドーシス症例の新鮮凍結臓器を採取・収集するネットワークを構築する。(2)全身性ALアミロイドーシス剖検例の新鮮凍結臓器よりALアミロイド線維を精製し、電顕を用いた形態学的観察、及びTricine-SDS-PAGE法等による生化学的解析を行う。(3)試験管内ALアミロイド線維形成の反応速度論的解析の基本的分析手段として、蛍光色素チオフラビンTを用いた分光蛍光定量法のための至適条件(極大励起・蛍光波長等)を求め、ヒトALアミロイド線維の試験管内分光蛍光定量法を確立する。(4)AL蛋白及び関連諸蛋白の精製・解析のために、カラムクロマトグラフィーシステム、及びウェスタンブロッティングシステムを構築する。
本研究課題の初年度である平成10年度は、以下の諸項目を本研究班の目標とした。(1)全国の病理医・臨床家の参加により、全身性ALアミロイドーシス症例の新鮮凍結臓器を採取・収集するネットワークを構築する。(2)全身性ALアミロイドーシス剖検例の新鮮凍結臓器よりALアミロイド線維を精製し、電顕を用いた形態学的観察、及びTricine-SDS-PAGE法等による生化学的解析を行う。(3)試験管内ALアミロイド線維形成の反応速度論的解析の基本的分析手段として、蛍光色素チオフラビンTを用いた分光蛍光定量法のための至適条件(極大励起・蛍光波長等)を求め、ヒトALアミロイド線維の試験管内分光蛍光定量法を確立する。(4)AL蛋白及び関連諸蛋白の精製・解析のために、カラムクロマトグラフィーシステム、及びウェスタンブロッティングシステムを構築する。
研究方法
結果と考察
結論
本研究課題の成功は、全身性ALアミロイドーシス症例の蓄積による線維形成モデルの一般化にかかっている。全身性ALアミロイドーシスの疾患頻度から見て、同症の剖検数は限られており、一施設のみでは数年に1~2症例しか同症の剖検に遭遇しないのが現状である。昨年6月に本研究課題が採択された後、われわれは直ちに、全国の関連する病理医、及び臨床家に共同研究を呼びかけ、全身性ALアミロイドーシス症例の剖検があった場合、本研究課題の遂行に必要十分量のアミロイド沈着新鮮凍結臓器を採取・収集するネットワークを構築した。現在、松本、京都、奈良、及び熊本の4施設より計5症例の新鮮凍結臓器の提供を受けている。本年度はこれら5症例について臨床的、及び種々の特殊染色を含め病理組織学的に解析し、来年度以降に予定している蛋白の1次/2次構造と臨床的諸因子との相関解析のためのデータベースを構築した。
上記症例の内、信州大学医学部第三内科より提供を受けた全身性ALアミロイドーシス剖検例(67歳女性、IgGλ型)の新鮮凍結肺内リンパ節より、Pras法、不連続ショ糖密度勾配超遠沈等を組み合わせALアミロイド線維を精製した。電顕を用いた形態学的観察、及びTricine-SDS-PAGE法による生化学的解析の後、蛍光色素チオフラビンTを用いた分光蛍光定量法のための至適条件(極大励起・蛍光波長等)を求め、ヒトALアミロイド線維の試験管内分光蛍光定量法を確立した。これは来年度以降本格的に開始する、試験管内ALアミロイド線維形成の反応速度論的解析の基本的分析手段となる。
来年度以降本格的に開始する、AL蛋白及び関連諸蛋白の精製・解析のために、カラムクロマトグラフィーシステム、及びウェスタンブロッティングシステムを構築した。
われわれは本研究課題と共に、透析アミロイドーシス、及びアルツハイマー病におけるアミロイド線維形成の反応速度論的解析を並行して遂行している。そして、各々の成果を他のアミロイドーシス研究にフィードバックすることにより、個々のアミロイドーシスの特殊性と共に、ヒトアミロイドーシス全般に共通する発症機構・因子を明らかにすることをグループの主要な研究目標としている。今年度は、以下の成果を上げた。
