文献情報
文献番号
199800850A
報告書区分
総括
研究課題名
アミロイドーシス
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
石原 得博(山口大学医学部病理学第一講座)
研究分担者(所属機関)
- 今井浩三(札幌医科大学第一内科)
- 下条文武(福井医科大学臨床検査医学)
- 榊佳之(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターゲノム解析分野)
- 中里雅光(宮崎医科大学第三内科)
- 樋口京一(信州大学医学部附属加齢適応研究センター脈管病態分野)
- 前田秀一郎(山梨医科大学第一生化学)
- 池田修一(信州大学医学部第三内科)
- 東海林幹夫(群馬大学医学部神経内科)
- 麻奥英毅(広島赤十字原爆病院第四内科)
- 安東由喜雄(熊本大学医学部臨床検査医学)
- 河野道生(山口大学医学部寄生体学)
- 坂下直実(熊本大学医学部第二病理)
- 篠田友孝(東京都立大学理学部化学教室)
- 玉岡晃(筑波大学医学専門学群内科学(神経))
- 馬場聡(浜松医科大学第二病理)
- 原茂子(虎ノ門病院腎センター血液浄化療法部)
- 森啓(大阪市立大学医学部老年医学研究部門、脳・神経系分野)
- 山田正仁(東京医科歯科大学附属病院神経内科)
- 横田忠明(小倉記念病院検査部)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 臨床調査研究グループ 代謝系疾患調査研究班
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
主なアミロイドの病型について次のような目標をたてる。1)ALアミロイドーシス:アミロイド原性蛋白の一次構造を決定し、その前駆体蛋白産生細胞である形質細胞および骨髄腫細胞の特異性を明らかにする。2)FAP:トランスサイレチン(TTR)の分子異常を確実にスクリーニング出来る手法として、質量解析を用いた変異蛋白の検出法を確立する。60種類以上のTTRmutationによる病態の差を明らかにする。また新たなTTRmutationを発見する。肝臓移植による治療法の確立、さらに血漿吸着療法に加えて、甲状腺ホルモン誘導体の経口療法の開発および大量TTR投与によるdown regulation療法の可能性を追求する。3)透析アミロイドーシス:透析の治療法、その変換とアミロイドーシスの病態を対比検討し、今後の治療法の方向性を明らかにする。4)脳アミロイドーシス:脳脊髄液Aβ40/42とtauのアルツハイマー病(AD)治療に対する反応を明らかにし、重症度や治療効果の判定に使用可能な生物学的マーカーとして確立する。Aβを過剰に産生するトランスジェニックマウスを用いて、その代謝過程と蓄積過程を明らかにする。5)その他:血清アミロイドA遺伝子型とAAアミロイドーシスの関連性を明らかにする。実験的アミロイドーシスにおいてamyloid enhancing factor(AEF)の本態および線維形成機序を明らかにする。マウス老化アミロイドーシスをモデルとして、アミロイド線維形成機構の解明と治療法開発のための基礎システムとしての培養細胞系を利用したアミロイド線維形成系の確立を目指す。各種アミロイドーシス共通のアミロイド線維形成機序を解明し、新たな治療法を検討する。
研究方法
結果と考察
結論
1. アミロイドーシス共通の発症機序については、1)実験的マウスアミロイドーシスにおいて、ユビキチンにアミロイド促進因子(AEF)効果があることを証明した。2) β2-ミクログロブリン(β2-m)を用いた試験管内fAβ2-m線維伸長反応は一次反応速度論モデルに従うことを明らかにした。3)マウスの老化アミロイドーシスでは、外来のアミロイド線維が消化管を経由してマウス個体内に侵入し、核となってアミロイド蛋白(apoA-・)の構造変換を引き起こし、アミロイド沈着を誘導、促進することを示した。4)共存蛋白:amyloid P component(AP) 、apolipoprotein E(apoE)およびubiquitinはヒトおよび実験的マウスアミロイドーシスで証明されるが、アミロイド線維形成には直接関与していないことを示唆した。2.免疫グロブリン性アミロイドーシスでは、1)全身性ALアミロイドーシスにおける臨床的検討により、早期診断の重要性を強調した。2)限局性ALアミロイドーシスに関与している形質細胞にモノクローナリティーを証明した。3) アミロイド原性L鎖可変領域遺伝子を構築し、組み換え体の大量調整を可能とし、in vitroでの線維形成能の分析法を確立した。全身性ALアミロイドーシスにおけるBence-Jones蛋白の解析、in vitro fibrillogenesisについて報告した。