医療への応用を考えた画像を用いたバーチャル基礎技術研究

文献情報

文献番号
199800785A
報告書区分
総括
研究課題名
医療への応用を考えた画像を用いたバーチャル基礎技術研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
辰巳 治之(札幌医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 村上弦(札幌医科大学医学部)
  • 高沖英二(メタ・コーポレーションジャパン)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,607,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
米国医学図書館(NLM) で行なっているVisible Human Project(VHP) のデータや情報G7 のsubproject 8 によるMulti-lingual Anatomical Digital Database の活動を参考にし、人体の解剖学的構造物をバーチャル技術で表現し活用するのに必要な要素技術の調査研究を行い、それに基づきプロトタイプの開発を行うのが目的である。これにより、画像情報等、様々なデータをネットワークを介してうまく扱えるようになれば、医学における高度情報化が促進され、医療への応用も容易になると考えられる。
研究方法
人体の構造に関する種々のディジタルデータを大量に且つ容易に蓄積でき、整理できる方法を開発し、バーチャル技術で表現できるようにする。即ち、各データを関連づけ再利用が容易な方法を検討し、それに必要な基礎技術およびプロトタイプのアプリケーション開発を行なう。上記の技術開発をする一方で、具体的にデータを作成し蓄積しながら、そのデータの再利用をするときの問題点を明らかにし改良を加え、必要な要素技術を検討する。そして、これらのものが何処からでもバーチャルに利用できるように、ネットワーク技術の評価を行ない、Intranet およびInternet からの利用を実験する。また、解剖学の構造物を意味のある単位に別けられるように、画像データの領域分割(segmentation)できるようなアプリケーション開発を行う。分割した領域を三次元的に扱えるようにして、その構造物に対して名称を付加する。最終的には、米国立医学図書館のプロジェクトであるUMLS(Unified MedicalLanguage System)の解剖学用語と整合性を持たせ、対応する日本語訳をつけられるように検討する。
結果と考察
1. 人体基礎データ蓄積
実際の実験に使うデータとして、すでにあるVHP のデータを用いると共に、新たに光学顕微鏡及び共焦点レーザー顕微鏡からコンピュータ制御により連続的に画像を取り込むシステムを開発し、それにより得られた画像データも用いる。ネットワークを介して利用可能なように、サーバー・クライアント型のシステムを構築した。現在のネットワーク環境では機器の制御コマンドはインターネットを介しても利用可能であるが、画像を送信するには厳しい状況であった。そこで焦点を絞り、WWW でのデータ取得を効率良く高速に行えるようにマルチホームの環境を設定し良い結果を得た。
2. 画像データ参照システム
VHP の女性の横断面データだけで、35Gbyte あり、一枚の画面で約7Mbyte あり、取り扱いが困難であった。この様に大きいファイルを連続的に素早く観察しようとすると、ハードディスクのアクセスに時間がかかる。そこで種々の条件で比較検討したところ、大きいファイルより画像圧縮したファイルをメモリ上で展開する方がディスクアクセスが少ないので速く、厳密な画像処理をしないでoverview するだけなら非可逆的圧縮でも十分使える。そこで、全体像の把握ができるように、それぞれの画像を縦横1/6 に縮小し、その画像を元に前額断、矢状断の画像を作成し、X,Y,Z の任意の断面を観察できるViewer を作成した。
3. 領域分割と三次元化
前記のViewer で全体像を観察しながら、任意の横断面で、元の大きさの画像から解剖学的構造物の輪郭を抽出できるアプリケーションを開発した。マウスを使って構造物の輪郭を、連続した点により作成する方法と、代表点をクリックし、その間をスプライン関数で補完する方法とを実装した。また、得られた輪郭は開始点(x,y) から始まり、次の点の方位をあらわす数字からなるchain data としてテキストファイル形式で保存する。三次元構造物の基本単位としてメタボールを使い三次元立体再構築する。即ち、各断面のchain data で表される輪郭の内にメタボールを埋め、それを積み重ねて三次元再構築画像を生成する。このメタボールは、描画(rendering) するときになめらかに融合する性質があり、生体のような複雑な構造物を表現するのに適している。各構造物の関連をtext file にて記述することにより、色々な構造物からなる臓器や器官、或は、細胞や組織をオブジェクト化して表現することが可能となった。
4. Segmentation の統一フォーマット
情報G 7のGlobal Healthcare Application Project(GHAP) のSP-8 のMulti-Language Anatomical Digital Databaseでは、各国が協力して構造物のsegmentation(領域分割) を行っており、米国国立医学図書館では、各断面のsegmentation データの統一フォーマットの作成に着手した。そこで、連絡をとりながら、統一フォーマットが決り次第、我々のchain data をそれに変換できるように用意している。
5. UMLS の活用
莫大な量の用語の塊であるUnified Medical Language System(UMLS) の各file を解析し、再利用できるようにサンプルプログラムを作成した。また、その中から解剖学用語を抽出するために、我々が作成した解剖学手引書やクレメンテの教科書から解剖学用語を集め、日英の対応ファイルを作成した。
考察
医療への応用を考えた場合、必要なときに必要なデータを即時に参照できることが必要であるが、それを実現するためには、種々の基礎要素技術の開発と使い方に応じた組み合わせが必要である。連続的な位置情報をもったデータを、数字を指定することにより扱うのではなく、直感的に扱えるように工夫することにより、かなり作業が軽減されるようになった。しかし、実際のところは、余りにも元のデータが大きいので、必要最小限の部分的なデータだけを利用しており、システムのレベルアップが次の課題でもある。
結論
VHP の画像データを概観し、容易に元データの参照ができるようになり、解剖学的構造物をsegmentation するのに必要な最小限のツールのプロトタイプはできあがった。しかし、まだまだ手作業が非常に多く、処理枚数も莫大なので、コンピュータやネットワークの利点を活かし分散処理ができるように考えている。

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研究報告書(紙媒体)

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