原因不明の血栓が病因となる難治性疾患の横断的研究

文献情報

文献番号
199800895A
報告書区分
総括
研究課題名
原因不明の血栓が病因となる難治性疾患の横断的研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
丸山 征郎(鹿児島大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小池隆夫(北海道大学医学部)
  • 久保俊一(京都府立医科大学)
  • 小嶋哲人(名古屋大学医学部)
  • 北本康則(熊本大学医学部)
  • 池田栄二(慶応大学医学部)
  • 坂巻文雄(国立循環器病センター)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 重点研究グループ 事業名なし
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本プロジェクトの目的は、血栓が病因となって原疾患が難治化することの仕組
みを明らかにして、その防御策を立案し、疾患の難治化を防ぐことである。疾患としては、
モヤモヤ病、肺高血圧、腎炎、大腿骨頭壊死を選び、これらに対し、血栓が関与している
か否か、血栓が関与していたらそのメカニズムはどのようになっているのか、等について
血管内皮細胞機能、血液凝固・線溶系、血液流動性などの諸点から検討した。
研究方法
疾患として、モヤモヤ病、肺高血圧、腎炎、大腿骨頭壊死を選んだ。これは縦
軸である。これらについて内皮細胞機能、凝固・線溶系から検討した(横糸、横断的)。
また膠原病が血栓によりしばしば難治化することから、膠原病で血栓形成に大きな役割を
果たすと見なされている抗カルジオリピン抗体の作用機序について解析した。
結果と考察
内皮細胞は通常は抗血栓活性を発揮し、円滑な血液の循環に大きな役割を果
たしている。その中でも特に血液の流れに対して抵抗の大きな部位;微小循環系ではトロ
ンボモデュリンープロテインCが大きな役割を果たす。炎症性サイトカインのIL-1, TNF-
α、生体内修飾物質;酸化変性LDL,糖化タンパク(AGE)が対外異物の代表であるエンド
トキシン(LPS)と同様内皮細胞の抗血栓活性を低下されることが判明した。再生新生血
管と内皮機能の関係が判明すれば、これはモヤモヤ病における血栓や出血の病態の一端が
判明するものと考えられる。また体内、外物質のよる内皮機能の障害は、基礎疾患のある
患者を向血栓性にする重要な全身性ファクターになるものと考えられる。今回メサンジウ
ム増殖型腎炎に腎局所での凝固の活性化が示唆されたが、この場合にも腎局所での炎症性
サイトカインが一定の役割を果たしている可能性が考えられる。また肺高血圧でも内皮細
胞の障害と凝固系の活性化が示唆されたが、この場合、内皮細胞の障害の結果凝固系の活
性化が起きている可能性があろう。今回ステロイド投与による実験的大腿骨頭壊死の動物
モデルの作成に成功し、このモデルウサギでは大腿骨頭の微小循環系のジヌソイドの拡張
とトロンボモデュリンの減少が証明された。今後このメカニズムの解明が重要であるが、
大腿骨頭壊死の防止や治療に大きな進歩となるものと思われる。
結論
大腿骨頭壊死や慢性肺高血圧では内皮細胞機能障害が根底にあるものと考えられた。
モヤモヤ病では再生内皮の機能の不全が示唆されたが、この証明は今後の大きな問題とし
て残った。血管内皮細胞の抗血栓活性機能は糖化タンパク、酸化変性LDLなど生体内修飾
物質、炎症性サイトカイン(IL-1,TNF-α)など、エンドトキシンなどでダウンレギュレー
ションされた。これは全体的に基礎疾患のある患者においては血栓の大きな原因の一つに
なるものと考えられる。

公開日・更新日

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更新日
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