文献情報
文献番号
199800880A
報告書区分
総括
研究課題名
特定疾患遺伝子解析プロジェクト
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
中村 祐輔(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター)
研究分担者(所属機関)
- 天野殖(滋賀医科大学)
- 白澤専二(九州大学)
- 名川弘一(東京大学)
- 能勢眞人(愛媛大学)
- 新川詔夫(長崎大学)
- 田野保雄(大阪大学)
- 二瓶宏(東京女子医科大学)
- 福嶋義光(信州大学)
- 井ノ上逸朗(群馬大学)
- 黒田敏(北海道大学)
- 田村和朗(兵庫医科大学)
- 西森功(高知医科大学)
- 平井久丸(東京大学)
- 福島邦博(岡山大学)
- 本田和男(愛媛大学)
- 水木信久(横須賀共済病院)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 横断的基盤研究グループ 特定疾患遺伝子解析部門
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成10年度の目標・目的は、中村(東大・医科研)は、後縦靭帯骨化症についてtwyマウス原因遺伝子に相当するヒト遺伝子を単離し、ヒト後縦靭帯骨化症との関連について検討する。また、この原因遺伝子産物は骨の代謝に関連すると推測されることから、この代謝経路に関係する遺伝子と後縦靭帯骨化症との関連についても検討を加える。潰瘍性大腸炎・クローン病の候補遺伝子は患者とコントロール群においてアミノ酸の繰り返しの数が違い、それによって蛋白の構造に変化を来すことが発症と関連すると推測されている。この遺伝子構造の違いについて詳細に検討を加える。田野(阪大医)は血族結婚症例を用いて角膜変性症、天野(滋賀医大)はラットモデルを用いて側頭葉てんかん、能勢(愛媛大医)はマウスモデルを用いて血管炎症候群の疾患原因遺伝子の染色体部位を決定したが、本年度は原因遺伝子の存在部位をさらに限局化することを行う。研究が順調に進み、数百kb以内に特定された時点でその領域内に存在する遺伝子の単離と遺伝子異常の検索を行い、原因遺伝子をつきとめる。新川(長崎大)は原因不明遺伝子病のマッピングを行う。福嶋(信州大)は細胞株の樹立等を行い、研究グループを支援する。二瓶(東京女子医)、白澤(九大医)はIgA腎症、Graves病の症例が解析に必要なだけ集まった時点で、多型性マーカーによる解析をすすめ、原因遺伝子の染色体局在を明らかにする。
研究方法
結果と考察
結論
中村らは、後縦靭帯骨化症モデルマウスttwの原因遺伝子がヌクレオチドピロフォスファターゼ(NPPS)(軟部組織の骨代謝に関係する酵素)遺伝子であることを明らかにした。また、ヒトNPPS遺伝子を単離して遺伝子多型を見つけだし、連鎖解析を行った結果、ヒトの後縦靭帯骨化症の発症にも関連していることを証明した。さらに、ttwマウスの食餌中のリン酸量を増やすと3ー4週間で全身の軟骨・靭帯の骨化の進展することを見出した。リン酸だけでなくカルシウムも負荷するとさらに病態が進行するが、カルシウム単独の負荷ではこのような傾向が全く認められないことから、リン酸代謝が異所性骨化に重要な役割を果たしていることが確認された。潰瘍性大腸炎については、ムチン3遺伝子(MUC3)のムチンタンパクのバックボーンの繰り返し配列(VNTR)の長さについて約300人の潰瘍性大腸炎患者および約300人のコントロールについて検討した結果、このVNTRの差が潰瘍性大腸炎の発症に関連していることを明らかにした。能勢らは、ヒトの病態に極似する膠原病疾患群を自然発症するMRL/lpr マウスをモデルとし、非発症マウスC3H/lpr との戻し交配系を作製した。これらについて染色体を約10 cM 断片レベルでカバーする多型性マイクロサテライトマーカーを用いてのゲノムワイドスキャンを行い、腎炎・関節炎・血管炎・唾液腺炎のそれぞれについて複数の原因遺伝子の染色体局在を決定した。とくに関節炎については詳細なマッピングを行い、5座の感受性遺伝子座と1座の抵抗性遺伝子座を明らかにした。これらの遺伝子座群間には、相加性のみならず階層性が存在することも明らかにした。また、野生マウスMSM/Msf との交配系を用いての解析から、新たな関節病変が発症することを見出した。これらは、慢性関節リウマチをポリジーン系疾患として位置づける上で、また、その病像多様性を説明する上で重要な所見であると考えられた。天野らは、遺伝性てんかんラット(IER)におけるてんかん遺伝子のクローニングを最終目標として、その前段階のてんかん発作関連遺伝子と、海馬に見られる微小神経形成異常(このミュータントのてんかん原性との関連が注目されている)関連遺伝子の染色体マッピングを行った。てんかん発作関連遺伝子はマーカーD15Rat52とD15Mgh3の間に、微少神経形成異常の関連遺伝子は8番染色体上のマーカーD8rat68とThy1の間にマッピングされた。微小形成異常とてんかん発作との関連については現在検討中である。白澤らは、自己免疫性甲状腺疾患であるGraves病、橋本病の罹患同胞対48組に対して、計400個のマイクロサテライトマーカーによる全ゲノムスキャンを行い、そのデータの統計学的解析をMAPMAKER/SIBSのソフトを用いて行った結果、第5染色体、第8染色体でそれぞれロッドスコアが3.2、2.8と有意な値を得たことから、これらの染色体に発症に関与する遺伝子の存在が示唆された。