痴呆性老人グループホームの適正かつ効果的な運営とケアスキル開発に関する研究

文献情報

文献番号
199800831A
報告書区分
総括
研究課題名
痴呆性老人グループホームの適正かつ効果的な運営とケアスキル開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
中島 紀恵子(北海道医療大学看護福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 北川公子(北海道医療大学看護福祉学部)
  • 鈴木恵三(ほべつ医療・福祉センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今日、痴呆性老人の地域ケアの推進ならびにケアの質的向上に対する取り組みとしてグループホームが注目されるようになり、この1~2年の間に各地各様のグループホームが開設されるようになった。本研究の大きな目標は、痴呆性老人グループホームが介護保険の適用を受けて専門的サービスを提供する機能体になるための要件を整える方策を提案することである。そのため本研究プロジェクトでは、痴呆性老人グループホームにおける運営方策の追求と入居に適した障害レベル判定基準の作成、環境療法などの個別ケアのスキル開発、スタッフの教育プログラムの開発を3年間の達成課題としている。初年度にあたる今年は、北海道H町においてグループホーム設立を目指した政策過程と、既存のグループホームにおける入居者の変化ならびにケアスッタフ教育の課題を明らかにする。
研究方法
次の2つの研究を行った。第1は、H町住民を対象に要援護者需要調査、保健医療福祉に関する調査等を行い、痴呆性老人の実態ならびにグループホームに関する住民の知識や意向を把握すると共に、特別養護老人ホーム、社会福祉協議会、医師、看護婦、保健婦、ホームヘルパー等から構成されるグループホームに関する学習会を計50時間にわたって実施した。これと並行して、町立痴呆性老人グループホーム設立計画と執行上の問題点と課題について検討した。第2は、既存のグループホーム・幸豊ハイツにおいて、開設から5カ月間の入居者の状態評価に関するデータを、ケース記録とケアスタッフからの聴取内容の分析から得られたトラブルの発生状況とケアプログラムの充足過程と同一の時間軸に整理し、相互の関連性を検討し、ケアスキル開発の課題を明らかにした。
結果と考察
H町在住の痴呆性老人の59%が町立病院や特別養護老人ホームに入院、入所し、今後ますます人口の減少と高齢化の進む当町において、痴呆性老人の地域ケアを推進するには、グループホームのような家族のみに依存しない在宅機能を備えた機関の整備が必要不可欠であることが示唆された。また、地方の小規模自治体において、新築のグループホーム建設が自治体の財政に与える影響は大きい。そのため、利用者のみならず広く地域住民にグループホームが受け入れられる機関になるには、公営住宅の空き部屋や町立病院の休眠ユニットなど、既存施設の転用を視野に入れた効率的な保健福祉機関再編への戦略が重要である。一方、既存のグループホーム・幸豊ハイツにおける分析からは、開設1.5カ月の間に不眠や大声、便失禁といった種々のトラブルが集中して発生し、その間に入居者のNK細胞活性が大きく低下していることがわかった。NK細胞活性の低下は入居者の恒常性の乱れと推察され、開設初期には環境の変化に伴うトラブルが起きやすく、トラブル発生というストレスに遭遇したことが入居者に少なからぬ影響を与えたものと考えられた。その後、トラブルの減少にともなって、開設5カ月目にNK細胞活性は回復し、初期に活動-睡眠パターンの乱れていた入居者も、この時期にリズムの回復を認めた。従って、開設初期もしくは入居初期の5カ月までは多角的な観察評価が必要であることが示唆された。そして、開設初期のトラブル多発時期には、ケアスタッフもパニック状態に陥ったことから、入居適性や入居者の受け入れ方法、初期のケア体制強化に関する検討の必要性も考える必要がある。さらにグループホームのケアには、これまでの施設ケアで培われてきたノウハウが必ずしもそのまま活用できない側面が明らかになったことから、スタッフ教育のプログラム作
りは急務の課題である。
結論
痴呆性老人の地域ケア推進において、痴呆性老人グループホームはその鍵となる機関であるが、小規模自治体においては、地域全体の保管医療福祉機関の再編と住民ニーズに喚起する戦略をもつ必要がある。一方、その運営においては、開設初期の5カ月間に多角的な観察評価とケア体制の柔軟な運用、ケアスタッフの総合的なアセスメント力と管理運営に関する独自の教育プログラムが必要であることが示唆された。

公開日・更新日

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