文献情報
文献番号
199800789A
報告書区分
総括
研究課題名
腎不全予防治療指針作成のためのネットワーク利用による医療情報の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
柏原 英彦(国立佐倉病院)
研究分担者(所属機関)
- 里村洋一(千葉大学)
- 小山哲夫(筑波大学)
- 秋山昌範(国立国際医療センター)
- 浜口欣一(国立佐倉病院)
- 吉村光弘(国立金沢病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在のわが国は少子化、高齢化、さらに生活習慣病の急増を招来し、この傾向が今後も継続することが予想される中で、一人でも多く臓器不全に陥らせないことが重要である.生命予後に関わる重要臓器の機能不全のうち、腎臓病の終末像である慢性腎不全(尿毒症)では、透析患者総数は既に17万人を超え、腎炎・ネフローゼに加えて糖尿病、高血圧など生活習慣病による患者増のため、将来予測もつかない状況である.慢性腎不全患者は長期透析合併症や献腎移植低迷によって患者QOLの低下、高額医療など医学的、社会的、経済的な問題を提起しており、腎不全予防は急務を要する重要な課題である.しかし、全世界の3分1の透析患者を有するにもかかわらず、予備群である腎症患者の疫学に資する系統的登録システムは存在せず、国民病とまで言われる腎疾患患者のデータベースの構築は疾病構造、ハイリスクの評価、腎死(慢性腎不全)の実態、透析患者の将来予測を研究するために不可欠である.
かかる観点から、地域医療の中核施設である国立病院等を中心にコンピュータ・ネットワークを利用して、マルチデータを有する腎症患者データベースを構築して保存期腎不全医療を解析し、科学的根拠に基づいた腎不全予防のための実践的治療指針を作成し、医療関係者は勿論の事、市民への啓発を促すことが目的である.
かかる観点から、地域医療の中核施設である国立病院等を中心にコンピュータ・ネットワークを利用して、マルチデータを有する腎症患者データベースを構築して保存期腎不全医療を解析し、科学的根拠に基づいた腎不全予防のための実践的治療指針を作成し、医療関係者は勿論の事、市民への啓発を促すことが目的である.
研究方法
腎疾患には多くの原疾患が含まれ、長期経過、多様な治療選択が特徴であることから、多施設参加型でコンピュータ・ネットワークを活用して科学的根拠による腎不全予防指針作成のための資料提供のために、個人情報のプライバシーとネットワークの安全性を考慮しつつ、Webブラウザを用いて患者登録、検索、閲覧を可能とするデータベース・構築のため次の課題の検討を行う.
1) 腎疾患患者疫学調査
2)腎疾患患者データベース作成
3)病理画像ならびにマルチデータベース 構築
4)全国コンピュータ・ネットワーク構築
5)ネットワーク安全性の評価
6)腎疾患医療の実状と患者QOL 調査
7)腎臓病の啓発情報発信
1) 腎疾患患者疫学調査
2)腎疾患患者データベース作成
3)病理画像ならびにマルチデータベース 構築
4)全国コンピュータ・ネットワーク構築
5)ネットワーク安全性の評価
6)腎疾患医療の実状と患者QOL 調査
7)腎臓病の啓発情報発信
結果と考察
1)腎疾患患者疫学調査
蛍光抗体法がルーチンに行われるようになった1970年代後半以降の症例データベースの結果、IgA腎症が慢性腎炎の半数以上を占めているが、発生数はほぼ横ばいのようである.感染後急性糸球体腎炎および膜性増殖性糸球体腎炎は減少傾向にあり、いわゆる好中球細胞質抗体(とくに昨ANCA)陽性の特発例で65歳以降の高齢者を中心に急速進行性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、間質腎炎の増加が認められる.
2) 腎疾患患者データベース作成
中規模における登録法データベースは目的とする解析に必要な惰報量を満たすにはカルテから手入力で転記する方式では欠損が多く、項目の選定が重要なポイントにある.大規模データベースはデータの信頼性とデータの集中性は良いが、利用する際のかなり複雑な手続きが必要となりデータの利用に大きな問題点がある.稀少症例のデータベースではアンケート内容がやや細部にわたった場合、記載しにくく、返信が滅少する.以上の経験を踏まえて、今回、コンピュータネットワークを利用しての腎疾患患者データベースのプロトタイプ作成に当たっては、成人腎症ではIgA腎症を主な対象とし、また1年毎の追跡入力を継続することを前提に29項目、小児腎症では慢性腎炎、ネフローゼ症候群のみならず先天性腎尿路奇形も想定し44項目、糖尿病性腎症では遺伝背景、糖尿病による合併症も加えて44項目を設定した。3プログラムに共通している入力項目は、患者基本情報、疾患の診断、治療法、腎障害である.
本プロジェクトでは、多施設、不特定の参加者を見込み①操作が簡単である、②フィールド追加・削除などの変更が容易である、③2000年問題をクリアしている、④World Wide Web上でデータベース公開が可能なこと、⑤個人として利用、拡張が可能なこと、などの点を考慮した結果プロトタイプ用として市販ソフト(ファイルメーカーPro)を採用した.
