家庭用品中有害物質の試験法及び基準に関する研究

文献情報

文献番号
201926013A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品中有害物質の試験法及び基準に関する研究
課題番号
H29-化学-指定-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大嶋 智子(仲村 智子)(大坂健康安全基盤研究所 衛生化学部)
  • 西 以和貴(神奈川県衛生研究所 理化学部)
  • 田原 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(家庭用品規制法)」により、21種類の有害物質について指定家庭用品に含まれる有害物質の含有量や溶出量について基準が定められている。これらの有害物質について、現在の分析技術水準から乖離した分析機器や有害な試薬の使用が問題となっており、試験法の改正が求められている。また、対象有害物質について新たなハザード情報や曝露に関する知見を加え、現行基準値の見直しを検討したり、現行の「検出されないこと」とされている有害物質の基準に対して、基準値を設定したりする必要がある。さらに、有害性が懸念される代替物質の使用や、生活様式の多様化に伴う新形態の家庭用品の創出、及び新たな化学物質の使用可能性もあり、健康被害の発生が懸念される。本研究では、現行の家庭用品規制法における有害物質の改正試験法の開発及び規制基準値改正、並びに現行規制基準では対象外の家庭用品及び有害物質に対する規制基準設定に資する情報収集を目的として、溶剤3種類(メタノール、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン)、防炎加工剤3種類(TDBPP、BDBPP化合物、APO)及び防虫剤2種類(ディルドリン、DTTB)について、キャピラリーカラム及びGC-MSを用いた試験法を検討すると共に、それらのハザード及び曝露情報を収集し、基準値について検討する。さらに、新規に対象とすべき家庭用品又は有害物質について、諸外国の規制基準、健康被害状況等を調査し、規制基準設定の是非の検討に必要な情報を提供する。
研究方法
有害物質の改正試験法の開発では溶剤3種及び防虫剤2種に対して、昨年度までに開発した試験法について7機関及び6機関で妥当性評価試験を実施した。防炎加工剤は昨年度までに開発した試験法に基づき、実際のカーテン試料を用いてTDBPP及びBDBPP化合物のGC-MS同時分析法を検討した。さらに、防炎加工されたカーテンを用いて、抽出溶媒を現行法で使用されている発がん性のあるベンゼンに変えて酢酸エチルを検討した。家庭用洗浄剤中の塩酸及び硫酸(酸)、並びに水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム(アルカリ)について、イオンクロマトグラフを用いた確認試験の開発及びそれらの諸外国での規制状況調査を実施した。また、これまでに情報収集した規制対象外の有害物質の中から、欧州で規制された繊維製品中の発がん性染料について、我が国での実態を調査した。
結果と考察
溶剤3種及び防虫剤2種について妥当性評価試験を実施した結果、再現性及び精度ともに十分な結果が得られ、これらは改正試験法として有効であると考えられた。今後、これらの試験法を家庭用品安全対策調査会に提案し、試験法の改正を目指す予定である。また、防虫剤についてはヘリウムガス不足に対応した代替キャリアガス(水素ガス)を利用したGC-MS法や高速液体クロマトグラフィーによる測定法も検討した。防炎加工剤では、TDBPP及びBDBPP化合物について、現行試験法よりも安全性や精度及び感度の向上した試験法が開発できた。酸・アルカリについては、アニオン、カチオン、有機酸の計23種が同時分析可能な確認試験法が開発できた。洗浄剤の酸及びアルカリに関する規制について諸外国の状況について調査したところ、米国では酸及びアルカリ含有量による製品への表示、中国では総酸度の規定が存在した。カナダでは、pHよる腐食性分類に基づく製品表示が求められていた。韓国では、家庭用の洗浄剤について、酸及びアルカリ含有量規定が存在した。欧州では洗浄剤について、酸・アルカリ含有量やpHに関する規定は調べた限りでは見つからなかった。欧州で規制されたDisperse Blue 1 、Basic Red 9及びBasic Violet 3の3種類の発がん性染料を含む12種類の染料について、繊維製品26製品について分析を実施したところ、いずれの製品についても対象化合物は検出されなかった。
結論
溶剤及び防虫剤については、開発した試験法の妥当性が確認できた。今後、家庭用品調査会に改正試験法として提案する予定である。防炎加工剤については、開発したTDBPP及びBDBPP化合物の試験法について妥当性評価を実施するとともに、APOの改正試験法を開発する。家庭用洗浄剤についてイオンクロマトグラフを用いた確認試験法を開発した。我が国で未規制の発がん性染料について実態調査を実施したところ、いずれの製品についても検出されなかった。

