地域保健における保健所に求められる役割の明確化に向けた研究

文献情報

文献番号
201927013A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健における保健所に求められる役割の明確化に向けた研究
課題番号
19LA1003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 内田 勝彦(大分県東部保健所)
  • 福永 一郎(高知県安芸福祉保健所)
  • 大木元 繁(徳島県三好保健所)
  • 白井 千香(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学教室)
  • 永井 仁美(大阪府富田林保健所)
  • 土屋 厚子(静岡県健康福祉部)
  • 佐伯 圭吾(奈良県立医科大学 医学部 疫学・予防医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 地域保健体制は住民に身近なサービスを提供する市町村と、多くの技術職種をもち専門的な保健医療ニーズや対物保健を行う保健所が、時代の変遷に応じたそれぞれの役割を担ってきた。地域保健活動の方向性は「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」及び「地域健康危機管理ガイドライン」により具体的に示されてきた。本研究は、保健所業務の現状を把握、分析、整理し、地域保健における新たな課題に十分に対応するために保健所に求められる役割について検討し、これらの指針等の改訂に向けての論点整理と政策的提言を行うことを目的とする。
研究方法
 今年度は論点を整理するため、7つの課題分野ごとに関係者等を招へいしてフォーカスグループディスカッション、訪問インタビュー調査等を行い地域保健の推進に係る課題を抽出した。①総合的な保健医療福祉システム、②健康危機管理、③食品衛生・環境衛生対策、④健康づくり・多様な住民の健康問題、⑤保健所及び市町村保健センターの整備及び運営、⑥地域保健人材確保育成、⑦地域保健に関する調査及び研究の7つである。また、Web会議を含む全体研究班会議、メールによる意見交換を行い、研究の進行管理及び研究成果のとりまとめを行った。
結果と考察
(1) 総合的な保健医療福祉システム(地域包括ケア、地域医療政策)
 ソーシャルキャピタル、地域・職域連携、市町村へのコンサルティングや併走支援、医療・介護・福祉との連携強化などが課題として挙げられた。
 レセプトデータ等を活用した評価や健康格差をもたらす要因分析、調整機能を活用した地域共生社会の推進などが保健所の役割として期待される。

(2) 健康危機管理
 感染症のアウトブレイク対応、結核対策、医療感染症対策ネットワーク、薬剤耐性(AMR)、災害保健医療支援・受援体制、情報共有、リスク評価、リスクコミュニケーションなどが課題として挙げられた。
 ダイバーシティの視点に立った取組み、健康危機管理の事前対応及びその地域調整、情報共有や情報交換の体制整備などが期待される。

(3) 食品衛生・環境衛生対策
 事業者自主管理、広域・散発食中毒、クックチルドやネット活用等の新たな業態・サービス、住環境対策、温度環境対策、環境衛生監視指導率の格差などが課題として挙げられた。
 事業者や業界団体の支援育成、関係者間での情報共有による広域・散発食中毒への対応、住宅環境衛生、流通の広域化・国際化や業態の多様化への対応などが期待される。

(4) 健康づくり・多様な住民の健康問題
 ソーシャルキャピタルの醸成を土台とした地域健康づくり活動、きめ細やかな住民対応や住民の自助・互助力の醸成、地域格差などが課題として挙げられた。
 自治体内での関連施策の連携推進、地区担当保健師制の推進、解釈付きの疫学統計情報の提供、母子保健活動の客観的評価と情報提供、生活支援と連携した難病対策、障害福祉における医療との連携や広域調整などが期待される。

(5) 保健所及び市町村保健センターの整備及び運営
 中核市・政令指定都市等における市保健所と保健センターの位置づけ、統括保健師の配置促進、医療や災害対応に対応する多様な市保健所の役割などが課題として挙げられた。
 広域意見交換の場の提供や人材育成、計画策定での協働などが期待される。

(6) 地域保健対策人材確保育成(人材の確保、資質の向上、人材確保支援計画の策定)
 地方の自治体では希望者が少なく辞退者も出るため人材確保が容易でない、特に医師は確保が困難、所属に1人配置の職種では人材育成が難しいため評価されにくく複数配置が進まないなどが課題として挙げられた。

(7) 地域保健に関する調査及び研究
 調査研究に長けた人材配置、インフラ整備、倫理問題への対応、大学等との連携などが課題として挙げられた。
 解釈付きのビッグデータの分析と提供、地域間比較、質的情報・事例の分析、大学等との共同研究などが期待される。
結論
 保健所が持つべき役割の今後の重点として、地域格差等への支援、新たな業態・課題への対応、健康危機管理が整理された。現行の基本指針に示された基本的な方向のうち、ソーシャルキャピタルについては、組織間のものなど実効向上の一層の推進が必要である。解釈付きの疫学統計情報の提供・評価や健康格差をもたらす要因分析などが保健所の役割として期待され、ハード面・ソフト面での整備が必要である。保健所の難病対策や環境衛生監視指導率、障害者総合支援法に対する市町村の取組みなどの地域格差への対応が重要である。広域・散発食中毒、新たな業態・サービスへの対応を進めて行く必要がある。健康危機管理については、感染症や災害等に的確に対応できる体制が必要である。また、必要な支援・受援が行われるような事前の調整が重要である。

公開日・更新日

公開日
2021-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201927013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,300,000円
(2)補助金確定額
5,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 591,248円
人件費・謝金 319,720円
旅費 1,512,220円
その他 1,653,812円
間接経費 1,223,000円
合計 5,300,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-05-06
更新日
-