文献情報
文献番号
201927017A
報告書区分
総括
研究課題名
半揮発性有機化合物(SVOC)によるシックハウス症候群への影響評価及び工学的対策の検証に関する研究
課題番号
19LA1007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
金 勲(キム フン)(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
- 林 基哉(国立保健医療科学院 建築・施設管理研究分野)
- 稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 伊藤 加奈江(戸次 加奈江)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 荒木 敦子(北海道大学 環境健康科学研究教育センター)
- アイツバマイ ゆふ(北海道大学 環境健康科学研究教育センター)
- 欅田 尚樹(産業医科大学 産業保健学部)
- 東 賢一(近畿大学 医学部)
- 篠原 直秀(産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,520,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
可塑剤・難燃剤成分として幅広く使われているSVOCの健康影響を評価すると共にリスク低減のための工学的・保健衛生学的対策の提案を目標とする。その結果、①SVOCへの曝露によるシックハウス症候群の誘発可能性の定量的な評価、②定量評価を踏まえた工学的対策の検討と提案、が期待される。
従来のシックハウス症候群はVOCs、アルデヒド類が原因とされてきたが、近年それより沸点が高く吸着性の強いSVOC(半揮発性有機化合物;Semi Volatile Organic Compounds)の健康被害が懸念されている。特に、SVOCの中でもフタル酸エステルはプラスチックの製造工程で柔軟性や成形性を高める可塑剤の代表成分であり、リン酸エステルは難燃性を持たせた可塑剤である。これらの物質は沸点が240~260℃から380~400℃と高く、SVOCに分類される物質が多い。床材、壁紙など建材、玩具や子供用品、各種容器や化粧品、皮革、繊維製品などの生活用品に至るまで我々の生活の中で幅広く使われている。SVOCの多くは蒸気圧が低いため空気中に存在しにくく物体表面やダスト表面に付着して存在しているとされるが、そのメカニズムは解明されていない。
国内や先進国におけるフタル酸類の生産量や使用量は減少傾向にあるが、リン酸系は増加しており、また膨大な既存生産分は依然と環境や人体へ脅威となっている。更に、中国やインドなど新興国における生産量及び使用量は依然膨大であり、輸入品としての国内流入は防げない状況にある。
従来のシックハウス症候群はVOCs、アルデヒド類が原因とされてきたが、近年それより沸点が高く吸着性の強いSVOC(半揮発性有機化合物;Semi Volatile Organic Compounds)の健康被害が懸念されている。特に、SVOCの中でもフタル酸エステルはプラスチックの製造工程で柔軟性や成形性を高める可塑剤の代表成分であり、リン酸エステルは難燃性を持たせた可塑剤である。これらの物質は沸点が240~260℃から380~400℃と高く、SVOCに分類される物質が多い。床材、壁紙など建材、玩具や子供用品、各種容器や化粧品、皮革、繊維製品などの生活用品に至るまで我々の生活の中で幅広く使われている。SVOCの多くは蒸気圧が低いため空気中に存在しにくく物体表面やダスト表面に付着して存在しているとされるが、そのメカニズムは解明されていない。
国内や先進国におけるフタル酸類の生産量や使用量は減少傾向にあるが、リン酸系は増加しており、また膨大な既存生産分は依然と環境や人体へ脅威となっている。更に、中国やインドなど新興国における生産量及び使用量は依然膨大であり、輸入品としての国内流入は防げない状況にある。
研究方法
具体的には下記6項目を遂行する。
1)ハウスダストにおけるSVOC(フタル酸及びリン酸系)成分に関する分析法の確立及び室内汚染実態の調査(稲葉、戸次)
