災害の種類別シミュレーションモデル作成とその意義の研究 

文献情報

文献番号
199800803A
報告書区分
総括
研究課題名
災害の種類別シミュレーションモデル作成とその意義の研究 
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
辺見 弘(国立病院東京災害医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 原口義座(国立病院東京災害医療センター)
  • 友保洋三(国立病院東京災害医療センタ-)
  • 加来信雄(久留米大学医学部)
  • 金子正光(札幌医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
9,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大災害を含めた各種の災害時に適切な対応が可能となるには、良く検討されたシミュレーションモデルと災害対応マニュアルを作成し、災害訓練を行うことが必要と考えられる。本研究は、そのためのステップとしての位置づけされる。
研究方法
研究方法と結果、考察=本研究は、5つの小班からなる。限られた紙面のため、各班毎に研究要旨のみを提示する。
1)熱傷患者大量発生時におけるシュミレーションモデル作成に関する研究
熱傷患者大量同時発生時には、平時の重症熱傷患者発生数が少なく、治療の特殊性から重症熱傷に対応できる施設が少ない。そのため大量発生時には大混乱が予測される。地域で対応できない時は広域搬送の必要性を(平成9年5月第24回日本熱傷学総会)に発表し専門家の批判を得て、日本熱傷学会全体として対策する必要性が認識された。その結果日本熱傷学会で災害対策委員会の発足様に地域の対応能力を凌駕した場合には広域搬送が有効な手段であることから ヘリコプター搬送の有用性検討、航空機搬送の基準および訓練を実施することを今年度の共通のテーマとし辺見班が担当した。医療施設だけでは発災時に有用な対応ができないために.防災に熱心な地方自治体(東京都、静岡県)に事を通じて重症熱傷を被災地から拠点病院にヘリコプター搬送するのではなく、拠点病院の熱傷治療対応能力以上に患者が搬送された想定で、拠点病院から他の拠点病院にヘリコプター搬送することで治療できるゾーンを短時間で拡大できる災害訓練を施行し、また大量に患者を搬送するには固定翼機を使用し成果を得た。静岡県からは大型ヘリC47による患者搬送訓練をおこない立川基地まで搬送し辺見班が対応し問題点を究明した。
2)地震、その他の自然災害の対応へのシミュレーションの研究
昨年度は、東京ないし関東地区を代表的地域として選び、地震を中心に被害想定を検討した。その結論としては、その被害状況は、大きな幅があると考えられるが、悪い条件を考慮すると、東京都・国土庁の想定よりもはるかに大きい数が発生すると考えられ、収容可能病院からみた入院ベッド数は、緊急手術件数は、限られた数の患者にしか対応できず、大多数は、周辺地域・遠隔地域での対応を要すると考えられたこと等を報告した。
本年は、この研究を更に進め、災害の規模に大きく影響を与える因子(①地震の規模・性質、②病院の被災度、③季節・天候・時刻、④関連する自然災害、⑤人的要素の関与、等)を改めて抽出した。その上で、この点を考慮した分類を行った。この分類に基づいた多岐な災害(地震災害)対応のためのシミュレーションモデルの原案を作成した。その結果、幸運な状況下での少な目の被害想定でも、手術可能件数、患者の安全・速やかな搬送方法、情報伝達体制等確立するべき多くの問題が残されていることが明らかとなった。
3)NBC災害への対策のシミュレーションモデル作成
NBC(Nuclear , biological and chemical )災害に関しては、マスコミや一般の注目は強いが、まだ科学的な面から医学的対応は、確立していない。。当小班の行った1998年度の研究は、以下のごとくである。研究結果:①1997年に作成した核(放射能)災害マニュアルおよびシミュレーションモデル暫定版に基づき、小規模の放射能汚染災害訓練(室内での基礎的対応訓練)を放射線医学総合研究所の専門家の指導のもとに行った。その問題点を参考に核(放射能)災害マニュアルを改訂する段階である。②原子力発電所に対して放射能災害に関連して、簡単なアンケート(1997年度から1998年度にかけて)と現地視察(1998年度)から問題点を整理したた。③1997年8月に発足した放射線事故フォーラムへの参加と幹事の一人としての研究を継続した。その結果、わが国の原子力施設への災害医療体制としては、サイト内では、比較的良好であるが、サイト内・外の連携、放射能汚染を伴う重度外傷患者の搬送方法等、幾つかの点に改善の余地が残されていた。これらの問題点の解決には、我々の核災害のシミュレーションモデル・マニュアルを改善しつつ、これに基づいた災害訓練が必須と考えられた。化学災害に関しては、事件後4年を経過した地下鉄サリン事件を参考に簡単な報告書の原案を作成した。
4)輸送機関災害時のシミュレーションモデル作成
輸送機関災害時医療体制のシミュレーション訓練をモデル化するにあたり、輸送体の種類別(航空機、列車、自動車・バス、船舶)に災害時医療救助活動の3T(Triage, Transport, Treatment)の各要素を分析した。輸送機関を所轄、管理する組織との連携した医療対応は、各輸送体種類別に設定する必要がある。しかし、医療内容には輸送体種類別の特異的な要素は少なく、むしろ災害の規模や災害発生場所の地理的状況、自然環境ならびに災害発生地区医療圏の状況に強く依存する。従って、輸送機関災害のシミュレーション訓練には、各輸送機関共通の設定項目として、災害規模の設定に加え災害発生場所の地理的状況、自然環境、ならびに災害発生周辺地域の医療圏を考慮したモデル化が必要である。
5)特殊環境(過疎地・離島)における対応のシミュレーション
離島・過疎地における災害医療展開のシミュレーションモデル構築にあたり、都市部にはない離島・過疎地特有の諸問題や情報伝達や患者搬送の面で都市部にはない問題点を踏まえ、幾つかの例を元にシミュレーションを試みた。離島の場合は初動に時間がかかるため搬送手段の高速化で低下しうる Preventable deathは数%のオーダーであった。搬送だけでなく初動にかかる時間を短縮する事も重要である。
結果と考察
結論
災害時に適切な対応をするためのシミュレーションモデル作成の意義に関して、5つの班毎に分かれて、分野別に研究し各種の知見がえられた。
更に横断的な協力体制を検討したところ、大地震、熱傷患者大量発生時、特殊環境(過疎地・離島)において特に、病院間搬送を含め、適切な搬送システムの重要性が裏付けられた。このテーマは、またNBC災害や輸送機関災害時のいても、若干形を変えた上で、やはり重要と考えられた。その確立は、急務と考えられ、更に研究を継続する必要がある。

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研究報告書(紙媒体)

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