文献情報
文献番号
201927001A
報告書区分
総括
研究課題名
人口減少社会における情報技術を活用した水質確保を含む管路網管理向上策に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 史朗(公益財団法人水道技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 安藤 茂(公益財団法人水道技術研究センター )
- 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 長岡 裕(東京都市大学 工学部)
- 荒井 康裕(首都大学東京 都市環境学部)
- 三宅 亮(東京大学 大学院工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,029,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
人口減少に伴う水需要減少による給水収益の悪化及び水道事業に携わる職員の減少等により、特に小規模水道事業者において事業の持続が困難になりつつある。また、水需要減少により、水道管内での水の滞留に伴う水質悪化等が懸念される。
このような状況下でも、送配水管における管路網の管理及び末端給水での水質管理の確保・向上を図ることが求められており、遠隔監視制御技術の活用による水質管理を含む効果的な管網管理手法が望まれるが、遠隔監視制御を水質管理等に積極的に実施している事例は国内に少なく、高価なシステムであるため、特に小規模水道事業者における普及が進んでいない状況である。
このような背景から、本研究は、将来にわたり適切な管路網管理を持続していくために、最近進展が著しい情報通信技術を活用し、少ない職員で広い地域の送配水管を効果的に管理するための遠隔監視制御手法及び小型水質計の提案を目的とする。
このような状況下でも、送配水管における管路網の管理及び末端給水での水質管理の確保・向上を図ることが求められており、遠隔監視制御技術の活用による水質管理を含む効果的な管網管理手法が望まれるが、遠隔監視制御を水質管理等に積極的に実施している事例は国内に少なく、高価なシステムであるため、特に小規模水道事業者における普及が進んでいない状況である。
このような背景から、本研究は、将来にわたり適切な管路網管理を持続していくために、最近進展が著しい情報通信技術を活用し、少ない職員で広い地域の送配水管を効果的に管理するための遠隔監視制御手法及び小型水質計の提案を目的とする。
研究方法
送配水管における水質管理等の課題の抽出では、事業体ヒアリング調査結果を基に、遠隔監視制御装置に求めるニーズ及び毎日検査におけるデータ活用方法の提案事項をとりまとめた。また、研究協力事業体を対象として、提案事項の活用可能性等に関するヒアリング調査を実施した。
送配水管における水質管理等の既存技術の調査では、ヒアリング調査、国内外学術文献等の調査より、送配水管内の水質管理等の業務の省力化等につながる既存技術の実態把握を行い、水道分野への適用可能性について検討した。
送配水管における水質等の変化の予測及び実証では、送配水管系統の時系列データについて、相互相関分析を行うとともに、その結果をニューラルネットワークに導入し、残留塩素濃度の減少幅(Dt)に関する予測モデル(NNモデル)を構築した。
水質計の開発及び実証では、水道分野で使用できるよう、改良した水質計や試料水の採取インターフェース部、通信部を備えた試作装置を製作し、実地検証を行った。
送配水管における水質管理等の既存技術の調査では、ヒアリング調査、国内外学術文献等の調査より、送配水管内の水質管理等の業務の省力化等につながる既存技術の実態把握を行い、水道分野への適用可能性について検討した。
送配水管における水質等の変化の予測及び実証では、送配水管系統の時系列データについて、相互相関分析を行うとともに、その結果をニューラルネットワークに導入し、残留塩素濃度の減少幅(Dt)に関する予測モデル(NNモデル)を構築した。
水質計の開発及び実証では、水道分野で使用できるよう、改良した水質計や試料水の採取インターフェース部、通信部を備えた試作装置を製作し、実地検証を行った。
結果と考察
ヒアリング調査結果を踏まえ、水道事業者が遠隔監視制御装置に求めるニーズとして「コスト低減化」「設定変更の容易化」「装置の小型化と可搬式装置」「自動排水制御機能を搭載した装置」を提案事項として取りまとめた。