4)ヒト骨髄腫細胞株をSCID-hIL6トランスジェニックマウスの腹腔内への移植することが可能となり、実験的にALアミロイドーシスを惹起する可能性を示した。3.家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)では、1)FAP・型の新たな病型として、福岡県糟屋郡のIle50型の患者(22例)、長崎県国見町のCys114型の患者(23例)が発見された。2)Cys114型のFAPにおいて、TTRのmutationにより立体構造が変化していることを示した。3)質量分析法を用いたFAP関連変異トランスサイレチン(TTR)の検出法の確立と5種類の新たなTTR分子異常を発見した。4)海外で行われた屍体肝移植邦人例の移植後の臨床病態について明らかにした。生体部分肝移植を施行したFAP患者11名の術前、術後の臨床経過を検討し、これが有効な治療法であることを証明し、またその適応基準を確立した。4.透析アミロイドーシスでは、1)新たに開発した逆濾過ダイアライザーは、従来の透析方法でβ2-mの除去率を増加させることができ、透析医会コンセンサス会議で第3のダイアライザーとして認められた。2)in vitroのアミロイド線維伸長反応モデルにおいて、advanced glycation end products(AGEs)化β2-mは、native β2-mによるアミロイド線維伸長重合を阻害した。5.脳アミロイドーシスでは、1) 脳Aβアミロイドーシスであるアルツハイマー病の生物学的マーカーとして脳脊髄液tau, Aβ40/42の生理的変動を明らかにするとともに、これが診断や治療効果の臨床的評価に有用であることを示した。2)アルツハイマー病では、早期発症型原因遺伝子(プレセニリン1、APP)がAβ1-42/43の沈着亢進と連動し、apoEがAβ1-40の沈着亢進に相関していることを明らかにした。プレセニリンが生理的条件ではN末端/C末端/APP複合体を形成して Aβ42の生成を調節していること、病的条件下ではC末端が神経原線維変化とともに蓄積していることを明らかにした。3)アルツハイマー病の開始因子としてのAβ42を過剰産生するトランスジェニックマウスを作製して脳アミロイド沈着機序を検討した。10ヶ月のトランスジェニックマウスで脳内Aβは著名に増加し、大脳皮質にビマン性老人斑を認めるとともに皮質内血管壁にもAβ沈着が認められ、脳内Aβ過剰生成は脳アミロイドの沈着を引き起こすことを証明した。4) 最近増加しつつある高齢者の脳アミロイドアンギオパチー(CAA)による脳皮質下出血症例の臨床病理学的検討を行った。高齢者CAAの孤発性の遺伝的危険因子を検討し、PS1遺伝子イントロン7の多型がCAAに関連すること、α1-antichymotrypsinのシグナルペプチドの多型がアルツハイマー病に合併するCAAの程度と関連することを初めて明らかにした。6.その他のアミロイドーシスとして、1)反応性AAアミロイドーシスの前駆体蛋白であるserum amyloid A(SAA)について検索し、SAA1γがAA-アミロ
イドーシスの危険因子であることを明らかにした。また、SAAの遺伝子頻度には人種差があり、 SAA1γは日本人の6割にあり、日本人にとって重要な危険因子であることを示唆した。2)原発性皮膚アミロイドーシスおよび脂漏性角化症に伴うアミロイドについて免疫組織化学的に検索し、それぞれサイトケラチンに対する反応が若干異なるが、アミロイドがサイトケラチン由来であることを示唆した。 7.重症度分類を作成した。(ALアミロイドーシスおよびFAP)8.患者からの特定疾患申請をもとにした日本のアミロイドーシスの各都道府県別の疫学的調査を行った。平成8年度は840人で、対前年度増加は219人であった。また、疫学班と協力しての全国疫学調査を行っている。
イドーシスの危険因子であることを明らかにした。また、SAAの遺伝子頻度には人種差があり、 SAA1γは日本人の6割にあり、日本人にとって重要な危険因子であることを示唆した。2)原発性皮膚アミロイドーシスおよび脂漏性角化症に伴うアミロイドについて免疫組織化学的に検索し、それぞれサイトケラチンに対する反応が若干異なるが、アミロイドがサイトケラチン由来であることを示唆した。 7.重症度分類を作成した。(ALアミロイドーシスおよびFAP)8.患者からの特定疾患申請をもとにした日本のアミロイドーシスの各都道府県別の疫学的調査を行った。平成8年度は840人で、対前年度増加は219人であった。また、疫学班と協力しての全国疫学調査を行っている。
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