診療施設間医療情報交換の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
199800792A
報告書区分
総括
研究課題名
診療施設間医療情報交換の標準化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
木村 通男(浜松医科大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診療施設間で医療情報を交換することの重要性は言を待たないが、これは現状では必ずしも円滑に実行はされていない。その理由は、医療情報にかかわる各種用語、データ形式、保存・伝送規格など、いわゆる医療情報の標準化がさまざまなレべルで十分でないからである。一方で、各診療施設におけるハード面での情報基盤はますます整備されつつある。従って、当研究では、情報内容に関しての情報交換のための標準化を推進するための方策を検討し、必要なものを実装レベルまで吟味することにより、円滑な医療情報交換のための基盤を整備することを目的とした。
研究方法
患者基本情報、処方、臨床検査、画像、および統合化文書形式についてのそれぞれの有識者を集め、これらに関して利用できる既存の規格の検討を依頼し、それらを日本で実際に利用する際の問題点、必要な改善点を明確化した。国際協調の観点から、これらの改善要望については内外に公表し、それぞれの規格母体に報告、改善要望をおこなった。
一方、規格化された交換情報を参照するための、パソコン上でのソフトウエアを作成した。これは検査結果、画像データなど、情報そのものとともに付属できる程度のコンパクトな設計になっている。
結果と考察
画像や検査結果、処方内容と、患者の経過を時系列で定める情報とは、別のものを組み合わせて利用することが望ましいことは、昨年度の、主任研究者の研究結果(医療情報交換規格利用指針MERIT-9)として、報告済みである。当研究はそ
の成果を更に発展させることができた。処方、臨床検査についてはHL7規格を用いることが適当であるとの結論に達したが、処方の基本が一日量であるか一回量であるかの違い、服薬タイミングと食事との密接な関係、負荷検査依頼時の要求結果詳細度、などが、HL7規格を日本で用いる際の問題点であった。これらはHL7に報告され、すでに最新版(V.2.3.1)において改善されている。
画像については、詳細な画像はDICOM規格、簡単な画像はJPEG規格などを用いることが適当であるとの結論に達した。画像データそのものは機械的なものであり、これらを利用するにあたっての問題点はほとんど存在しない。ただ、画像検査依頼には数多くの文字情報を含み、また過去の検査画像などを参照することが有用であるため、MERIT-9で提唱する方式、つまり画像ファイルを構造化文書から参照する、というデータの持ち方が望ましい、との結論に達した。
参照用ソフトウエア(MERIT-9ブラウザ)については、本年度はその部分を形成する、HL7ブラウザ、DICOMブラウザを作成した。これらとともに、構造化文書ブラウザを作成すれば、紹介状などの電子的伝送が可能となる。
診療施設間で医療情報を交換する状況は、様々なものが考えられる。患者情報の紹介一つを取っても、かかりつけ医と後方病院、専門医間、特殊検査依頼とあり、ひと項目「診断病名」を取っても、求められる情報の深さは様々である。増してや、電子化診療録といった、使われ方が各種考えられるものでは、用意すべき記述のレベルが定めにくい。この点に対しては、今後は利用される状況をより絞って、関係者間では的確な情報交換を可能とすることが、まず求められるであろう。具体的には、検査センター会社が外注検査結果を報告する場合や、診療情報提供の書式に基づいた紹介状、などである。
MERIT-9規格では、SGML文書形式の医療情報用DTDであるMML形式を用い、これからHL7やDICOMといったデータの集まりを参照する形式をとっている。その後、SGMLはXML形式に発展しつつあり、一方でHL7規格も実装文法にXMLも採用しつつある。とすれば、今後の方向性としては、XML形式での段差のない記述が考えられる。今年度発足した医療情報ISO (ISO TC215)でも、情報伝送について、XML形式での実装を候補としていることからも、この形式による実装を今後は進めて行くべきであろう。
結論
検査、処方用にHL7を、画像用にDICOM,JPEG規格などを日本で用いるための 問題点を明確化した。またこれは規格制定本体に日本から改善提案がされ、結果として取り入れられている。これらの情報の参照をパソコンで可能とするソフトウエアを作成した。HL7, DICOMといった専門に特化した規格を、MMLといった時系列的情報から参照する形式が望ましく、これらをまとめてMERIT-9指針として提唱した。今後はXML文書形式が広まるに連れて、全体をXML形式で段差なく実装する方向性が明確化するであろう。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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