公開日・更新日

公開日
2020-12-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-12-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201926013B
報告書区分
総合
研究課題名
家庭用品中有害物質の試験法及び基準に関する研究
課題番号
H29-化学-指定-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大嶋 智子(仲村 智子)(大坂健康安全基盤研究所 衛生化学部)
  • 西 以和貴(神奈川県衛生研究所 理化学部)
  • 田原 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(家庭用品規制法)」により、21種類の有害物質について指定家庭用品に含まれる有害物質の含有量や溶出量について基準が定められている。これらの有害物質について、現在の分析技術水準から乖離した分析機器や有害な試薬の使用が問題となっており、試験法の改正が求められている。また、対象有害物質について新たなハザード情報や曝露に関する知見を加え、現行基準値の見直しを検討したり、現行の「検出されないこと」とされている有害物質の基準に対して、基準値を設定したりする必要がある。さらに、有害性が懸念される代替物質の使用や、生活様式の多様化に伴う新形態の家庭用品の創出、及び新たな化学物質の使用可能性もあり、健康被害の発生が懸念される。本研究では、現行の家庭用品規制法における有害物質の改正試験法の開発及び規制基準値改正、並びに現行規制基準では対象外の家庭用品及び有害物質に対する規制基準設定に資する情報収集を目的とした。
研究方法
試験法の改正を行う有害物質は、試験法の精度、効率及び安全性の観点から、充填カラムを用いたガスクロマトグラフを用いている溶剤3種類(メタノール、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン)、防炎加工剤3種類(APO、BDBPP化合物、TDBPP)及び防虫剤2種類(DTTB、ディルドリン)の計8物質を選択し、キャピラリーカラムを用いたGC-MS法への改正を念頭に試験法を検討した。その際、用途別に各分担研究者が測定条件や前処理方法を検討して試験法を開発し、研究代表及び分担者並びに協力地方衛生研究所が連携して妥当性評価を実施した。防虫剤ではヘリウム代替キャリアガス用いたGC-MS法等を検討した。さらに、家庭用洗浄剤中の有害物質である、塩酸及び硫酸(酸)、並びに水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム(アルカリ)について、確認試験法の開発及び諸外国での規制状況調査を実施した。規制基準値改正の是非を検討するために、各有害物質のハザード情報や曝露情報の収集を行った。さらに、新規に対象とすべき家庭用品又は有害物質についても、諸外国の情報などを収集し、それらの中から発がん性染料について実態調査を実施した。
結果と考察
有害物質の改正試験法の開発では、溶剤3種及び防虫剤2種について、キャピラリーカラムGC-MS法による有害試薬を用いない試験法が開発できた。これらの試験法は、安全性だけでなく精度及び感度も向上し、分析操作の統一による効率化も達成した。そして、複数機関による妥当性評価試験を実施した結果、再現性及び精度ともに十分な結果が得られ、改正試験法として有効と考えられた。防虫剤は水素ガスを用いたGC-MS法や高速液体クロマトグラフィーによる測定法も検討した。防炎加工剤では、TDBPP及びBDBPP化合物について、現行試験法よりも安全性や精度及び感度の向上した試験法が開発できた。APOについては、別法の開発を行う予定である。酸・アルカリでは、イオンクロマトグラフを用いたアニオン、カチオン、有機酸の計23種が同時分析可能な確認試験法を開発した。また、諸外国におけるそれらの規制状況についても情報収集した。試験法の改正を検討している有害物質について、ハザード情報や曝露情報の収集を行った。溶剤3種類及び防虫剤2種はリスク評価の結果、これらの現行基準値を改正する必要は無いと考えられた。防炎加工剤は現行試験法の検出下限値を基準値とすることが望ましいと考えられた。複数の国や地域で規制され、わが国では未規制の物質について情報収集を行った結果、欧州ではフマル酸ジメチルは規制導入以降、違反率は大幅に低下したが現在でも違反が確認されること、ベンゼンやトルエン等の揮発性有機化合物についても毎年一定数の違反が報告されていることを確認した。一部の有機リン系難燃剤について、欧州では育児製品について規制が検討され、米国でも自粛要請されていること、欧州で多環芳香族炭化水素類の規制が開始されたこと等の情報を収集した。欧州における衣類等の繊維製品に含まれる有害物質に関する新たな規制に関する情報を入手し、そのうち3種類の発がん性染料を含む12種類の染料について、繊維製品における実態を調査したところ、いずれの製品からも対象化合物は検出されなかった。
結論
溶剤及び防虫剤については現行法よりも安全で精度の高い試験法が開発でき、その妥当性が確認できた。今後、家庭用品調査会に改正試験法として提案する予定である。防炎加工剤ではTDBPP及びBDBPP化合物の試験法を開発した。家庭用洗浄剤についてイオンクロマトグラフを用いた確認試験法を開発した。我が国で未規制の発がん性染料について実態調査を実施したところ、いずれの製品からも検出されなかった。

公開日・更新日

公開日
2020-12-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-12-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201926013C

収支報告書

文献番号
201926013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
28,000,000円
(2)補助金確定額
28,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,827,396円
人件費・謝金 16,200円
旅費 208,220円
その他 12,951,842円
間接経費 0円
合計 28,003,658円

備考

備考
差額分(3,658円)は自己資金にて充当した

公開日・更新日

公開日
2021-09-07
更新日
-