名川らは、クローン病の感受性遺伝子のマッピングを目的とし、360のマーカーによる罹患同胞対法を行った。本年度は18組の同胞発症例の血液を収集し、現在までに合計42組のタイピングを終了した。解析の結果、D7S630(第7染色体)とD9S161(第9染色体)の二つのマーカー座位において、同胞間のアレル共有率は日本人のアレル頻度にもとづく予測値より有意に高い傾向がみられ、連鎖の可能性が示唆された(P<0.05)。これらの近傍にはMUC3遺伝子(第7染色体)、T cell receptor Vβ遺伝子(第9染色体)が存在し、有力な候補遺伝子と考えられる。福嶋らは、樹立率の高いBリンパ芽球様細胞株樹立法を確立し、この方法を用いて10数カ所の研究室との間で種々の領域にわたって共同研究を推進しており、今までに約700例の疾患患者細胞株を樹立し、保存している。これらのうち、Mesomelic dysplasia Kantaputra typeにおいては連鎖解析によりその責任遺伝子の局在を2q24-q32に決定した。またLowe 症候群および多発性内分泌腫瘍症1型家系において、従来報告のない遺伝子変異を同定した。二瓶らは、昨年度の研究結果をもとに、検討症例の選択基準の見直し、150 症例について登録を行った。発症時の年齢
を 35 歳以前と35 歳以降に分けた場合、あるいは腎機能が正常の群と腎障害が進行した群に分けて、 IgA 腎症のデータベースの作製と DNA サンプルの採取を行た。これらについて、腎障害の修飾因子および p27Kip1 遺伝子多型の関与について検討したが、有意な結果は見い出せなかった。田野らは、中村らと共同研究を行い、ポジショナルクローニング法により膠様滴状角膜変性症の原因遺伝子の単離を目指した。まず、日本人近親婚家系10家系13人の患者を対象としたホモ接合性マッピング法を施行し、疾患原因遺伝子座を第1番染色体短腕に同定した。更に、家系においてはマーカーD1S220とその遠位に隣接する2つのマーカーD1S2648、D1S2752において疾患との間に有意な連鎖不平衡を認めた。次いで、この連鎖不平衡を認めた領域、約400kbにわたるコスミド、BACコンティグを構築し、ショットガン法でその塩基配列を決定し、コンピュータープログラムにより疾患原因遺伝子の検索を行った。その結果、単離した候補遺伝子の一つにおいて患者に特有な3つのナンセンス変異と1つのフレームシフト変異を同定した。また、正常日本人100家系においてはこれらの変異を認めず、この遺伝子がGDLDの疾患原因遺伝子であると結論した。新川らは、未知遺伝病の責任遺伝子のゲノム上の局在を知るために、遺伝性白内障、発作性運動誘発性コレオアテトーシス(PKC)、およびEngelmann症候群家系について連鎖解析を行った。白内障座は20番染色体(浸透率=1.0, ロッド得点 = 3.30, 組換率 =0.00)、Engelmann症候群座は19番染色体(浸透率 = 0.9, ロッド得点 = 4.50, 組換率= 0.00)にマップしたが、PKCは浸透率= 0.6のとき13q座とロッド得点 = 2.82, 組換率 =0.00を得たが、単一遺伝子病ではなく多遺伝子疾患の可能性がある。
を 35 歳以前と35 歳以降に分けた場合、あるいは腎機能が正常の群と腎障害が進行した群に分けて、 IgA 腎症のデータベースの作製と DNA サンプルの採取を行た。これらについて、腎障害の修飾因子および p27Kip1 遺伝子多型の関与について検討したが、有意な結果は見い出せなかった。田野らは、中村らと共同研究を行い、ポジショナルクローニング法により膠様滴状角膜変性症の原因遺伝子の単離を目指した。まず、日本人近親婚家系10家系13人の患者を対象としたホモ接合性マッピング法を施行し、疾患原因遺伝子座を第1番染色体短腕に同定した。更に、家系においてはマーカーD1S220とその遠位に隣接する2つのマーカーD1S2648、D1S2752において疾患との間に有意な連鎖不平衡を認めた。次いで、この連鎖不平衡を認めた領域、約400kbにわたるコスミド、BACコンティグを構築し、ショットガン法でその塩基配列を決定し、コンピュータープログラムにより疾患原因遺伝子の検索を行った。その結果、単離した候補遺伝子の一つにおいて患者に特有な3つのナンセンス変異と1つのフレームシフト変異を同定した。また、正常日本人100家系においてはこれらの変異を認めず、この遺伝子がGDLDの疾患原因遺伝子であると結論した。新川らは、未知遺伝病の責任遺伝子のゲノム上の局在を知るために、遺伝性白内障、発作性運動誘発性コレオアテトーシス(PKC)、およびEngelmann症候群家系について連鎖解析を行った。白内障座は20番染色体(浸透率=1.0, ロッド得点 = 3.30, 組換率 =0.00)、Engelmann症候群座は19番染色体(浸透率 = 0.9, ロッド得点 = 4.50, 組換率= 0.00)にマップしたが、PKCは浸透率= 0.6のとき13q座とロッド得点 = 2.82, 組換率 =0.00を得たが、単一遺伝子病ではなく多遺伝子疾患の可能性がある。
公開日・更新日
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