文献情報
文献番号
201926007A
報告書区分
総括
研究課題名
血液中の核酸をバイオマーカーに用いた化学物質の高感度な有害性評価に資する研究
課題番号
H30-化学-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小野 竜一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部 第五室)
研究分担者(所属機関)
- 平林 容子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
- 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
- 落谷 孝広(東京医科大学 医学総合研究所 分子細胞治療研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
17,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日常生活に欠かすことのできない様々な物質がヒトの健康や環境に害を及ぼす危険性があり、それを把握することは、健康危機を適切に管理・回避し、安全な生活を維持するために必須である。本研究では、化学物質ばく露後のマウスの血液中の核酸のうち、エクソソームRNAの網羅的解析により、標的臓器を特定し、更に毒性発現機序の解明を目指す事で、化学物質の「次世代型」有害性評価による迅速化、高度化および標準化を行うことを目的とする。ここでは、国立医薬品食品衛生研究所において毒性試験および各種臓器での網羅的遺伝子発現解析を行ったベンゾトリアゾール類を対象とする。これらは化学構造の側鎖の違いで毒性の強さや発現する臓器に違いがあり、エクソソームRNAをバイオマーカーとした有害性評価の有用性を検証する上で効果的である。また、ベンゾトリアゾール構造からのカテゴリーアプローチによる毒性の予測評価に対しても有用な情報を提供しうるかの如何が検討可能となる。
研究方法
本研究においては、化審法における優先評価化学物質を迅速に安全性評価するために、血液中の核酸をバイオマーカーに用いた化学物質の高感度な有害性評価系の開発を行う。国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・毒性部においては、化学物質のマウスへの投与実験および採血、エクソソーム RNAの次世代シーケンサーによる網羅的解析を行い、国立がん研究センター研究所・分子細胞治療研究分野(現 東京医科大学 医学総合研究所 分子細胞治療研究部門)においては、マウス血液からのエクソソームRNA 採取の標準化プロトコールの作成を行い、国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・安全性予測評価部においては、本研究において得られるベンゾトリアゾール構造を持つ5物質のばく露に特異的なエクソソーム RNA の結果と、化学構造の基本構造は同じであるが、側鎖の違いなどによりその毒性の強さや発現する臓器に違いがあるベンゾトリアゾール類の毒性情報を利用することで、カテゴリーアプローチ手法を用いた毒性予測評価の精度を飛躍的に向上させ、化審法における優先評価化学物質の毒性評価の迅速な毒性評価および毒性予測評価に貢献する。
結果と考察
平成30年度は、化学物質の投与実験と採血方法の検証、エクソソーム単離方法の最適化およびエクソソームRNA解析の最適化を行った。令和元年度は、平成30年度に行った各種実験の至適条件を考慮し、エクソソームRNAをバイオマーカーとした化学物質の次世代型安全性評価法の標準化プロトコールの作成を行なった。さらに、作成した次世代型安全性評価法の標準化プロトコールを用いて、四塩化炭素投与による肝毒性を検出する新規バイオマーカーとなりうるmiRNAを42個報告するに至った。
また、本研究計画で毒性評価を行うベンゾトリアゾール類5種類のマウスへのばく露実験を全て行ない、血清の採取および病理組織学検査用のためのパラフィンブロック作成も完了させた。ばく露実験を終了したベンゾトリアゾール類5種類のうち、4種類については、肝臓の病理組織学検査の実施およびエクソソームRNAの次世代シーケンスによる網羅的遺伝子発現データ取得に成功した。その結果、解析を終えたベンゾトリアゾール類4種類のそれぞれに特異的なバイオマーカー候補となるsmall RNAや、共通するsmall RNAの単離に成功した。
また、本研究計画で毒性評価を行うベンゾトリアゾール類5種類のマウスへのばく露実験を全て行ない、血清の採取および病理組織学検査用のためのパラフィンブロック作成も完了させた。ばく露実験を終了したベンゾトリアゾール類5種類のうち、4種類については、肝臓の病理組織学検査の実施およびエクソソームRNAの次世代シーケンスによる網羅的遺伝子発現データ取得に成功した。その結果、解析を終えたベンゾトリアゾール類4種類のそれぞれに特異的なバイオマーカー候補となるsmall RNAや、共通するsmall RNAの単離に成功した。
結論
エクソソームRNAをバイオマーカーとした化学物質の次世代型安全性評価法の標準化プロトコールを作成した。また、この標準化プロトコールを利用して、ベンゾトリアゾール4種類のそれぞれに特異的なバイオマーカーとなるエクソソームRNAの単離に成功した。これらのバイオマーカーは、ベンゾトリアゾール構造の側鎖の違いなどによって誘導される生体内におけるシグナルパスウェイの違いにより生じている可能性がある。
エクソソームRNAを毒性指標とした各種化学物質の毒性データが集積されることに伴い、これらを利用したカテゴリーアプローチを行うことで、将来的には血液1滴からの超高感度かつ超迅速な毒性評価が可能となる。これにより、動物愛護の 3R に資する評価系となることが期待される。また、既存の安全性評価法と比較しても、短期、小規模動物試験で可能であり、高いスループット性を発揮するものであり、今後の化学物質の毒性データの集積に貢献すると考えられる。
エクソソームRNAを毒性指標とした各種化学物質の毒性データが集積されることに伴い、これらを利用したカテゴリーアプローチを行うことで、将来的には血液1滴からの超高感度かつ超迅速な毒性評価が可能となる。これにより、動物愛護の 3R に資する評価系となることが期待される。また、既存の安全性評価法と比較しても、短期、小規模動物試験で可能であり、高いスループット性を発揮するものであり、今後の化学物質の毒性データの集積に貢献すると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2020-12-16
更新日
-