アミロイドβ蛋白からアルツハイマー病βアミロイド線維が形成される過程がロジスティック方程式により記述出来ることを明らかにし、この方程式を用いて、アポリポ蛋白E、及び種々の抗酸化剤のβアミロイド線維形成に及ぼす阻害機構が異なることを明らかにした。この結果は、ALアミロイド線維形成を阻害する生体分子、および非ペプチド性重合阻害剤の探索に明確な方向性を与えると共に、解析システムを構築するための有用なモデルとなる。
精製した透析アミロイド線維、及びリコンビナントヒトβ-2ミクログロブリンを用いて、透析アミロイド線維を、その基本構築を保持したまま増幅し純粋にする手法を確立した。これはALアミロイド線維の純粋化にも応用可能で、ALアミロイド線維の2次構造解析等に有用な手段となる。
次年度の課題として以下の諸項目が挙げられる。(1)抽出したALアミロイド線維からAL蛋白質(モノマー)を精製し、ALアミロイド線維伸長の一次反応速度論モデル、及び重合核依存性重合モデルを構築する。(2)全身性ALアミロイドーシスにおいては、症例ごとに沈着したAL蛋白質の1次構造が異なる。そこで剖検症例を集積し、上記モデルの一般化を図る。(3)全身性ALアミロイドーシス、及びALアミロイドーシス発症/非発症多発性骨髄腫患者尿よりBJPを精製し、それぞれの1次/2次構造、及び試験管内アミロイド線維形成能を検討する。
上記症例の内、信州大学医学部第三内科より提供を受けた全身性ALアミロイドーシス剖検例(67歳女性、IgGλ型)の新鮮凍結肺内リンパ節より、Pras法、不連続ショ糖密度勾配超遠沈等を組み合わせALアミロイド線維を精製した。電顕を用いた形態学的観察、及びTricine-SDS-PAGE法による生化学的解析の後、蛍光色素チオフラビンTを用いた分光蛍光定量法のための至適条件(極大励起・蛍光波長等)を求め、ヒトALアミロイド線維の試験管内分光蛍光定量法を確立した。これは来年度以降本格的に開始する、試験管内ALアミロイド線維形成の反応速度論的解析の基本的分析手段となる。
来年度以降本格的に開始する、AL蛋白及び関連諸蛋白の精製・解析のために、カラムクロマトグラフィーシステム、及びウェスタンブロッティングシステムを構築した。
われわれは本研究課題と共に、透析アミロイドーシス、及びアルツハイマー病におけるアミロイド線維形成の反応速度論的解析を並行して遂行している。そして、各々の成果を他のアミロイドーシス研究にフィードバックすることにより、個々のアミロイドーシスの特殊性と共に、ヒトアミロイドーシス全般に共通する発症機構・因子を明らかにすることをグループの主要な研究目標としている。今年度は、以下の成果を上げた。
アミロイドβ蛋白からアルツハイマー病βアミロイド線維が形成される過程がロジスティック方程式により記述出来ることを明らかにし、この方程式を用いて、アポリポ蛋白E、及び種々の抗酸化剤のβアミロイド線維形成に及ぼす阻害機構が異なることを明らかにした。この結果は、ALアミロイド線維形成を阻害する生体分子、および非ペプチド性重合阻害剤の探索に明確な方向性を与えると共に、解析システムを構築するための有用なモデルとなる。
精製した透析アミロイド線維、及びリコンビナントヒトβ-2ミクログロブリンを用いて、透析アミロイド線維を、その基本構築を保持したまま増幅し純粋にする手法を確立した。これはALアミロイド線維の純粋化にも応用可能で、ALアミロイド線維の2次構造解析等に有用な手段となる。
次年度の課題として以下の諸項目が挙げられる。(1)抽出したALアミロイド線維からAL蛋白質(モノマー)を精製し、ALアミロイド線維伸長の一次反応速度論モデル、及び重合核依存性重合モデルを構築する。(2)全身性ALアミロイドーシスにおいては、症例ごとに沈着したAL蛋白質の1次構造が異なる。そこで剖検症例を集積し、上記モデルの一般化を図る。(3)全身性ALアミロイドーシス、及びALアミロイドーシス発症/非発症多発性骨髄腫患者尿よりBJPを精製し、それぞれの1次/2次構造、及び試験管内アミロイド線維形成能を検討する。
公開日・更新日
公開日
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