3)病理画像ならびにマルチデータベース 構築
腎不全予防治療指針を作成するにあたっては、臨床データの把握とともに腎生検による病理診断(WHO分類)が必要である。正しい的確な病理形態診断なくして適切な治療および予後の推測はあり得ないが、腎病理を専門にする日本病理学会認定病理医の数は極めて少なく、遠隔病理診断の環境も発展途上の段階である.そこで、病理診断をする際にも、出来るだけ診断基準が一定となる参照プログラムを、国立佐倉病院内の腎病理画像データベース約500例の資料からIgA腎症を対象にプロトタイプを構築した. Web上にGraphical User Interfaceを多用し、患者情報、病理画像(光学用染色・免疫染色・電顕)、所見、ならびにコメントを組合せた症例提示プログラムである.病理画像は光顕、蛍光抗体法、電顕写真が閲覧できるようにし、まずサムネイル形式で保存した。それぞれの写真の所見が記入できる欄も用意し、理解しやすいようにした.
今後は、本プログラムをコンピュータネットワークに接続可能な全国の診療技術の向上を図ることを目的に、カンファレンスサーバおよび画像ファイリング管理システムMu1ti Modality Maneger(MMM)で構成し、Web上に症例カンファレンスを提案したい.
4)全国コンピュータネットワーク構築
HOSPnet上に腎疾患関連情報の提供プログラムである「腎ネット;国立病院等腎疾患ネットワーク」を国立佐倉病院をキーステーションとして接続するにあたり、当研究班で作成した腎症患者登録データベースならびに腎病理参照プログラムの接続し、HOSPnet利用者の意見徴収を開始した.
クライアントからの登録は、HTML内にClaris Dynamic Markup Language(CDML)タグを含むHTMLによってフォーマットファイル作成が可能ポップアップリストを多数採用することにより、登録時の入力時間の省力化を計った.
5)ネットワーク安全性の評価
医療分野での情報技術利用の拡大は、個人情報(プライバシー)とデータの安全性(セキュリティ)において、ハードウェア、ソフトウェア、システム運用の3つの側面から考慮する必要がある.セキュリティポリシーは、診療情報の安全性は診療情報の管理体制(組織、システムの運用、保管方法、監査体制、保守体制など)と情報処理技術(暗号化、認証システムなど)の総合的な組合わせによって達成されるもので、情報技術のみに依存するべきものではない点に注意する必要がある.
本システムはHOSPnet上に構築されるのであるから、当然ながらHOSPnet全体のセキュリティボリシーとの整合を取ることが絶対に必要である.ユーザー管理にあたっては、一人一人のユーザー毎に設定を行うのではなく、ユーザーを職種などからグループ化し、それぞれに対して権限を設定していくのが管理上望ましい.
今回の腎疾患データベースのプロトタイプ運用に当たっては、まず参加医師がエントリーし、事務局から選択されたデータベース毎に医師個人にパスワードを発行し、今回は登録と参照のみを認める方式を採用し、将来に向けて問題点を明らかにすることとした.
6)腎疾患医療の実状と患者QOL調査
血清クレアチニン値1.5mg/dl(女性 1.3mg/dl)から5.0mg/dlの成人保存期腎不全患者を医学的、社会的、経済的など多角的見地から腎疾患医療の評価を行うため、国際的標準となっている患者QOL(SF36様式)、preference(EQ-5D様式)、医療cost 、腎臓病食の摂取状況などに関するアンケート調査様式を作成し、本プロジェクトに約400人の栄養師参加を見込んで、700、総計約1500人を対象とした約2年間の調査を開始した.
7)腎臓病の啓発情報発信
腎不全予防策の一環として、インターネットおよびHOSPnetのサーバーに腎不全予防のための教育プログラム、疾患情報、腎疾患Q&A、患者手記などを開設し、電子メールを利用した腎不全関連情報およびの医療相談システムの在り方について検討を行うための整備を行なった.
蛍光抗体法がルーチンに行われるようになった1970年代後半以降の症例データベースの結果、IgA腎症が慢性腎炎の半数以上を占めているが、発生数はほぼ横ばいのようである.感染後急性糸球体腎炎および膜性増殖性糸球体腎炎は減少傾向にあり、いわゆる好中球細胞質抗体(とくに昨ANCA)陽性の特発例で65歳以降の高齢者を中心に急速進行性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、間質腎炎の増加が認められる.
2) 腎疾患患者データベース作成
中規模における登録法データベースは目的とする解析に必要な惰報量を満たすにはカルテから手入力で転記する方式では欠損が多く、項目の選定が重要なポイントにある.大規模データベースはデータの信頼性とデータの集中性は良いが、利用する際のかなり複雑な手続きが必要となりデータの利用に大きな問題点がある.稀少症例のデータベースではアンケート内容がやや細部にわたった場合、記載しにくく、返信が滅少する.以上の経験を踏まえて、今回、コンピュータネットワークを利用しての腎疾患患者データベースのプロトタイプ作成に当たっては、成人腎症ではIgA腎症を主な対象とし、また1年毎の追跡入力を継続することを前提に29項目、小児腎症では慢性腎炎、ネフローゼ症候群のみならず先天性腎尿路奇形も想定し44項目、糖尿病性腎症では遺伝背景、糖尿病による合併症も加えて44項目を設定した。3プログラムに共通している入力項目は、患者基本情報、疾患の診断、治療法、腎障害である.
