特定疾患に関するQOL研究

文献情報

文献番号
199800882A
報告書区分
総括
研究課題名
特定疾患に関するQOL研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
福原 信義(国立療養所犀潟病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岩男泰(慶應義塾大学)
  • 川村佐和子(東京都立保健科学大学)
  • 福原俊一(東京大学大学院)
  • 福永秀敏(国立療養所南九州病院)
  • 旭俊臣(旭神経内科病院)
  • 伊藤道哉(東北大学)
  • 今井尚志(国立療養所千葉東病院)
  • 上野文昭(東海大学大磯病院)
  • 牛込三和子(東京都神経科学総合研究所)
  • 大橋靖雄(東京大学大学院)
  • 川島みどり(健和会臨床看護学研究所)
  • 喜多義邦(滋賀医科大学)
  • 久野貞子(国立療養所宇多野病院)
  • 熊本俊秀(大分医科大学)
  • 小森哲夫(東京都立神経病院)
  • 杉野成(京都府保健福祉部)
  • 杉田昭(横浜市立大学付属浦舟病院)
  • 難波玲子(国立療養所南岡山病院)
  • 橋本英樹(帝京大学)
  • 尾藤誠司(国立病院東京医療センター)
  • 堀川楊(堀川内科・神経内科医院)
  • 水島洋(国立がんセンター研究所)
  • 宮原透(防衛医科大学)
  • 近藤清彦(公立八鹿病院)
  • 瓜生伸一(北里大学東病院MEセンター)
  • 笠井秀子(東京都立神経病院)
  • 福永愛子(愛知県津島保健所)
  • 上野えりか(鹿児島県姶良町役場)
  • 近藤紀子(東京都八王子市保健所)
  • 後藤清恵(国立療養所犀潟病院)
  • 豊浦保子(日本ALS協会近畿ブロック)
  • 中村知江(千葉県船橋保健所)
  • 松原奈絵(新潟県新潟市保健所)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 横断的基盤研究グループ 社会医学研究部門
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難病患者のケアにおいては、QOL(生活の質、生命の質)の改善が何よりも重要である。本研究の目的は、日本における難病患者に有効なQOL評価尺度を見出すこと、データ解析における定量的手法の活用と質的手法との有効な組み合わせを見いだすこと、難病患者のQOL向上のための保健・医療・福祉技術の開発であり、これらのことを通して患者・家族のQOLの改善をはかることである。
研究方法
班員、研究協力者を次の3グループの研究テーマに分けて研究を進めた。
1.QOL評価に関する研究:
QOL評価方法の基礎的研究とともに、近年、世界的に用いられつつある包括的健康関連QOL評価尺度の1つであるSF-36評価を用いて健康関連関連QOLをパーキンソン病(PD)及び炎症性大腸疾患を中心として検討し、患者のQOLの改善についての資料と方策を見つける。
2.難病患者のQOL向上のための保健・医療・福祉技術の開発
難病患者のケアについての保健・医療・福祉の現場における技術の改善について取り組む。
3.地域における難病ケアシステム(入院在宅療養の有機的連携)の構築に関する研究:
遅れている地域での効率的なケアシステムの構築に役立つための方策を検討し、情報ネットワークの利用についても検討する。
結果と考察
結論
研究成果)=SF-36評価法は質問項目の内的整合性は高く、炎症性大腸疾患、パーキンソン病の何れの評価においても信頼性を有することが確認された。しかし、健康関連関連QOLの評価尺度は、SF-36も含め殆ど全てが、自己記入式質問法によっており、項目数の限定もあるために、信頼性あるいは精度の点で限界があり、個人レベルでの応用は困難であった。また、ALSとPDなどの重度の神経難病患者では、知的障害や構音障害、筋力低下などのために聴取不能例が20%もあり、QOL評価は極めて困難であった。これを補うためには、今後、質的研究による項目の開発、項目応答理論を応用するなど基礎的方法論の再検討が必要である。
難病患者のQOL改善のためには臨床的介入のみならず、臨床心理学的な教育介入が有効であると推定され、患者・家族のサポートグループによる心理療法が極めて有用であるという臨床グループの結論とも一致し、今後の方向性を見出した。
神経難病医療に関する技術的研究としての顕著な成果は、
1)家庭用の水槽用エアポンプを改造して低圧持続吸引器に用いることにより、ALS患者の介護負担を非常に軽減することに成功し、今後の在宅医療の推進に大きく貢献した。
2)四肢麻痺患者のための視線入力装置の作製:ALSでは四肢筋の完全麻痺のために、知能が正常であるにも関わらず、情報メデイアの利用、知的創造活動は困難となる。最後まで残される眼球運動を利用したコンピュータ入力装置の研究開発を行い、商品化一歩手前までこぎつけた。
3)患者・家族のQOLを高めるという観点から、神経難病の代表的な疾患であるALSのインフォームド・コンセントについて検討したが、病気の告知が不十分なままに人工呼吸器を装着したり、呼吸器を付けないまま死亡している例が少くない現状が判り、このためのガイドラインづくりが急がれた。
4)難病における遺伝子診断について難病患者のQOL向上という点から検討したが、「遺伝子診断の実施」とその後の「カウンセリングの実施」との間には大きな乖離があり、このカウンセリング体制の不備を改善するための技法、ガイドライン作成が必要なことが判った。
また、パーキンソン病患者に対する経皮内視鏡的胃ろう造設術についての研究、ALSの呼吸リハビリに関する研究、パーキンソン病に対する音楽・運動療法についての研究などにおいても成果が見られた。
このほか、地域ケアシステムの整備、情報ネットワークの利用に関しても多数の研究成果がなされ、「地域ケア・ガイドライン」がまとめられ、印刷配付されると共に、インターネットによっても情報が提供された。在宅障害者を介護する家族の介護ストレスについて調査では、介護ストレスは日常の心理的ストレスと、日常の心理的ストレスは日常の身体的ストレスと有意の相関が得られており、家族支援には診断確定時、経済的不安、急激な症状悪化、家族の健康障害、結婚等のライフサイクル上の変化などに応じて家族援助が必要であることが明らかになった。

公開日・更新日

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