遠隔医療の開発及び評価に関する研究

文献情報

文献番号
199800791A
報告書区分
総括
研究課題名
遠隔医療の開発及び評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
黒川 清(東海大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 長村義之(東海大学医学部)
  • 大櫛陽一(東海大学医学部)
  • A.Lacroix(モントリオール大学)
  • E.Keough(メモリアル大学)
  • 春木康男(東海大学医学部)
  • 岡田好一(東海大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
34,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、技術的・組織的・人的側面から遠隔医療の技術評価を行うものである。特色として、国際関係を重視していることがあげられる。国際協力が継続的に推進できる分野として、講義やセミナーなどの生涯教育、電子カルテなどの医療情報提供サービス、遠隔医療に関する事例集の整備を提案する。その実現ためのハード・ソフトを導入し、国内で実用性の検証を行い、また、国際協力の下に適切なコンテンツで評価を行う。
研究方法
1995年開始のG7パイロットプロジェクトの一つ、厚生省が担当するGlobal Healthcare Application (GHAP)のサブプロジェクト4、遠隔医療の活動を継続しながら、それに適合するハード・ソフトを導入し、検証を行う。当面のISDNによる国際間接続と、近い将来のインターネット接続の機能を有しているものとした。また、医用画像を必要なソフトウェアで扱うために、パソコンベースのテレビ会議システムと、アプリケーション共有に対応する多地点接続装置(MCU)が必要となる。費用面から、2B(128kbits/秒)接続を主とし、動画が診断等に必要な場合のために、6B(384kbits/秒)の二地点間接続も選べるようにする。以上の装置を使い、カナダ2地点との接続実験を行い、効果を実証する。
カルテ情報の国際間伝達のために、国際標準規格に準じたHWML(Health and Welfare Markup Language)とHL7に準拠するフォーマットを作成する。このフォーマットに適合した電子カルテとHWML閲覧ソフトを開発する。インターネットを利用する場合に必要な、実用的な速度を持つ暗号化通信と暗号化データベースを開発する。
また、遠隔医療に関する事例集を国際間で使えるように整備する。
結果と考察
東海大学3病院(伊勢原校舎、東京病院、大磯病院)とカナダ2地点(モントリオール大学中央病院、ニューファンドランド・メモリアル大学)を結んだ医学セッションを、1999年2月2日(3地点)と11日に開催した。このときは、接続業者のMCUを使い、6B接続とした。
2月2日には、3大学医学部の学長間会議を開催した。SP4の幹事であるモントリオール大学のラクロワ教授から本計画についてのサマリーの提示の後、東海大学医学部長黒川清教授、モントリオール大学医学部長ビネー教授、メモリアル大学副医学部長ロビンス教授から、それぞれの立場における医学教育についての講演が行われた。
2月11日には、東海大学から堺副病院長が糖尿病性腎症の講演、メモリアル大学のバレット博士が興味ある腎不全の症例二例の検討、モントリオール大学のラクロワ教授から特異な腎性クッシング症候群の症例の発表があった。
また、東海大学のMCUを用い、国内3病院とメモリアル大学間で、2B接続によるアプリケーション共有を確認している。今後、本方式をもちいた国内・国際医学セッションを定期的に開催する予定である。
電子カルテと暗号系については、試用バージョンで動作確認し、オーストラリアで2月に開かれたSP4の会議でデモンストレーションし、今後の国際協力で合意した。遠隔医療に関する事例集は、現在英語版を作成中で、本年度内に完成予定である。
一般に、ISDNを用いたテレビ会議システムは枯れた技術と考えられているが、国際接続となると異機種を組み合わせる段階で技術的困難が発生する。G7 GHAP SP4でも、技術的な観点から具体例が求められており、今回の二回の接続実験及び、将来の定期的な交流と評価により国際的に貢献できると考えている。
電子カルテの国際化は、人の行き来が国際的になっているために、緊急に開発すべき課題となっている。本研究では、患者が医療情報の仲介役となる観点から、プライバシーの問題、言語の問題を解決しようとしている。中核となる技術は開発中であるが、試用版は完成し、所期の機能を満たす動作を確認しており、近い将来に評価できる態勢にある。
遠隔医療事例集の英語化は、日本の遠隔医療の実績を海外に紹介し、遠隔医療分野の今後の良好な国際関係と協力に不可欠である。
結論
日本の遠隔医療は高水準にあると考えられるが、国際交流を考える際には、解決されるべき問題も多い。今後2年間で、電子カルテと高画質医療画像を使ったコラボレーションのためのシステム構築を行い、国際医療協力への利用を試みる予定である。

公開日・更新日

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