包括的支援体制構築に向けた市町村保健センターと他分野の連携に関する研究

文献情報

文献番号
201927005A
報告書区分
総括
研究課題名
包括的支援体制構築に向けた市町村保健センターと他分野の連携に関する研究
課題番号
H30-健危-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤内 修二(大分県・福祉保健部・参事監兼健康づくり支援課)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学・医学部健康社会医学講座)
  • 清水 由美子(東京慈恵会医科大学・医学部看護学科)
  • 松永 洋子(日本医療科学大学・保健医療学部看護学科)
  • 村山 洋史(東京大学・高齢社会総合研究機構)
  • 大澤 絵里(国立保健医療科学院)
  • 中板 育美(武蔵野大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,272,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 全国の市町村保健センター及び類似施設(以下、保健センター)は、対人保健サービスの中核を担う拠点であるものの、その活動実態や課題については必ずしも明らかではない。一方で、少子高齢社会・核家族化の進展に伴い、住民の健康課題が多様化・複合化し、従来の公助・共助のみではその対応が困難になってきた。こうした背景から、対人保健サービス業務を効果的・効率的に遂行するための策という視点で、連携が重視されるべきであるが、十分な連携が行われているとは言えない状況が既存研究で明らかになっている。
 そこで本研究では、保健センターの連携を首座においた調査と検討を行うものである。
 令和元年度は、平成30年度【研究2】に引き続き、全国的に市町村が保健センターをどのような形で設置しているのかを明らかにする。
 まず、市町村のサイトから保健センターの情報を収集し、保健センターの設置状況の類型を把握する。更に、収集した情報をウェブページで情報公開する(第1章)。
 次に、平成30年度【研究3】において全国の自治体を対象にした調査から、組織として連携ができている事例を紹介してもらい、保健センターが他部門と業務連携している状況を調べた。それを踏まえて、【研究4】において、ヒアリングをおこない、他分野連携の好事例を有する保健センター事業に見られる特徴を明らかにした。
 日本における健康増進、健康づくり活動における連携の要件を整理した報告は少ないため、好事例について手引書としてまとめることにより効果的・効率的な連携体制が横展開することを目指した(第2章)。
 最後に、本研究班で実施した保健センターを対象に実施したヒアリング内容(令和元年度研究報告書第4章)から抽出された市町村保健センターの連携推進のためのステップについて提示したい(第3章)。
研究方法
第1章 全国の保健センターの設置状況の把握およびウェブページによる情報公開
 全国市町村一覧を基に、「市町村名+保健センター」をキーワードに、検索した。収集した情報に関しては、本研究班で立ち上げたサイトにおいて市町村ごとの情報としてまとめ、本研究班の別調査(平成30年度研究4)であるヒアリング事例のある自治体に関しては、そのヒアリング事例もあわせて情報公開をした。
第2章 他分野連携好事例の手引書作成における事例選定プロセス
 研究班メンバーに加え、自治体の保健師も交えてワーキング・グループを発足した。新たに「組織の継続のためのメンテナンス」という視点を加えて、より理解しやすくかつ一般化しやすい手引きとなるよう議論を重ねた。
第3章 市町村保健センターの他分野・他組織との連携推進のためのステップの提示
 初年度に実施したヒアリングにより収集した連携の進め方について精読し、協議した。連携に対する組織行動を、類型化、時系列化し、その要素を抽出した。事例に共通した要素である組織行動にネーミングした。
結果と考察
第1章:47都道府県1,896市区町村に、2,361の市町村保健センターの設置が確認できた。258市区町村ではセンターの設置が認められず、1,299の市区町村では1自治体に1センターの設置、339の市区町村では1自治体に複数のセンターの設置があった。設置状況を分析したところ、概ね、①独立型、②役所内型、③複合型施設内型、という3分類が抽出された。
第2章:単なる事例集であれば、他自治体が活用する際には不十分であるため、多分野連携に関わる概念やモデルを掲載し、また、これまで十分に取り上げることができなかった「ガバナンス」の概念についても、簡単な説明を記載することとした。成果物として「市町村保健センターの連携機能ヒント集」を公表した。
第3章:平成30年度【研究4】のヒアリングから選抜された市町村保健センターの推進連携のための要件を精査し、類型化・時系列化した結果、連携を進めステップとして、3つのフェーズの中に、8つのステップ、また連携のステップを支える2つの土台が抽出できた。
結論
 保健センターは社会や時代の変化と共に、市町村における各種の保健事業の活動の拠点なる一方、多様性と可塑性を持って活動が展開されてきた。
 ウェブ調査では、8割以上の市区町村で一つ以上の保健センターを有しており人々の健康や生活にかかわる事業の拠点となっていることが示唆された。保健センター設置の類型は、概ね①独立型、②役所内型、③複合施設内型の3分類に集約された。
 市町村保健センターが他分野・他組織との連携のステップは、8つのステップと、それを支える2つの土台があると示唆された。
 他分野と効果的・効率的な連携体制がみられる保健センター事業について横展開を目指した成果物として「市町村保健センターの連携機能ヒント集」を作成し、公表した。

