リハビリテーション看護の専門性確立のための看護援助分析

文献情報

文献番号
199800836A
報告書区分
総括
研究課題名
リハビリテーション看護の専門性確立のための看護援助分析
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
野々村 典子(茨城県立医療大学保健医療学部兼同大学付属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 奥宮曉子(茨城県立医療大学保健医療学部)
  • 宮腰由紀子(茨城県立医療大学保健医療学部)
  • 土屋陽子(茨城県立医療大学保健医療学部)
  • 石鍋圭子(東京都リハビリテーション病院)
  • 川波公香(茨城県立医療大学保健医療学部)
  • 穂積恵子(茨城県立医療大学保健医療学部)
  • 吉田真季(野村総合研究所リサーチコンサルティング部門)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
リハビリテーション看護の専門性、独自性を明確にするために、看護援助分
析を中心に本研究を行った。
研究方法
リハビリテーション看護に関する文献検索より、看護の専門性等の確
立状況を確認し、リハビリテーションチームメンバーを対象に以下の方法で調査、検討した。
1)文献調査:「リハビリテーション」及び「看護」をキーワードに、国内外の文献データベース(国内;医学中央雑誌他、国外;MEDLINE)を用いて、1988年~1998年8月の間に発行された文献を検索し、リハビリテーション看護概念の変遷や実践・教育・研究の動向について分析した。
2) スタッフ面接調査:2つのリハビリテーション専門病院に勤務するリハビリテーションチームスタッフを対象に、1998年9月25日~9月30日の間において、リハビリテーション看護としての援助内容に関する半構成質問紙を用いた面接調査を行った。なお、質問紙は石鍋ら(1997)の調査を基に、11項目で構成した。
3)全国調査:2)の調査結果に基づき、リハビリテーション看護の専門性及び独自性に関する択一または複数選択肢法による自記式質問紙を作成した。調査対象は、「リハビリテーション」をキーワードに「全国病院名鑑」より全国169施設を抽出し、調査協力の承諾を得られた94施設とし、1998年10月15日に各施設へ一括送付した。回収は個別郵送とした。
4)患者・家族調査:1999年1月13日~2月12日の間に、調査協力の承諾が得られた2つのリハビリテーション専門病院において、入院患者及びその家族を対象に、リハビリテーション看護の援助内容に関する半構成質問紙を用いた面接調査を行った。質問紙は2)の調査結果を基に、言葉の表現を患者家族向けに直した同内容の項目を独自に作成した。なお、本調査研究を行うにあたり、茨城県立医療大学倫理委員会の審査承認を得た。
5)分析:EXCEL97(Microsoft社製)を用いてデータ入力及び集計し、χ2検定等を行った。
結果と考察
1)文献調査:検索件数は、1988年には国内2件、国外5件であったものが、1996年頃より急速な増加に転じており、リハビリテーション看護への関心が高まっていることが推察され、また抽出した文献内容から、米国を中心とした欧米では、リハビリテーション看護の概念や基準が十分に論じられ、明確な定義がなされ、教育プログラムの確立がなされていることが読み取れた。しかし、国内の文献ではリハビリテーション看護が明確に定義されないまま、具体的な事例に対する援助内容・効果の分析がなされていた。
2)スタッフ面接調査:回答は、看護婦30名、看護婦以外の専門職(以下「その他専門職」と略す) 35名(内訳;医師5名、理学療法士9名、作業療法士7名、言語療法士3名、臨床心理士4名、ソーシャルワーカー2名、その他5名)から得られた。
①リハビリテーション看護の専門性の有無について、「専門性がある」と回答した者は、看護婦30名(100.0%)、その他専門職34名(97.1%)であった。②リハビリテーションチーム
における看護の役割について、回答者数の多い順に第3位までは、看護婦では「専門ス
タッフ間の連絡調整を行う」56.7%、「精神的・心理的支援を行う」53.3%、「事故防止のために環境を整える」53.3%をあげた者が多かった。一方、その他専門職では、「病棟で
の日常生活動作(以下ADL)を指導する」62.9%、「セルフケアに必要な知識・技術を指導する」57.1%、「退院後に向けたケアを計画する」48.6%であった。「連絡調整」の役割は、看護婦では最多であったにもかかわらず、その他専門職では20.0%にとどまった。このように、リハビリテーション看護の具体的な役割に関する認識は、職種間で相違があることが示唆された。 
3)全国調査:婦長以上の看護管理者(以下「看護管理者」)203名(回収率80.6%)、その他専門職627名(回収率76.2%)からの回答を得た。なお、看護管理者の構成は、看護婦・士195名、准看護婦・士3名で不明は5名であった。その他専門職の構成は、医師90名、理学
療法士180名、作業療法士141名、言語療法士77名、臨床心理士24名、ソーシャルワーカー78名、職種不明37名であった。
①リハビリテーション看護の専門性が「ある」と回答した者は、看護管理者・その他専門職ともに90%以上であり、スタッフ面接調査と同様の高い数値が得られた。このことから、リハビリテーションチームスタッフは、リハビリテーション看護の専門性に関する意識が高いと考えられた。②現在のリハビリテーションチームにおいて看護婦(士)が果たしている役割は、多い順に、看護管理者では「自立を促進するために病棟でADLを指導」59.1%、「患者の目標達成のため、専門スタッフ間の連絡調整を行う」56.7%であった。一方、その他専門職では「患者の全身状態を観察し、異常を早期発見する」50.4%、「療養生活に必要な治療処置を実施する」42.6%となっていた。両者の違いが大きかった役割は「専門スタッフ間の連絡調整」で、看護管理者の56.7%が看護婦の役割であると回答したのに対し、その他専門職では23.4%であった。以上から、リハビリテーション関連病院に勤務する看護管理者とその他専門職は、リハビリテーション看護に専門性があると認識しているが、リハビリテーションチームにおける看護婦(士)の具体的な役割については、職種間の認識に違いがあることが明らかになった。
4) 患者・家族調査:回答は、患者34名(男性16名、女性18名)、家族35名(男性9名、女性26名)の計69名から得られており、現在その結果の分析を進めているところである。 今年度の調査結果から、リハビリテーション医療における看護の専門性・独自性の明確化のために必要なことは、まず、①リハビリテーション看護概念の明確化つまり用語規定・業務基準などの統一が必要であり、②明確化された概念に基づいた基礎教育、現任教育、専門看護師制度の構築と導入などが必要である。その結果、実践の場においては③科学的な根拠に基づいた実践内容の報告や技術化があり、研究的概念に基づく研究報告活動の充実が考えられる。
結論
リハビリテーション看護の専門性を確認することを目的に、文献調査及びリハビ
リテーションチームメンバーを対象に、面接・質問紙法による調査を行った。
①文献調査によると、近年リハビリテーション看護に対する関心が高まっており、細分化や専門分化、具体的な援助技術の検討が広がっているが、リハビリテーション看護に関する統一した概念や用語規定、業務基準等の十分な検討はなされていなかった。②リハビリテーション専門領域で働くスタッフは、リハビリテーション看護の専門性を認めているが、具体的な役割・機能に関する認識には職種による違いが認められた。リハビリテーション看護の概念の明確化や用語規定、業務基準などは、看護のみならず他職種の周知と理解が必要であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-