協力事業体に対する追加ヒアリング調査結果では、毎日検査データを可視化して水道局内での情報共有や配水系統ごとにデータをトレンド化することで水質管理に活用しており、提案事項を実務に活用していることから、その有効性を確認できた。
既存技術の適用性に関する検討結果では、遠隔操作による校正やリモートメンテナンス機能や残留塩素濃度の低下傾向に応じた排水機能等、省力化につながる技術があることを確認できた。
実証フィールドでの予測では、NNモデルにより、浄水場での塩素注入量の適正化のシミュレーションを試み、その可能性を確認した。また、NNモデルに異なる送配水管系統のデータを用いて算出した予測値は、その系統の実測値と整合しており、提案するアプローチの汎用性を示せた。
実証では、実測値から荒井研究分担者が開発した予測モデルの妥当性及びモデルの推定結果の配水管延長内での内挿が可能であることを示した。管内では、微量な粒子状態たんぱく質が増加している傾向があり、残留塩素濃度の減少に影響している可能性が示唆された。
水質計の開発では、平成29、30年度に実フィールドで実施し、分析プロトコルを改良した。令和元年度は、改良した水質計に採取インターフェースを備えた試作装置を開発し、稼働評価及び通信環境の改良を進めた。
協力事業体に対する追加ヒアリング調査結果では、毎日検査データを可視化して水道局内での情報共有や配水系統ごとにデータをトレンド化することで水質管理に活用しており、提案事項を実務に活用していることから、その有効性を確認できた。
既存技術の適用性に関する検討結果では、遠隔操作による校正やリモートメンテナンス機能や残留塩素濃度の低下傾向に応じた排水機能等、省力化につながる技術があることを確認できた。
実証フィールドでの予測では、NNモデルにより、浄水場での塩素注入量の適正化のシミュレーションを試み、その可能性を確認した。また、NNモデルに異なる送配水管系統のデータを用いて算出した予測値は、その系統の実測値と整合しており、提案するアプローチの汎用性を示せた。
実証では、実測値から荒井研究分担者が開発した予測モデルの妥当性及びモデルの推定結果の配水管延長内での内挿が可能であることを示した。管内では、微量な粒子状態たんぱく質が増加している傾向があり、残留塩素濃度の減少に影響している可能性が示唆された。
水質計の開発では、平成29、30年度に実フィールドで実施し、分析プロトコルを改良した。令和元年度は、改良した水質計に採取インターフェースを備えた試作装置を開発し、稼働評価及び通信環境の改良を進めた。
結論
ヒアリング調査結果より、水道事業者が遠隔監視制御装置に求めるニーズは「コスト低減化」「設定変更の容易化」「装置の小型化と可搬式装置」「自動排水制御機能を搭載した装置」であることが確認できた。毎日検査におけるデータの活用方法等の提案については、「蓄積データをトレンド化して季節・水温等に応じた傾向把握(季節的特性)」、「トレンドに応じた残留塩素注入量の調整による残留塩素濃度の低減化・適正化」、「データ可視化による情報共有・現状把握」、「住民からの苦情が来た際の事象確認」を提案事項とした。既存技術の適用性に関する検討結果では、水質計や水道分野へ適用する上で技術的ハードルや開発に伴うコスト増加等の課題を抱えており、これら技術が適用可能となれば、維持管理の省力化や労力削減につながり、適正な水質管理に寄与することが期待される。
NNモデルの活用により、水質ビッグデータを活用した水質予測制御や浄水場での塩素注入量の適正化、配水末端での水質管理の効率化、省力化が図られるものと考える。
小型水質計は、水道分野での実用化に近づいたものと考えられ、情報通信技術を活用した毎日検査の強化及び管路の維持管理の効率化、省力化が期待される。
NNモデルの活用により、水質ビッグデータを活用した水質予測制御や浄水場での塩素注入量の適正化、配水末端での水質管理の効率化、省力化が図られるものと考える。
小型水質計は、水道分野での実用化に近づいたものと考えられ、情報通信技術を活用した毎日検査の強化及び管路の維持管理の効率化、省力化が期待される。
公開日・更新日
公開日
2021-06-14
更新日
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