公衆浴場におけるレジオネラ症対策に資する検査・消毒方法等の衛生管理手法の開発のための研究

文献情報

文献番号
201927016A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆浴場におけるレジオネラ症対策に資する検査・消毒方法等の衛生管理手法の開発のための研究
課題番号
19LA1006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 長岡 宏美(静岡県環境衛生科学研究所 微生物部)
  • 黒木 俊郎(岡山理科大学 獣医学部)
  • 金谷 潤一(富山県衛生研究所 細菌部)
  • 田栗 利紹(長崎県環境保健研究センター 保健衛生研究部)
  • 中西 典子(神戸市環境保健研究所 感染症部)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 佐々木 麻里(大分県衛生環境研究センター 微生物担当)
  • 森本 洋(北海道立衛生研究所 感染症センター感染症部細菌グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
17,189,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
公衆浴場のレジオネラ症対策の向上に資する消毒法等の開発・評価およびレジオネラ検査法の改善・普及等を行う。令和元年9月に「公衆浴場における衛生等管理要領等」が改正され、また、「公衆浴場における浴槽水等のレジオネラ属菌検査方法について」の通知(薬生衛発0919第1号)が出されたのは、前研究班(公衆浴場等施設の衛生管理におけるレジオネラ症対策に関する研究班)を初めとするこれまでのレジオネラ研究班の成果によるものである。本研究班は改正された衛生等管理要領をより実効あるものにするために研究を遂行する。
研究方法
公衆浴場の浴槽水、シャワー水、カラン水および医療機関のレジオネラ属菌汚染実態調査。迅速検査法の評価・改良。従来検査法、標準的検査法、レジオラート/QT法の比較。比色系パルサー法の溶菌液調製法の改良、実践。携帯型フローサイトメーターを使用したレジオネラリスク評価法の研究協力者への研修実施。免疫磁気ビーズを用いた選択的濃縮法の検討。全ゲノム系統解析によるMLVAとSBTの手法間の相違点の検討。MiseqのリードデータからSTを決めるパイプラインの構築。入浴施設の衛生管理ガイドライン・集団発生時調査ガイドライン作成のためのワーキンググループの立ち上げ及び作成実施。外部精度管理調査のサポート及び解析。検査法に係るアンケート調査及び検査施設訪問による疑問点解消。検査研修会実施への基盤作り。公衆浴場でのモノクロラミン消毒効果の確認。ホームページの管理運営。
結果と考察
 浴槽水、湯口水、シャワー水、カラン水、採暖槽水等149検体中34検体(22.8%)から10 CFU/100 ml以上のレジオネラ属菌が検出された。シャワー・カラン水は、14.3%(5/35検体)が1,000 CFU/100 ml以上の菌数であった。滞留水での塩素濃度・温度の低下による生物膜形成がその原因の一つであり、特にエアロゾルが発生しやすいシャワー水の衛生管理は肝要である。浴槽水のレジオネラ属菌検出には非濃縮検体検査の併用実施が有用であった。Legionella pnumophilaを特異的に検出するレジオラート/QT法は、浴槽水の培養で、従来の平板培養法と相関があり、平板培養法でL. pneumophila以外のレジオネラ属菌が検出された蛇口水では陰性となった。
 迅速検査法である比色系パルサー法は現場で行えるように方法の改良を行い、実践した。携帯型フローサイトメーターを使用したレジオネラリスク評価法について、標準作業書・ワークシート作成を行い、複数の協力機関で実施し、L. pneumophilaの定性確認が再現された。モバイル型qPCR装置は従来の装置と同等の性能が確認できたが、現場でのレジオネラ属菌の検出には、DNA抽出法の工夫が求められる。
 分子疫学的手法としてのMLVAとSBTは全ゲノム系統解析の傾向を十分に反映していることが示された。
 「衛生等管理要領」に基づき、指導及び現場で利用できるよう具体的な「入浴施設の衛生管理ガイドライン」並びに、入浴施設が関連するレジオネラ症集団感染事例で有用な「集団発生時調査ガイドライン」作成の2つのワーキンググループを立ち上げ、ガイドライン案を作成した。
 レジオネラ外部精度管理サーベイを継続し、各検査機関が継続してサーベイに参加する必要性が確認できた。アンケート調査や直接の技術指導により、より一層の改善、安定化を目指している。
 高pHの温泉水を循環利用している2箇所の営業施設で、モノクロラミン消毒を行った。モノクロラミン消毒によりレジオネラ属菌は検出されなかったが、従属栄養細菌数が増加した。循環式浴槽は、定期的に強力な洗浄・消毒が必要と考えられた。
結論
 令和元年9月に通知された「公衆浴場における浴槽水等のレジオネラ属菌検査方法」の妥当性を検証した。新しく開発されたレジオラート/QT法は、浴槽水試料で、従来の平板培養法と相関のある結果が得られた。レジオネラ属菌DNA・RNA・表層抗原等を検出対象とする各種迅速検査法が現場で行えるように、モバイル型qPCR装置の試用や比色系パルサー法の改良、携帯型フローサイトメーターを使用したレジオネラリスク評価法の標準作業書・ワークシートの作成を行った。
 MLVA法は感染源調査時の菌株のスクリーニングに有用であることが確認できた。入浴施設の衛生管理ガイドライン案並びに集団発生時調査ガイドライン案を作成した。各検査機関が継続してレジオネラ外部精度管理サーベイに参加する必要性を確認した。

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201927016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,342,000円
(2)補助金確定額
18,342,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,361,203円
人件費・謝金 154,906円
旅費 2,404,397円
その他 2,268,510円
間接経費 1,153,000円
合計 18,342,016円

備考

備考
預金利息16円

公開日・更新日

公開日
2021-05-10
更新日
2021-06-14