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201927005B
報告書区分
総合
研究課題名
包括的支援体制構築に向けた市町村保健センターと他分野の連携に関する研究
課題番号
H30-健危-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤内 修二(大分県・福祉保健部・参事監兼健康づくり支援課)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学・医学部健康社会医学講座)
  • 清水 由美子(東京慈恵会医科大学・医学部看護学科)
  • 松永 洋子(日本医療科学大学・保健医療学部看護学科)
  • 村山 洋史(東京大学・高齢社会総合研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 全国の市町村保健センター及び類似施設(以下、保健センター)は、個別支援と地域支援の両面から対人保健サービスの中核を担う拠点であり、その業務を効果的・効率的に遂行するためには、行政職・専門職における職種間の連携が重視されるべきであるが、現状では十分行われておらず、さらなる連携の必要性が指摘されている。
 そこで、以下の6つの研究を行うことで、さらなる連携の示唆となることを目的とした。
【研究1】保健センターの設置の背景や変遷を概観し、今日的な課題を整理
【研究2】保健センターがどのような形で設置されているのかを把握
【研究3】全国の自治体を対象に、組織として連携している状況の調査
【研究4】研究3のデータから、より詳細な情報を得る
【研究5】相談体制を再考
【研究6】上記研究1~5を踏まえ、連携推進のためのステップについて提示
研究方法
【研究1】既存研究をまとめた。
【研究2】全国市区町村一覧を基に、「自治体名」+「保健センター」をキーワードに、検索して情報を収集した。
【研究3】全国の自治体の保健センターを対象に、好事例の調査を実施した。実施対象は、 (A)全ての都道府県、政令指定都市、中核市、特別区、保健所政令市の担当部署 (B)有識者からの紹介や、学会・業界誌において紹介されている事例の検索を行う、の2通りの方法で選んだ。
 好事例の定義は「行政組織内の他部署や外部の機関・団体との連携がうまくいっている事業」とし、具体的には①組織として他分野と連携しながら保健事業を実施②保健センターが地域づくりの中で役割を持った機能・活動。③協力と相互支援・協働の関係④相手の組織がの立場・意向の把握⑤相手組織と十分な情報の共有、という5条件をできるだけ多くを満たすものと定めた。
【研究4】研究3の回答から、事例を抽出し、深掘りヒアリング調査を実施した。
【研究5】研究3、4の回答用い、全事例を横断的に読み解いた上で、活動の契機、拡大、事業のポイントの特徴・共通点を洗い出し、保健師活動の戦略的視点を抽出した。
【研究6】研究4のデータを元に、連携に対する組織行動を、類型化、時系列化し、その要素を抽出した。
結果と考察
【研究1】保健センターを「機能」と想定すれば、「場(建物)」としての市町村保健センターがあり、「場」を通して、保健政策を企画・提案していくと捉える必要があるものと考えられる。
【研究2】2,361の市町村保健センターの設置が確認できた。設置状況を分析したところ、①独立型、②役所内型、③複合型施設内型に分類できた。
【研究3】50自治体(30.5%)から有効回答があり、連携数は、役所内の連携が平均2.4個、役所外との連携が平均3.9個、合計6.3個であった。役所外との連携では住民組織との連携が51.5%、次いで保育園など、保健所、医療機関が30%以上であった。
【研究4】大半の事例において、保健センター側から他部署・他機関に対して連携を持ち掛けており、保健センターが連携の中心的役割を担っているケースが半数以上であった。好事例の多くは、役所内部での連携と他の組織等との連携を重層的に組み合わせておこなっていた。多くの好事例は、事業の自主化を推進しながらも、全体を俯瞰できるような立ち位置で、事業に緩く繋がりを持ち続けていた。
【研究5】保健センターにおいて、互恵的連携によるネットワーキングが、より拡大あるいは深化した事例は、保健師が戦略的に機能していることが明らかになった。
【研究6】3つのフェーズの中に、8つのステップ、また連携のステップを支える2つの土台が抽出できた。
結論
 保健センターは市区町村における保健活動の拠点として住民主体の活動の場となり、多様性と可塑性を持って活動が展開されてきた。全国の保健センターの設置状況について、8割以上の市区町村で一つ以上の保健センターを有しており人々の健康や生活にかかわる事業の拠点となっており、概ね①独立型、②役所内型、③複合施設内型の3分類に集約されることが示唆された。
 全国の自治体調査からは、保健センターの連携の好事例は、母子領域や高齢者領域を中心とした組織・団体との連携が進んでいることがわかった。ヒアリング調査では、保健センターが事業を立ち上げて円滑に進めていくには、役所内外での重層的かつ組織的な連携が必要であり、緩くとも関わりを持ち続けることが重要である。
 市町村保健センターが他分野・他組織との連携を実装するためのステップは、8つのステップと、そのステップを支える2つの土台があると示唆された。
 成果物として、他分野と効果的・効率的な連携体制がみられる保健センター事業について横展開を目指した「市町村保健センターの連携機能ヒント集」を公表した。