2)空気中SVOC濃度と建築・居住環境の調査(林、金)
3)ダスト及び尿中SVOC濃度分析による室内からの児童曝露推定と健康影響(荒木、アイツバマイ、研究協力者:岸玲子)
4)建材からハウスダストへのSVOC移行・吸脱着に関するメカニズム解明(篠原)
5)SVOCの多経路多媒体曝露を考慮した居住者の健康リスク評価(東)
6)建築・生活環境を考慮した工学的・衛生学的対策の検討と提案(金、欅田)
1)ハウスダストにおけるSVOC(フタル酸及びリン酸系)成分に関する分析法の確立及び室内汚染実態の調査(稲葉、戸次)
2)空気中SVOC濃度と建築・居住環境の調査(林、金)
3)ダスト及び尿中SVOC濃度分析による室内からの児童曝露推定と健康影響(荒木、アイツバマイ、研究協力者:岸玲子)
4)建材からハウスダストへのSVOC移行・吸脱着に関するメカニズム解明(篠原)
5)SVOCの多経路多媒体曝露を考慮した居住者の健康リスク評価(東)
6)建築・生活環境を考慮した工学的・衛生学的対策の検討と提案(金、欅田)
結果と考察
本年度は、ハウスダスト中のフタル酸エステル類とその代替物質、そしてリン系難燃剤に関する新たな分析法を確立したことで、ハウスダスト中のSVOCに関する汚染実態調査及びリスク評価を行うための研究大勢を整えることができた。また、本年度予定していた全国調査におけるハウスダストの採取及び健康状態や住環境に関するアンケート調査を終え、現在試料に含まれるSVOCの濃度解析を進めているところである。これらの解析データを用い、次年度は健康影響との関連やSVOCのリスク評価を行う予定である。一方で、化合物の複合曝露について新たな解析手法を導入することで、SVOCとシックハウス症候群との関連性を示唆する新たな知見が見いだされた。さらにフタル酸エステル類の尿中代謝物に関する分析法を確立したことで、ハウスダストを介したヒトへの曝露の寄与を明確に見積もることが可能となった。さらに、フタル酸エステル類については、成分ごとに建材からダストへの移行メカニズムが明らかとされた。本データは、今後、建築学的観点からSVOCに関する室内の汚染低減のための対策を考案する上でも非常に有用な知見である。
結論
上記の課題において本年度は、ダスト中のフタル酸類20成分及びリン系化合物14成分の分析方法を確立し全国の一般家庭から採取したハウスダスト中における各成分の曝露レベルを調査した。また、北海道スタディに参加する児童から提供された尿中の代謝物濃度やハウスダスト中SVOC成分の解析や、健康影響に関するデータを収集することで曝露推定と健康影響評価を実施し、室内のSVOC曝露評価における基礎データを蓄積している。これらSVOCの分析データと健康・生活環境アンケートを基に、次年度は成人の吸入・経口摂取による健康リスク評価を行う予定である。また、ハウスダストを介した曝露評価のみでなく本研究では、壁面や床面におけるSVOCの吸着量を調査し、吸脱着メカニズムを明らかにすることで建材から室内へのSVOC汚染を算出・予測するための基礎データを蓄積している。
次年度は本年度と同様に上記遂行項目を実施すると共に、SVOCの定量評価を始めとする調査結果を基にシックハウスに関わる建材、換気、空調、生活リテラシーなどを考慮した対策検討と保健衛生面から対策検討を行う。
引き続き行う2年目(最終年度)の成果をまとめ、室内環境のSVOC汚染状況、尿中汚染濃度を把握し健康リスク評価を行う。更に、住環境アンケートの結果を踏まえ、建築・生活環境及び保健衛生観点から考慮可能な工学的・衛生学的対策の検討と提案を行う。
次年度は本年度と同様に上記遂行項目を実施すると共に、SVOCの定量評価を始めとする調査結果を基にシックハウスに関わる建材、換気、空調、生活リテラシーなどを考慮した対策検討と保健衛生面から対策検討を行う。
引き続き行う2年目(最終年度)の成果をまとめ、室内環境のSVOC汚染状況、尿中汚染濃度を把握し健康リスク評価を行う。更に、住環境アンケートの結果を踏まえ、建築・生活環境及び保健衛生観点から考慮可能な工学的・衛生学的対策の検討と提案を行う。
公開日・更新日
公開日
2021-06-14
更新日
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