公衆衛生等の社会医学系分野で活躍する医師の育成・確保に向けた研究

文献情報

文献番号
201927012A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆衛生等の社会医学系分野で活躍する医師の育成・確保に向けた研究
課題番号
19LA1002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
磯 博康(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 今中 雄一(国立大学法人京都大学 医学研究科)
  • 大久保靖司(国立大学法人東京大学 環境安全本部)
  • 大槻 剛巳(川崎医科大学 医学部)
  • 祖父江 友孝(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
  • 岸 玲子(北海道大学 環境健康科学研究教育センター)
  • 澤 智博(帝京大学 医療情報システム研究センター)
  • 小林 廉毅(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科)
  • 有賀 徹((独)労働者健康安全機構)
  • 和田 裕雄(順天堂大学 医学研究科)
  • 宇田 英典(鹿児島県伊集院保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
持続可能な社会を構築するためには、世代を超えて健康の維持・増進に取り組む必要があり、社会医学領域の諸活動の維持・向上が求めらるためには公衆衛生等の社会医学系分野で活躍する医師の確保と育成が重要かつ喫緊の課題である。本研究では、医師の育成・確保を目指した施策を立案し、社会実装することを目的とした。
研究方法
社会医学系専門医協会および同協会を構成する諸学会・団体の協力を得て、①社会医学系領域の医師が少ない理由の調査②その解決策を提示③社会実装という3段階の調査・研究を立案した。まず、同協会を構成する学会および団体、さらにその構成員に呼びかけて合宿を実施、社会医学系専門医の確保と育成に関する問題点を明らかにし、③社会実装については提示された解決策を基に試みる。将来的に、社会実装の効果を評価する。
結果と考察
合宿調査の結果、社会医学系専門医の確保および育成には、①社会医学系領域のキャリアの明示②同領域のコンピテンシーの確立③同領域に関心を有する医師の確保,育成等が必要であることが明らかとなった。この結果を基に以下の提案がなされた。
・コンピテンシーと教育手法の系統的整理:関連8学会6団体が共同して①コンピテンシーの確立②教育手法の確立を行う。
・モデルケースの抽出:さらに各学会団体を通じて、社会医学系各領域での具体的なモデルとなる人物を若手,中堅,指導者の各年齢層から抽出し、インタビューを行うことにより、ロールモデルを呈示する。
・社会医学系医師の魅力調査:各学会を通じて、「社会医学系専門医」を含む社会医学系の医師を対象に質問紙調査を行うことで、同専門医の魅力、社会医学系医師の魅力、及び将来的に期待する内容を調査する。
さらに本研究では、社会医学系医師の多様なキャリアを抱合する目的で、次の観点に留意した。①研究活動を通じた社会医学系医師全体の質の向上を目指した体制の構築②女性医師が活躍できる場の提案・提供、複数領域の専門医取得とそれに基づく活動、海外での活動等、多様なキャリアを抱合する体制の構築③社会医学系医師の教育機会を設けることにより、臨床経験の維持,研修機会の確保,学位や社会医学系専門医・指導医資格の取得・更新をする体制の構築、またその情報共有体制の構築④多様なキャリアパスに関するモデルケースの事例収集
また、上記提案に基づく社会実装は、キャリアおよびコンピテンシーに関し、各教室や諸部門の研究内容、業務内容等をまとめ、社会医学系専門医協会、衛生学・公衆衛生学教育協議会のホームページに載せる計画を立案した。さらに、キャリアに関しては、動画及びマンガを含めたコンテンツを作成し、対象として医学部学生、若手医師を中心に、ベテラン医師も含めて発信する予定である。令和元年度の試みとして、動画を含むコンテンツ作成およびその客観的評価を委託する業者を選定し実行中である。
我が国における社会学系医師としてのキャリアパスは未確立であり、公衆衛生分野等の社会医学領域を専門とする医師の割合は少なく、全体のわずか1.2%(2016 年3月の医師調査による)にすぎない。さらに、本研究課題である「社会医学系専門医の確保および育成の問題」は我が国だけの問題ではなく、世界的に共通の課題である。米国でも臨床医だけでは社会のニーズを満たすことが困難であることが指摘されており(Simoyan OM et al., Am J Prev Med 2011; 41: S220)、今日に至るまで様々な調査研究が行われている一例として、米国の医師不足の地域では、医学生に社会医学事業に参加させ、早期から社会医学専門医への認識を高める試みもなされている(Haq C et al. WMJ 2016; 115:322)。本研究でも、若手医師及び医学生を中心に対策を講じることを試みている。又、米国での社会医学の学位取得を目指す医学部学生への調査では、メンター,同時学位取得dual degree,スカラシップ,同窓生のネットワーク等が意思決定に影響することが示されており(McFarland SL et al., Fam Med 2016; 48: 203)、同領域のキャリアの明示が、社会医学領域への医師の確保に必要であることが示唆されている。本研究でも、キャリアの明示を試みる予定である。
本研究の最後に認知度の向上に関する調査検討も実施する予定であり、社会医学系専門医の認知度の向上が期待される。
結論
本研究により、①社会医学系領域のキャリアの明示②同領域のコンピテンシーの確立③同領域に関心を有する医師の確保・育成を試みる。その結果、本領域の若手医師における認知度が向上すると考えられ、将来的には社会医学系領域の医師の確保と育成の改善が期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201927012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,900,000円
(2)補助金確定額
3,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 103,583円
人件費・謝金 0円
旅費 531,790円
その他 2,364,627円
間接経費 900,000円
合計 3,900,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-05-07
更新日
-