神経難病医療情報整備

文献情報

文献番号
199800884A
報告書区分
総括
研究課題名
神経難病医療情報整備
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
木村 格(国立療養所山形病院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤猛(国立精神神経センター国府台病院)
  • 平井俊策(東京都立神経病院)
  • 長谷川一子(北里大学)
  • 中村重信(広島大学)
  • 吉良潤一(九州大学)
  • 糸山泰人(東北大学)
  • 島巧二(国立療養所札幌南病院)
  • 吉野英(国立精神神経センター国府台病院)
  • 葛原茂樹(三重大学)
  • 難波玲子(国立療養所南岡山病院)
  • 阿部康二(岡山大学)
  • 中島孝(国立療養所犀潟病院)
  • 畑中良夫(国立療養所高松病院)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 横断的基盤研究グループ 政策的研究部門
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性神経疾患を克服していくためには、病態解明等の基礎、治療の確立等の臨床研究と平行して、患者が直面している社会問題を解決することが必要である。本研究班では次の課題を重点的な事業内容として研究を進めた。
(1)ALS全国医療情報ネットワ-クを神経難病全般に広げる。
(2)都道府県を単位に神経難病医療・福祉支援ケアシステム整備を推進する。
(3)医療ネットワークで長期入院受け入れを確保する。
(4)東北、中国、関東(首都圏)等のモデル整備事業の成果を全国に展開するための提言をする。
研究方法
研究方法及び(1)神経難病患者の療養環境・医療情報システム整備について次の提言を厚生省に提出した。
1)入院病床の確保:いつでも入院療養できる病院と病床を準備して、利用者に公表する。
恒常的な予算措置によって難病医療ネットワークを構築し、参加病院相互の役割分担と連携から各地域で病床を確保する。
2)都道府県単位に神経難病相談室:予防・診断・最新の治療、専門病院や専門医へ受診・入院手段、介護機器、医療費や生活助成制度など総合的な相談が同一場所で行なえる相談室を開設する。難病相談はそのまま専門医療に継続したり、他の専門施設を紹介する場合が多く、設置場所は拠点病院内とする。医師、看護婦、医療ケースワーカーの他、患者家族や患者友の会ボランティアを構成員に加える。相談内容は、難病医療システム向上に役に立つ課題を含むことから、内容は施策に反映させる。
3)在宅患者の生活支援体制の整備:保健所単位に在宅療養支援チームを組織、ケア・プラン実施過程での課題は、全体のケア・システム委員会で施策として解決。介護人不足の解消には、介護人養成に努め、保健所を核にボランティア登録、導入を推進。介護保険と神経難病在宅療養について早急にワーキンググループで検討する。全身性障害者(選任)介護人派遣事業を積極的に普及させる。
4)長期入院施設の療養環境整備:在院日数制約等で難病患者の一般病院での長期入院は困難、環境も整備されていない。神経難病療養に適したモデル病棟を指定し、そこでの成果を診療報酬等医療制度改訂に反映させる。
5)専門病院ネットワーク構築:適切な医療サービスを格差なく受けられ、転居や旅行でも継続できる体制をつくる。患者家族の生活空間の拡大がQOL向上に寄与する。
6)特定疾患調査研究事業「神経難病医療システムに関する研究班」の設置意義:医療条件が共通な神経難病を対象に「神経難病医療システムに関する研究班」を設置。整備を推進し、特に、医療ネットワークを利用した大型災害時の病院相互支援体制の整備を行い、具体的にシュミレーションする。
(2)全国医療情報ネットワーク事:医療ネットワークが機能し、入院受入れ等情報整備・環境整備された都道府県は21に達した(佐藤、木村)。平成9年に全国273専門施設で組織された「全国ALS医療情報ネットワーク」には現在347施設が参加し、インターネット上で公表されている。使用頻度の高いコミュニケーション用スイッチを公開した(佐藤)。
(3)ALS患者の予後調査:全国神経内科標榜の726病院の診療責任者と病棟婦長に対するアンケート調査から、人工呼吸器装着した後のADLは、発症から5年後でも変わりはなく、10年以上経過しても車椅子での生活が可能な患者が10%以上存在し、環境整備の重要性が確認された。(佐藤、吉野)。
(4)各地の神経難病ケア・システムの構築からの成果
1.北海道:ALS237例の調査では、在宅人工呼吸器装着例で特に介護疲れが大きく、大都市以外での在宅移行は困難、長期入院施設整備が急務(島)。
2.東北:専門医への受診が困難、情報整備不足、救急対応に不安、介護人不足を解決するために、県内17病院で難病医療ネットワークを組織し、病院の役割分担と相互支援体制を構築。拠点病院に相談窓口を開設、遠距離の患者には遠隔医療支援システムで地域格差を解消。保健所を核にケアプランを策定し、課題は県全体のケアシステム委員会で解決した。ケアハウス設立の可能性について調査。長期入院に適した病棟を企画した(木村)。パーキンソン病患者250例が必要な医療情報をどのように得ているかを調査、多くは公的機関から得ていたが、今後は医療スタッフ、新聞、テレビ、患者団体からの情報整備の必要性を示唆。大学教育での難病医療スタッフによる講議の意義と看護学生への効果について考察した。介護保険導入の難病医療環境への影響と介護人派遣事業推進の意義を指摘した(糸山)。
3.首都圏:神経難病は気管切開の有無、病名で転病をことわられる率が高く、情報共有の必要性を指摘。人工呼吸器装着など医療依存度の高い患者では介護者支援の不足、緊急入院一時制度の不備が指摘(平井)。神経難病の入院看護度と診療報酬の分析から、医療経済を基本とする現制度では一般病院での長期入院は極めて困難(長谷川)。千葉県ではじめて神経難病医療ネットワークを構築され、情報交換と相互援助が開始された(吉野)。4.新潟:拠点病院を核にした医療ネットワークでは患者情報を共有でき、患者の社会参加や自立を促すことができた(中島)。
5.三重:在宅難病患者療養の現状を調査し、介護する家族の負担度が検証され, 医療環境整備と情報整備の必要性が指摘(葛原)。
6.中国四国:情報整備には医師・コメジカル・行政の提携が不可欠で、大学医師が難病患者療養支援事業、難病患者訪問診療事業、患者・家族団体講演会、コメジカル・スタッフに対する講演会を積極的進め、神経難病治療薬開発のためのコメジカル・スタッフの養成など難病医療情報整備した(中村)。県内1223医療施設のアンケート調査では、ALS、SCD等の23-24%が無床診療所で診療され、担当医は長期入院可能な病院や専門医との連携を期待している。保健所や行政からの情報には関心は低いが、医療福祉の連携、長期入院施設の整備、患者家族の経済的負担軽減対策が優先されるべきとした(阿倍)。ALSとSCD在宅療養患者の現状を把握し、問題を解決するための地域療養環境整備と医療情報整備施策を進めた(難波)。
7.四国(高松):特定疾患申請診断書は専門医以外でも作成できることから診断の不確実性が指摘、難病医療ネットワーク稼動によって長期入院病床が確保されているが、専門医の配置など医療の質の不均一性が今後の課題とした(畑中)。
8.九州(福岡):大学病院と県が協力して、重症難病患者入院施設確保等事業を開始し、17基幹病院、89の協力病院で難病医療連絡協議会を構成し、拠点病院としての大学付属病院に難病連絡相談員が配置されて患者の転院に機能している(吉良)。
結果と考察
結論
本研究事業を契機に全国都道府県で神経難病患者の療養環境、医療情報整備が確実に推進され、今後2年間の事業の継続が必要である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)