本プロジェクトでは、多施設、不特定の参加者を見込み①操作が簡単である、②フィールド追加・削除などの変更が容易である、③2000年問題をクリアしている、④World Wide Web上でデータベース公開が可能なこと、⑤個人として利用、拡張が可能なこと、などの点を考慮した結果プロトタイプ用として市販ソフト(ファイルメーカーPro)を採用した.
3)病理画像ならびにマルチデータベース 構築
腎不全予防治療指針を作成するにあたっては、臨床データの把握とともに腎生検による病理診断(WHO分類)が必要である。正しい的確な病理形態診断なくして適切な治療および予後の推測はあり得ないが、腎病理を専門にする日本病理学会認定病理医の数は極めて少なく、遠隔病理診断の環境も発展途上の段階である.そこで、病理診断をする際にも、出来るだけ診断基準が一定となる参照プログラムを、国立佐倉病院内の腎病理画像データベース約500例の資料からIgA腎症を対象にプロトタイプを構築した. Web上にGraphical User Interfaceを多用し、患者情報、病理画像(光学用染色・免疫染色・電顕)、所見、ならびにコメントを組合せた症例提示プログラムである.病理画像は光顕、蛍光抗体法、電顕写真が閲覧できるようにし、まずサムネイル形式で保存した。それぞれの写真の所見が記入できる欄も用意し、理解しやすいようにした.
今後は、本プログラムをコンピュータネットワークに接続可能な全国の診療技術の向上を図ることを目的に、カンファレンスサーバおよび画像ファイリング管理システムMu1ti Modality Maneger(MMM)で構成し、Web上に症例カンファレンスを提案したい.
4)全国コンピュータネットワーク構築
HOSPnet上に腎疾患関連情報の提供プログラムである「腎ネット;国立病院等腎疾患ネットワーク」を国立佐倉病院をキーステーションとして接続するにあたり、当研究班で作成した腎症患者登録データベースならびに腎病理参照プログラムの接続し、HOSPnet利用者の意見徴収を開始した.
クライアントからの登録は、HTML内にClaris Dynamic Markup Language(CDML)タグを含むHTMLによってフォーマットファイル作成が可能ポップアップリストを多数採用することにより、登録時の入力時間の省力化を計った.
5)ネットワーク安全性の評価
医療分野での情報技術利用の拡大は、個人情報(プライバシー)とデータの安全性(セキュリティ)において、ハードウェア、ソフトウェア、システム運用の3つの側面から考慮する必要がある.セキュリティポリシーは、診療情報の安全性は診療情報の管理体制(組織、システムの運用、保管方法、監査体制、保守体制など)と情報処理技術(暗号化、認証システムなど)の総合的な組合わせによって達成されるもので、情報技術のみに依存するべきものではない点に注意する必要がある.
本システムはHOSPnet上に構築されるのであるから、当然ながらHOSPnet全体のセキュリティボリシーとの整合を取ることが絶対に必要である.ユーザー管理にあたっては、一人一人のユーザー毎に設定を行うのではなく、ユーザーを職種などからグループ化し、それぞれに対して権限を設定していくのが管理上望ましい.
今回の腎疾患データベースのプロトタイプ運用に当たっては、まず参加医師がエントリーし、事務局から選択されたデータベース毎に医師個人にパスワードを発行し、今回は登録と参照のみを認める方式を採用し、将来に向けて問題点を明らかにすることとした.
6)腎疾患医療の実状と患者QOL調査
血清クレアチニン値1.5mg/dl(女性 1.3mg/dl)から5.0mg/dlの成人保存期腎不全患者を医学的、社会的、経済的など多角的見地から腎疾患医療の評価を行うため、国際的標準となっている患者QOL(SF36様式)、preference(EQ-5D様式)、医療cost 、腎臓病食の摂取状況などに関するアンケート調査様式を作成し、本プロジェクトに約400人の栄養師参加を見込んで、700、総計約1500人を対象とした約2年間の調査を開始した.
7)腎臓病の啓発情報発信
腎不全予防策の一環として、インターネットおよびHOSPnetのサーバーに腎不全予防のための教育プログラム、疾患情報、腎疾患Q&A、患者手記などを開設し、電子メールを利用した腎不全関連情報およびの医療相談システムの在り方について検討を行うための整備を行なった.
結論
1)初年度として3種の腎症データベースのプロトタイプを作成HOSPnetを用いてWeb上で登録を開始した.
2)腎疾患カンファレンス・プログラムのプロトタイプを作成した.
保存期腎不全患者の医療評価に資する患者QOL調査に着手した.
腎疾患解説のホームページを作成した.
2)腎疾患カンファレンス・プログラムのプロトタイプを作成した.
保存期腎不全患者の医療評価に資する患者QOL調査に着手した.
腎疾患解説のホームページを作成した.
公開日・更新日
公開日
-
更新日
-