化学物質等の検出状況を踏まえた水道水質管理のための総合研究

文献情報

文献番号
201927015A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質等の検出状況を踏まえた水道水質管理のための総合研究
課題番号
19LA1005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
松井 佳彦(北海道大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 伊藤 禎彦(京都大学 大学院工学研究科)
  • 越後 信哉(京都大学 大学院工学研究科)
  • 片山 浩之(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 鎌田 素之(関東学院大学 理工学部)
  • 小坂 浩司(国立保健医療科院 生活環境研究部)
  • 小林 憲弘(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第三室)
  • 高木 総吉(地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所 衛生化学部生活環境課)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 松本 真理子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 三浦 尚之(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 白崎 伸隆(北海道大学 大学院工学研究院)
  • 松下 拓(北海道大学 大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
29,576,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水道水質基準の逐次見直しなどに資すべき化学物質や消毒副生成物,設備からの溶出物質,病原生物等を調査し,着目すべき項目に関してそれらの存在状況,監視,低減化技術,分析法,暴露評価とリスク評価に関する研究を行い,水道水質基準の逐次改正などに資するとともに,水源から給水栓に至るまでの水道システム全体のリスク管理のあり方に関して提言を行う.
研究方法
原水や水道水質の状況,浄水技術について調査研究を行うため,微生物(ウイルス),微生物(細菌),微生物(寄生虫等),化学物質・農薬,消毒副生成物,臭気物質,リスク評価管理,水質分析法の8課題群-研究分科会を構築し,研究分担者15名の他に41もの水道事業体や研究機関などから91名の研究協力者の参画を得て,各研究分担者所属の施設のみならず様々な浄水場などのフィールドにおける実態調査を行った.
結果と考察
水道水の原水におけるウイルスの汚染実態を調査した.ノロウイルスGII,ロタウイルスAよりもPMMoVは高頻度かつ高濃度で表流水試料に含まれるウイルス除去指標として有用であることをサポートするデータが蓄積された.コクサッキーウイルスB3型,B4,B5,エコーウイルス11型の野生株,およびそれぞれの基準株を用いて,遊離塩素,紫外線,およびオゾンによる処理性を評価した.その結果,遊離塩素では基準株と比して2.3倍,オゾンでは2倍程度高い耐性を有す株が存在した.従属栄養細菌数とレジオネラ汚染の関係性に関する文献考察を行った.HPCレベルとレジオネラ属菌数またはその陽性率の間の関係については,議論継続中であることが明らかとなった.
 動向の注目されているクロラントラニリプロールが0.235 µg/Lで検出された.エチプロールを塩素処理したところ,エチプロールは検出されず,主な分解物としてエチプロールスルホンが検出された.
代謝を考慮したChE活性阻害性試験を構築し,この試験を用いてダイアジノンとそのオキソン体の毒性を評価したところ,この2つの物質は同程度の毒性を有することが分かった.
淀川水系周辺における実態調査により,3,5-ジメチルピラゾール(DMP)及びDMP塩素化物が検出された.DMPの処理法として,塩素添加前のオゾン処理とGAC処理の有効性を示した.1,3,5-トリヒドロキシベンゼン,アセチルアセトン及びアセトンジカルボン酸は溶存オゾンが検出される条件であれば,オゾン処理及びGAC処理において対応が可能であることを示した.マンガンイオンはクエン酸およびクエン酸と類似の化学構造を持つアコニット酸のハロ酢酸生成能を増加させることを示した.
 カルキ臭代替指標としての全揮発性窒素(TPN)の妥当性評価の準備として,NCl3の中性域の回収率が濃度に依存せずほぼ一定であることを確認した.GC/olfactometry(GC/O)による分析の前処理に用いる,固相マイクロ抽出法(SPME)の回収率は22%以上であり,SPME法を前処理としたGC/Oの方法は概ね間違ってはいなかったと判断された.カルキ臭に関する対応集に記載予定である,30種の含窒素化合物のカルキ臭生成能は20~400 TONであり,多くの場合,TPNに寄与する主な物質はNCl3であった.4種類のアミン類を対象に誘導体化GC/MSによる分析を試み,検出可能であることを確認した.
リスク評価に関する研究の成果は以下のようである.ベンゼンの揮発経由の吸入曝露や経皮曝露を合算評価すると,水質基準値は現行の値の半分程度が妥当であると示唆された.短期的な水道水質汚染が生じた際に参考とすべき参照値として水道水質基準項目のうち6項目について亜急性参照値を設定した.カドミウム,セレン,水銀の亜急性参照値は基準値の3~10倍以上の値となったが,ヒ素,鉛及び六価クロムの亜急性参照値は基準値と同値となった.さらにPFOA及びPFOSのついて最近の国際評価について情報を収集した.
 水質分析法に関する研究として,水質分析をより簡便・迅速かつ高精度に分析できる新規分析法を開発するとともに,平常時および異常発生時の簡便かつ網羅的な水質スクリーニングを行うことができる分析手法について検討した.スクリーニング法は検査法として簡便に農薬類を測定できるだけでなく,そのデータを追加解析することにより,未知の化学物質の存在状況を把握することにも利用できることが明らかとなった.また,塩素酸(基準項目),亜塩素酸(管理目標設定項目)のLC/MS(/MS)一斉分析条件を確立した.それぞれ告示法,通知法に追加できると考えられる.
結論
亜急性参照値など水道労働省告示や厚生科学審議会生活環境水道部会,水質基準逐次改正検討会資料に資すべき情報が順調に収集されつつある.

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201927015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
32,000,000円
(2)補助金確定額
31,983,000円
差引額 [(1)-(2)]
17,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 15,986,940円
人件費・謝金 3,074,374円
旅費 7,846,007円
その他 2,652,142円
間接経費 2,424,000円
合計 31,983,463円

備考

備考
自己資金:  463円

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-