公開日・更新日

公開日
2024-10-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-10-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201927005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
保健センターと他部署の連携について、良好な事例には共通点が見られることがわかった。具体的には、連携のプロセスの進行に合わせ、プロセスが動く以前の不断の準備(1項目)、機会が巡って来た場合(3項目)、動くためのポイント(2項目)、実際に動き始めてから(2項目)、連携中に行うこと(2項目)、そして、連携のプロセスのいずれの段階においても行うこと(2項目)の10項目が抽出された。
臨床的観点からの成果
保健センターが、他の部署との連携を行うことを試みる際、既存の好事例から抽出されたチェックポイントを意識することで、連携を上手にかつ広範囲に行うことができる可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
「市区町村保健センタの連携機能ヒント集」を作成し、印刷物およびサイト上で公開予定である。現時点では、対象となった自治体への公開可否の最終確認を行っている最中で、近々、一般公開を予定している。
その他行政的観点からの成果
分野によって、連携がしやすい・しにくい分野があるが、それもやり方次第で、「連携ができない」分野はなかった。また、地域差についても、事例は全国から提示されており、「連携に非常に苦労する」地域は存在しても「連携ができない」地域は存在しない可能性が示唆された。
その他のインパクト
日本公衆衛生学会において、2019年度と2020年度の2回、公開シンポジウムを開催した(2020年度は今秋開催予定)。2019年度のシンポジウムでは、好事例の紹介を題材として、「どう展開しているか」の紹介が中心となって討議が行われた。2020年のシンポジウムは、より客観的な立場から、今後の連携理論や連携戦術についての討議が行われる予定である。

発表件数

原著論文(和文)
4件
日本世代間交流雑誌に投稿した論文が採択。ミネルヴァ書房より刊行された「保健福祉職のための「まち」の健康づくり入門」の3つの章でデータを利用
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
公衆衛生学会などで発表
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
シンポジウム2回開催。国立保健医療科学院で保健所長などを対象とした講義「国立保健医療科学院 専門課程Ⅰ 保健福祉行政管理分野-分割前期(基礎) ヘルスプロモーション概論」の講義資料として活用

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
相良友哉,大澤絵里,村山洋史 他
市町村保健センターの多世代住民に向けた事業における連携体制の実態に関する検討
日本世代間交流学会誌 , 9 (2) , 3-12  (2020)

公開日・更新日

公開日
2022-06-08
更新日
2023-06-22

収支報告書

文献番号
201927005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,487,000円
(2)補助金確定額
8,230,000円
差引額 [(1)-(2)]
257,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 473,589円
人件費・謝金 2,799,704円
旅費 519,071円
その他 3,223,523円
間接経費 1,215,000円
合計 8,230,887円

備考

備考
自己資金:887円

公開日・更新日

公開日
2021-05-06
更新日
2021-05-10