急性高度難聴

文献情報

文献番号
199800859A
報告書区分
総括
研究課題名
急性高度難聴
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
星野 知之(浜松医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 福田諭(北海道大学)
  • 宇佐美真一(弘前大学)
  • 喜多村健(自治医科大学)
  • 神崎仁(慶應義塾大学)
  • 中島務(名古屋大学)
  • 牧嶋和見(産業医科大学)
  • 東野哲也(宮崎医科大学)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 臨床調査研究グループ 聴覚・平衡機能系疾患調査研究班
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1996,年、1997年度にひき続き突発性難聴(突難)、特発性両側性感音難聴(特難)を中心とする疾患の疫学調査、重症度基準の作成、急性高度難聴の原因究明、遺伝子異常の全国共同研究、突発性難聴の単剤治験の検討をおこなう。
研究方法
結果と考察
 A. 疫学 突発性難聴のアンケート方式のよる調査を 1972年、1987年、1993年の3回、特発性難聴については1987年、1993年の2回おこなっているが、その結果をコンピュータにすべて登録し終えたので、解析を行ない、疾患の発生頻度の年次推移などを検討した。プールドコントロールを使っての突難の生活習慣の検討は今年度は聴力型を加えて検討した。
B. 突発性難聴、特発性両側性感音難聴につき作業を行ない、前者を4つのグレードに、後者を3つのグレードにわけて作成し、実際の症例に適応して、解析を試みた。
C. 難聴の原因の究明。血管条につき様々な研究がなされた。光増感反応を利用してモルモット蝸牛に限局性障害を作成し、蝸牛内電位(endocochlear potential ; EP)を測定し、障害部ではいったん低下したEPが2週間後にはもとの値に戻ることを確かめた。また障害部位が上方回転と下方回転にある場合とではEPに対する影響が違って現われることを確認し、突発性難聴の難聴の可逆性、多様性を説明しうる現象として報告した。別の方法で障害をモルモット蝸牛に作成しグルタミン酸の動態を検討したり、マウスでの各種ペプチドの血管条での動態などが検討された。血管条に遺伝的欠陥をもつ動物での蝸牛の病態が、EP,エンドセリンの分布、血管透過性、OAEの面などから検討された。 ウイルスの関与についての基礎データとして、突難患者の抗ムンプスIgM抗体を測定して検出率を調べたり、不顕性感染の危険性、予防接種の重要性が指摘された。剖検試料での各種ウイルスDNA, RNAの検出もひきつずき行なわれている。
D. 遺伝性難聴の全国共同研究も3年目をむかえ、28検体が東西の班員のいるセンターに送付され、ミトコンドリア遺伝子異常が4検体で見つかった。共同ではなく班員、特別研究員の独自の研究で、X連鎖遺伝性のDFN3の家系からPOU3F4遺伝子の異常、さらにPDS遺伝子、コネキシン26遺伝子、EYA1遺伝子の異常などがみつかった。POU遺伝子の一つBrn-4の欠失したノックアウトマウスがつくられ、その蝸牛での病態がラセン靱帯の線維細胞にあることがつきとめられた。遺伝子異常のため血管条に異常を来すWvマウス、Wsラットについてもその内耳形態と機能につき検討された。
E. 突難の単剤治療による治験は、近年の治験施行の難しさも加わって、終了が遅れているが、3年間での一応の終了を目指してデータを解析中である。
結論
突難の特徴は、難聴のさまざまな聴力型とその可逆性である。1998年度はこの2つの特徴を説明しうる限局障害モデルが作られた。多発性限局障害の際の形態と機能はなを不明であり、この検討を続ける予定である。ウイルスの関係では、内耳に感染が疑われる時、簡単に検索しうる検査法が確立していないので、この研究を行ない、本年度ある程度の結果をえた。疫学では、突発性難聴患者の生活習慣が聴力型との関連も含め検討が始まった。データの集積が大きな任務であるので、ひき続きこれを行なう。遺伝子異常の全国共同研究は、しだいに多施設の協力が得られるようになってき、遺伝子異常がかなりの数で纏まってきているので、さらにセンターでの検索を続けたい。単剤治験は次年度に終了することを目指す。

公開日・更新日

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更新日
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