医療機器の医療におけるテクノロジーアセスメントに関する研究

文献情報

文献番号
199800778A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器の医療におけるテクノロジーアセスメントに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 靖久(東京女子医科大学医用工学研究施設)
研究分担者(所属機関)
  • 古川孝(日本電気(株式会社パーソナル事業グループ主任技師長))
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療機器は、近年医療現場において急速に重要性と比重を増し、また経済規模という点からも無視できない分野を形成している。医療の質の向上と安全性の確保、医療の効率の向上にとって重要性の高い医療機器のテクノロジー・アセスメント(TA)は世界的にも一つの潮流となっている。国内外において医療機器のTAの必要性が高まった現在、医療機器TAについてその必要性、特殊性、評価項目、評価基準、国内外の経緯と現状等について、行政、医療、企業等の各側面から調査研究を実施し、今後の日本の医療機器政策についてTAの立場から提言を行うものである。
研究方法
1970年代から欧米において医療技術のTA(MTA)が始まり、日本においても1980年代からいくつかのMTAの研究がなされている。また、最近では従来のような行政側のみでなく、HMOなどが直属のMTA研究組織を有するようになっている。これらの海外情勢を各種の報告書、海外から招待した研究者の講演、ヒアリング等を通じて調査研究した。これらの知見をもとにして、その他の文献調査をも加えて研究員一同が数回にわたり討論して、研究項目を集約し、各自分担して報告書を作成し、かつ、次年度以降の課題を探索した。
結果と考察
医療機器TAは、従来から公共的行政の立場からの研究が多かったが、最近は医療の支払側といえるHMO等によって施行されるなど、現実面により密着した形をとりつつある趨勢がうかがえる。
医療機器は薬剤と違って、開発研究、製造、使用、廃棄にいたる長い複雑なライフサイクルを持ち、その評価は、それらの各過程の時間軸に沿って、それぞれの段階で施行されるのが望ましい。医療機器TAはマクロ的行政、経済、社会から、中間的な立場の企業、医療機関、さらにはミクロ的な使用者、患者などの各層にわたって、その意志決定に利用され得るものであり、それぞれの立場によって評価の重点が異なるものと思われる。特に企業側では、医療上の有効性の定量的評価、安全性やリスク管理についてのシステムの確立、経済性の評価などの課題がある。研究者や技術者の立場からは、新技術開発の促進、安全性、信頼性、有効性、医療適合性、経済的効率性等の評価項目があり、有効性については個々の技術や機器についての個別的評価と、医療システム全体の中で総合的に考えた有効性の相対的評価とがある。そして、医療機器それ自体だけでなく、使用側としての医療者の技量、熟練度などをも含めた総合的な効果性を考慮しなければならない。
近年、Evidence Based Medicine(EBM)の重要性が強調されているが、時間的遅れやデータベースの整備などの点から、機器の事前評価に直結することは難しい。EBMとリスク管理とTAの関係についてはなお検討を深める必要がある。医療機器のリスク管理については、ISO/TC210において、積極的に検討が進められており、医療機器の設計、製造等の過程に実際に導入される日も近いと思われる。
医療には科学技術、サービス業務、倫理、社会・経済等のいろいろな側面があるので医療機器の評価はこれらの側面の全てについて評価項目が検討されなければならない。また、医療というものの本質上、すべての評価が定量的になされるとは限らず、定性的乃至は感性的な部分やリスク・コスト/ベネフィットにおける適正ということをいかに考えていくべきかは今後の課題となるであろう。
結論
広義における医療機器は専門家向けのハイテク機器と、今後拡大が予想される一般向けのポピュラー機器とがあり、ともにヘルスケアにおける役割の重要性は増大し、同時に医療資源の節約、効率化が求められるという情勢の中で、医療機器のTAは世界的にも一つの潮流となりつつある。
日本においても医療機器TAに関する常設の組織が整備されることが望ましく、本研究を通じて早急に医療機器TAについての具体性のあるスキームを確立して、医療機器TAの必要性の公知に努め、基盤、組織の準備にとりかかるべきであろう。

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