災害発生時の分野横断的かつ長期的なマネジメント体制構築に資する研究

文献情報

文献番号
201927025A
報告書区分
総括
研究課題名
災害発生時の分野横断的かつ長期的なマネジメント体制構築に資する研究
課題番号
19LA2003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 和功(和歌山県新宮保健所)
  • 相馬 幸恵(新潟県村上地域振興局 健康福祉部地域保健課)
  • 菅 磨志保(関西大学 社会安全学部)
  • 原岡 智子(活水女子大学 看護学部看護学科)
  • 冨尾 淳(東京大学大学院医学系研究科 公衆衛生学)
  • 池田 真幸(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,993,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 日本でのこれまでの災害において、分野横断的な連携や情報共有が不十分であり、種々の支援者等のマネジメントが十分に行われなかったという課題が指摘されている。また、高齢者人口割合の増加により、高齢者を始めとした災害時要配慮者への支援の重要性がますます高くなってきている。そこで、厚生労働省5課局部長通知「大規模災害時の保健医療活動に係る体制の整備について」が2017年7月5日に発出され、保健医療調整本部を設置することなどが示された。そこで、この研究の目的は、この保健医療調整本部の標準化に関する知見を得て、保健医療福祉活動の総合的なマネジメントの具体的な方策を確立することである。研究初年度である2019年度は、主にこれまでの災害時の保健医療活動の状況の調査、そこから抽出された課題や論点の整理を主眼とした。
研究方法
 自治体へのアンケート調査、被災自治体や海外へのインタビュー調査、関係者のフォーカスグループディスカッション等を行い、研究班内で検討を行った。
特に、保健医療調整本部等に関する調査としては、全国47都道府県及び20政令指定都市に対し、電子メールによる調査を実施した。また、実事例に基づく調査として、2019年の一連の風水害被災地、具体的には災害救助法が適用となった全地域の都道府県庁、保健所、市区町村を対象にアンケート調査を行った。
結果と考察
1.保健医療調整本部等に関する調査及び論点整理
 保健医療調整本部等に関する調査の有効回収数(有効回収率)は、都道府県45(95.7%)、政令市18(90.0%)であった。その結果、都道府県8割、政令市6割が、大規模災害発生時の保健医療調整本部の設置を計画等に明記しており、設置に関するマニュアルを作成していたのは各3割であった。保健医療調整本部のあり方等に関して、保健医療調整本部に求められる機能の明確化と強化など10項目の論点が整理された。

2.実事例に基づく調査
 インタビュー調査等の結果、警戒期における要配慮者等の避難や都道府県等における連絡経路の明確化等における成功点や課題を把握した。2019年の一連の風水害に関するアンケート調査の結果、保健医療調整本部が対象とした活動(複数回答)は、都道府県では医療施設の支援、医療・救護、一般避難所の支援が多く、県型保健所では、医療・救護、要配慮者の支援、感染症対策、一般避難所の支援、医療施設の支援、福祉施設の支援が多かった。

3.産学民官の連携に関する調査
 福祉系支援団体を含む多様な主体による被災者支援の体制や災害ケースマネジメントの事例から支援の可能性と課題を検討した。福祉系支援団体の多くが、団体の独自判断で災害支援を行っており、要請に基づく保健・医療サービスとの連携・調整や財源確保に課題を抱えていたこと、罹災証明のみに基づく被災者支援制度の限界等の課題が明らかになった。

4.指揮・統制・調整・コミュニケーション(C4)に関する海外の情報収集
 米国の調査の結果、大規模災害時の対策本部(Emergency Operations Center, EOC)の調整・支援機能を重視したIncident Support Modelに代表される対策本部の構造モデル、EOCの業務遂行に必要な能力等をまとめたスキルセットの開発、州を越えたリージョン単位での準備・対応体制の構築などの情報が収集された。

5.分野横断的な情報共有・連携の課題
 災害時の分野横断的なマネジメント体制を構築するために、市町村、保健所、民間、国等の連携体制整備による災害対応能力の強化が重要である。そのために、平時から顔の見える関係を作っておくことが最も重要である。また、福祉部局、防災部局、民間事業者等に対しても、保健所が主になって、災害対策の会議や訓練に参加するよう働きかけ、関係を深めることが必要である。

6.避難所・在宅者等の情報把握・支援の検討
 保健師等の保健医療福祉活動チームが、避難所運営担当者等との連携のもと、早期かつ迅速に必要な情報を把握しアセスメントを行うために使用する避難所日報の統一様式及び記載要領を作成した。それらは、「災害時の保健活動推進マニュアル」の一部として全国保健師長会ホームページ(http://www.nacphn.jp/02/saigai/)に掲載されている。
結論
 保健医療調整本部等に関する調査及び論点整理、実事例に基づく調査、産学民官の連携に関する調査、指揮・統制・調整・コミュニケーション(C4)に関する海外の情報収集、分野横断的な情報共有・連携の課題、避難所・在宅者等の情報把握・支援の検討の6つの分担課題について検討を行い、これまでの災害での保健医療活動の状況及び問題点が整理された。

公開日・更新日

公開日
2020-11-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-11-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201927025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,990,000円
(2)補助金確定額
12,990,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 535,236円
人件費・謝金 140,625円
旅費 4,671,802円
その他 4,645,702円
間接経費 2,997,000円
合計 12,990,365円

備考

備考
自己充当のため。

公開日・更新日

公開日
2021-05-18
更新日
-