文献情報
文献番号
199800777A
報告書区分
総括
研究課題名
高血圧と関連疾患の疾病管理の研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 一夫(秋田県立脳血管研究センター疫学研究部長)
研究分担者(所属機関)
- 長谷川敏彦(国立医療・病院管理研究所医療政策研究部医療政策研究部長)
- 上島弘嗣(滋賀医科大学教授)
- 坂巻弘之(国際医療福祉大学研究所研究員)
- 福田吉治(国立医療・病院管理研究所医療政策研究部協力研究員)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高血圧を中心にそれに続く脳卒中や虚血性心疾患、さらには腎不全等の疾病管理をそれに関連する糖尿病、高脂血症、肥満、ストレスや種々のライフスタイル関連で捉え、最も効果が高く効率の良い診療と技術を持つ疾病管理システムを確立することを目的としている。今日、循環器疾患は金銭面においても障害面においても最も大きい疾患であり、高血圧はその中でもこれら関連疾患の核となる疾患である。高血圧の診療のみでも多量の医療費が費やされている一方、分担研究者長谷川らによると、未治療の患者が300万~900万人存在することが示唆されている。
この研究により高血圧並びに高血圧関連疾患のシステムとして有効な管理法が確立し、全体としての医療費の削減と診療効果の向上がもたらされることを目指したい。また今年度、医療技術評価検討委員会が開かれ、臨床ガイドラインの重要性が指摘され、その中でも高血圧が最も優先順位の高い疾患として挙げられている。この研究は高血圧治療ガイドライン作成の基礎研究となると考えられる。
この研究により高血圧並びに高血圧関連疾患のシステムとして有効な管理法が確立し、全体としての医療費の削減と診療効果の向上がもたらされることを目指したい。また今年度、医療技術評価検討委員会が開かれ、臨床ガイドラインの重要性が指摘され、その中でも高血圧が最も優先順位の高い疾患として挙げられている。この研究は高血圧治療ガイドライン作成の基礎研究となると考えられる。
研究方法
国民生活基礎調査、国民栄養調査、患者調査の個票を用い、高血圧疾患の日本国の全体像を把握する。文献的レビューにより、有効ならびに標準的な予防法、治療法を選定する。フローダイアグラムやシステム・ダイナミックスを用いて、リスク要因から高血圧症、さらには合併症の発生、そして合併症の予防をつなぐモデルの構築を進める。そのモデルに国民栄養調査や秋田県の脳卒中登録のデータを用いてシュミレーションし、現実との適応を検証する。以上のプロセスのそれぞれの時点におけるファクターの相関関係を、統計的に分析する。
結果と考察
分担研究者長谷川、坂巻は、国民栄養調査の個票を1984年から1996年までプールし、日本全国民の性、年齢階級別の血圧の分布と治療の有無の分析を行った。その結果、未治療の高血圧患者が約800万人存在することが判明した。一方、降圧剤にて治療中の患者のうちで、血圧がコントロールされていない患者も多数いることが判明した。患者調査並びに国民生活基礎調査を使ったメタ分析から、高血圧治療者は1996年で約750万人、そのうち本態性高血圧が730万人と推定された。更に、高血圧関連疾患は虚血性心疾患や脳卒中、腎不全等の重篤な合併症を引き起こし、合計約20万人の死亡をもたらしているが、Chris MurrayらのDALYの簡便法によって計算し疾病負担を推計すると、脳卒中で117万、虚血性心疾患で63万DALYsと、全体の約6分の1を占めることが判明した。それに伴って医療費も増加していることが確認された。患者1人1年当たりの治療費も10万円を越し、標準的治療法によって算定された医療費を上まっている。
研究協力者の馬場や清滝により、諸外国の疾病管理の考え方をレビューし、高血圧治療法、特に高齢者に対する治験の現状を分析した。疾病管理はアメリカで開発され、現在ヨーロッパ諸国にも広がっている手法で、今後日本への応用が期待される。高齢者の高血圧治療の知見は、日本では制度の高いものは存在しないが、諸外国によると約半数の脳卒中死亡の低下の効果がある一方、高齢者は特に副作用が憂慮されることが判明した。
主任研究者鈴木は、研究協力者田端、福田らとシステム・ダイナミック法を用いた高血圧並びにその関連疾患のモデルを作成し、秋田県の脳卒中登録のデータを用いて1960年代から1990年代への疾病構造の変換をシュミレーションした。その結果、1960年代には高血圧者からの脳卒中の発生が多くを占め、未治療者の発見と治療が有利な戦略であったが、1990年代には高血圧の有病率と重症度が低下し、正常血圧からの発生が相対的に増加し、且つ治療者からの発生も大きな割合を占めるに至っている。
研究協力者福田は村山らと共に、高血圧と関連性疾患のモデルのための基礎的なフローモデルを構築した。また、研究者村山は福田らと共に1992年から1996年までの国民栄養調査をプールし、肥満、運動、喫煙、飲酒の4要素と血圧の関係、更には治療の有無の分析を行った。その結果、肥満、運動での相関を認めた。
分担研究者上島は、研究協力者岡山、喜多らと血圧低下による脳卒中の死亡率、罹患率の減少を推計し、血圧降下1mmHgに対応して4.2%の死亡の減少があることを推計した。
研究協力者の馬場や清滝により、諸外国の疾病管理の考え方をレビューし、高血圧治療法、特に高齢者に対する治験の現状を分析した。疾病管理はアメリカで開発され、現在ヨーロッパ諸国にも広がっている手法で、今後日本への応用が期待される。高齢者の高血圧治療の知見は、日本では制度の高いものは存在しないが、諸外国によると約半数の脳卒中死亡の低下の効果がある一方、高齢者は特に副作用が憂慮されることが判明した。
主任研究者鈴木は、研究協力者田端、福田らとシステム・ダイナミック法を用いた高血圧並びにその関連疾患のモデルを作成し、秋田県の脳卒中登録のデータを用いて1960年代から1990年代への疾病構造の変換をシュミレーションした。その結果、1960年代には高血圧者からの脳卒中の発生が多くを占め、未治療者の発見と治療が有利な戦略であったが、1990年代には高血圧の有病率と重症度が低下し、正常血圧からの発生が相対的に増加し、且つ治療者からの発生も大きな割合を占めるに至っている。
研究協力者福田は村山らと共に、高血圧と関連性疾患のモデルのための基礎的なフローモデルを構築した。また、研究者村山は福田らと共に1992年から1996年までの国民栄養調査をプールし、肥満、運動、喫煙、飲酒の4要素と血圧の関係、更には治療の有無の分析を行った。その結果、肥満、運動での相関を認めた。
分担研究者上島は、研究協力者岡山、喜多らと血圧低下による脳卒中の死亡率、罹患率の減少を推計し、血圧降下1mmHgに対応して4.2%の死亡の減少があることを推計した。
結論
疾病管理は医療システムの質と効率を向上させるに有用な国際的にも注目されている手法であることが確認された。高血圧は未治療者も多く、重篤な合併症を引き起こすため、医療費の点からも国民に大きな負担をかけていることが判明した。しかし、合併症の一つの脳卒中を見ると、近年、正常血圧者や治療中の者からの発生が増加し、高血圧治療のあり方を見直さねばならないことが判明した。高血圧のリスク要因から高血圧さらには合併症の発生、最終的には死亡と障害といったモデルの構築を試みた。結果、有効で効率の良い医療のシステムの構築の可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
-
更新日
-