周産期管理における遠隔医療システムの開発と臨床応用

文献情報

文献番号
199800793A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期管理における遠隔医療システムの開発と臨床応用
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
北川 道弘(国立大蔵病院産婦人科医長)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
周産期管理の基本は胎児異常や切迫早産の早期発見・治療に加えて、異常妊娠や母体合併症の監視にあると考える。そこでこのような妊婦を在宅で安全に管理を行う目的で、陣痛胎児心拍数モニタリング装置を組み込んだ妊婦遠隔医療管理システムを開発し、通常電話回線(アナログ回線)を通して 一般妊婦健診あるいは入院管理に準ずる管理が可能かを目的とした。
研究方法
正常妊婦5名、切迫早産妊婦6名、前置胎盤2名、糖尿病合併妊婦2名、高位脊髄損傷合併妊婦1名の計16名を対象に、妊婦28週より在宅妊娠管理を開始した。交信は原則として週1回20~30分間行い、一般的な問診に加え外来妊婦健診の一般検査項目につき報告を受けた。また妊婦側より病院側パソコンに転送された陣痛・胎児心拍数図を判定し、結果について説明を行った。以上の結果よりシステム自体の問題点を検討し、より良いシステム開発のための基礎的データの集積を行った。
結果と考察
外来妊婦健診におけるルーチンの検査項目に関して患者による自己測定と病院での測定に差の有無を調査し、自己測定でもある程度の管理が可能かどうかの検討を行った結果、あらかじめ指導しておくことにより得られた結果には問題点は認められなかった。本システムでは胎児心拍数・子宮収縮の計測状況を示すインジケータが備わっていること、必要があればテレビ電話による通話と同じにリアルタイムにモニタリングが行えることより正確な計測が可能であった。また転送された陣痛・胎児心拍数図は病院で行っている記録に比べ遜色なく、充分に診断に役立つものであった。
遠隔医療は1997年厚生省通達により、あくまで対面診療の補助的手段としての医療として認知されたものの実際に頻繁に超音波検査を行う必要のある症例や内診を要する患者に対しては、在宅管理が100%外来妊婦健診に替わりうるものではない。医師法上ではゴーサインが出された形となっているものの、現在のところ保険上の解決がなされていないため定期の妊婦健診以外に患者サービスという形で行わざるを得ないのが現状である。しかしながら通常、妊婦健診は自費診療であり、今後費用設定の上遠隔医療を行うよう準備中である。陣痛胎児心拍数図の転送に関しては本システムは特に大きな混乱を生じることなく診断可能なデータの送信に成功した。内診と血液検査・超音波診断が行えないことを除けば通常の妊婦健診とほぼ同等の周産期管理が可能であると思われ、ある程度定期の妊婦健診の回数を減らしていくことが可能であろう。また内科的合併症を有する妊婦や切迫流産や切迫早産にて入院管理を行った妊婦の外泊中もしくは退院後のフォローアップも可能であった。周産期遠隔医療に際しては以下の3つ事項が重要であると思われた。
1) 内科的合併症・産科的異常の状態を常に的確に把握しておくこと。
2) 合併症が妊娠に及ぼす影響を整理し、起りうる異常について患者に充分に説明することにより注意を喚起すること。
3) 切迫流・早産や前置胎盤などの場合、子宮収縮の状態、性器出血の性状等を患者の自覚症状のみにまかせるのではなく交信を通じて客観的にまた可能な限り正確に判断し、さらに外来での内診所見等を加味し、必要があると思われる場合には躊躇せず来院を勧めること。
結論
遠隔医療は今後発展が期待される分野であるが解決していかなければならない問題が山積していることも事実である。本システムは超音波や内診、血液検査を除けば本法により外来妊婦健診に匹敵する妊婦管理が可能であったことより、適応症例を選べば、遠隔地の妊婦のみならず近隣の正常妊婦・ハイリスク妊婦に対しても胎児の状態や子宮収縮の程度を的確に判断し、患者や医療側の不安を軽減し安全な妊娠管理を行う上で、きわめて有用であった。

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