文献情報
文献番号
201926015A
報告書区分
総括
研究課題名
室内空気環境汚染化学物質の標準試験法の策定およびリスク低減化に関する研究
課題番号
H30-化学-指定-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 信夫(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
- 神野 透人(名城大学 薬学部)
- 田原 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部 )
- 香川 聡子(横浜薬科大学 薬学部)
- 田辺 新一(早稲田大学 創造理工学部)
- 金 ヒョンテ(山口大学 工学部)
- 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部 )
- 東 賢一(近畿大学 医学部)
- 埴岡 伸光(横浜薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
38,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
室内空気環境汚染化学物質は,シックハウス症候群や喘息等の病因あるいは増悪因子となることから,厚生労働省では揮発性/準揮発性有機化合物13物質に室内濃度指針値を定めている.近年,室内濃度指針値策定13物質の代替化学物質による室内空気環境汚染が報告されるようになり,シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会(シックハウス検討会)において,室内濃度指針値の採用を新たに検討すべき化学物質リストが提案され,それらの曝露評価・リスク評価が「室内濃度指針値見直しスキーム」に基づいて進行中である.室内濃度指針値を新たに策定する際には,対象化学物質ごとに妥当性の評価・確認された標準試験法を提示する必要がある.先行研究(H27-化学-指定-002)において一部の研究開発が行われてきたが,現在までに標準試験法の提示(規格化)には至っていない.シックハウス検討会では,室内空気環境汚染化学物質調査等の結果に基づいて,室内濃度指針値の採用を新たに検討すべき化学物質が継続的に示されることになっており,これら化学物質の標準試験法についても可及的速やかに対応する必要がある.また,室内濃度指針値の新規策定に際しては,ステークホルダーとの適切なリスクコミュニケーションや国民の不安を払拭するための効果的な低減策の提示が望まれる.そのためには,室内における主要な発生源を特定し,その発生源によってもたらされる定量的なリスクに関する情報を提供する必要がある.しかしながら,多様な消費者製品について,そのような情報は極めて限られているのが現状である.本研究では,シックハウス検討会における審議に必要な科学的エビデンスを集積することによって厚生労働行政施策の円滑な進行に貢献することを主たる目的として,研究組織内に【標準試験法グループ】と【リスク評価グループ】の2つのサブグループを設置した.
研究方法
【標準試験法グループ】では,室内濃度指針値の採用を新たに検討すべき化学物質について標準試験法を策定する.さらに,既存の室内濃度指針値策定13物質の測定法についても,策定から15年以上が経過していることから,最新の分析技術を基に汎用性の高い標準試験法に改訂し,それらについて国内・国際規格化を推進する.【リスク評価グループ】では,室内環境中の多種多様な消費者製品から放散される揮発性有機化合物について,放散源の特定および曝露評価ならびにハザード評価の両面から研究を実施する.
結果と考察
:【標準試験法グループ】では,既存の室内濃度指針値策定物質の測定法について,策定から長い期間が経過していることから,最新の分析技術を基に汎用性の高い標準試験法を新たに開発し,それらについて国内・国際規格化を推進した(分担研究課題1~6).今年度の特筆すべき研究成果としては,前年度に国内規格化(日本薬学会 衛生試験法・注解)したフタル酸エステル類の測定法について,ISO/TC 146/SC 6 国際会議において新規提案し,ISO 16000-33への収載に向けて継続的に審議する合意を得た.【リスク評価グループ】では,室内環境中の多種多様な消費者製品から放散される揮発性有機化合物について,放散源の特定および曝露評価ならびに有害性評価の両面から研究を推進した(分担研究課題7~12).今年度の特筆すべき研究成果としては,室内濃度指針値の新規策定もしくは改定候補物質について曝露情報・有害性情報を包括的に集積した.
研究分野として一線を画す2つのサブグループは,個別に研究班会議を実施して分担・協力研究者間の連携を強化し,効率的に研究課題を推進している.他方,国内学会においてシンポジウムを2回企画し,サブグループ間の連携強化にも力を注いだ(環境科学会2019年会・フォーラム2019 衛生薬学・環境トキシコロジー).
研究分野として一線を画す2つのサブグループは,個別に研究班会議を実施して分担・協力研究者間の連携を強化し,効率的に研究課題を推進している.他方,国内学会においてシンポジウムを2回企画し,サブグループ間の連携強化にも力を注いだ(環境科学会2019年会・フォーラム2019 衛生薬学・環境トキシコロジー).
結論
合計12の分担研究課題は,所期の目的を達成するため,いずれも順調に進展しており,規格化ならびに論文・学会発表を積極的に行っている.今年度の中間評価では,学術的観点・行政的観点から高い評価を受けた.一方,効率的観点は,2つのグループの連携性を強化すべきとの指摘を受けた.最終年度は,2つのグループ統括研究者による協議の機会を増やし,連携をより一層強化していく.
公開日・更新日
公開日
2020-11-13
更新日
-