薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究

文献情報

文献番号
201925030A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究
課題番号
19KC2011
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 俊彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 )
  • 庄司 正実(目白大学人間学部)
  • 猪浦 智史(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 )
  • 近藤 あゆみ(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 )
  • 引土 絵未(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
21,140,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究1:薬物使用に関する全国住民調査(2019年)
一般住民における薬物使用の実態(使用率、使用者数の推計値)を把握するとともに、その経年変化を調べることを目的とした。
研究2:大麻依存症の患者を対象とした病院調査
大麻使用と依存症や精神病の発症、および職業的・社会的機能の低下との関連について、臨床遺伝学的家族歴、大麻の使用期間・頻度、使用する大麻製品(THC濃度)、併存精神障害や、並行して使用した他の精神作用物質の影響などといった情報を踏まえて検討することを目的とした。
※研究5,6,7,8の詳細は報告書参照のこと。
研究方法
研究1:自記式質問紙による留置訪問調査および郵送調査(全国7000名の一般住民、無作為抽出)
研究2:担当医師による聞き取り調査(全国9施設、定点)
結果と考察
研究1:計3,945名の一般住民から有効回答を得た。
1.有機溶剤:減少傾向にある。2015年(1.5%)、2017年(1.1%)、2019年(1.1%)であった。生涯経験者数は、約138万人(2015年)、約104万人(2017年)、約96万人(2019年)と推計された。
2.大麻:増加傾向にある。2015年(1.0%)、2017年(1.4%)、2019年(1.8%)であった。生涯経験者数は、約95万人(2015年)、約133万人(2017年)、約161万人(2019年)と推計された。過去1年経験者数は約9万人と推計された。
3.覚せい剤:横ばいで推移。2015年(0.5%)、2017年(0.5%)、2019年(0.4%)であった。生涯経験者数は、約50万人(2015年)、約50万人(2017年)、約35万人(2019年)と推計された。
4.MDMA:増加傾向にある。2015年(0.1%)、2017年(0.2%)、2019年(0.3%)であった。生涯経験者数は、約12万人(2015年)、約15万人(2017年)、約27万人(2019年)と推計された。過去1年経験者数は約3万人と推計された。
5.コカイン:増加傾向にある。2015年(0.1%)、2017年(0.3%)、2019年(0.3%)であった。生涯経験者数は、約12万人(2015年)、約26万人(2017年)、約30万人(2019年)と推計された。過去1年経験者数は約3万人と推計された。
6.危険ドラッグ:横ばいで推移していた。2015年(0.3%)、2017年(0.2%)、2019年(0.3%)であった。生涯経験者数は、約31万人(2015年)、約22万人(2017年)、約27万人(2019年)と推計された。
研究2:全国9施設より計71例の大麻関連障害症例が報告された。その結果、現在の「依存症候群」診断に関連する項目として、「乾燥大麻以外の大麻使用」(p=0.017, OR5.190, 95%信頼区間[1.345~20.033])が、現在の「残遺性・遅発性精神病性障害」に関連する要因として、「現在の年齢の高さ」(p=0.043, OR1.074, 95%信頼区間[1.002~1.151])が、「職業的機能の低下」に関連する要因として、「週4日以上の使用」(p=0.001, OR 11.243, 95%信頼区間[2.524~50.079])が、そして、「社会的機能の低下」に関連する要因として、「現在独身であること」(p=0.028, OR 13.931, 95%信頼区間[1.338~145.095])、および「週4日以上の使用」(p=0.033, OR 4.669, 95%信頼区間[1.130~19.288])が抽出された。なお、現在の「精神病性障害」を関連する要因については明らかにならなかった。

結論
1. 一般住民対象とした薬物使用に関する全国住民調査により、大麻使用者の増加が確認された。大麻の生涯経験者数は約161万人、過去1年経験者数は約9万人と推計された。過去の調査データと比較すると、大麻、コカイン、MDMAは増加傾向、覚せい剤および危険ドラッグは横這い、有機溶剤は減少傾向で推移していることが明らかとなった。
2. 大麻依存症の患者を対象とした病院により、合計71例の大麻関連障害症例の臨床的特徴を整理した。高濃度THC含有製品の使用や頻回の大麻使用経験が、現在の依存症候群診断や職業的・社会的機能の低下を引き起こす可能性が示唆された。しかし、精神病性障害や残遺性・遅発性精神病性障害については、大麻使用様態、臨床遺伝学的家族歴、併存精神障害、他の精神作用物質併用のいずれとも関連する要因が見いだされなかった。

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

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公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

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収支報告書

文献番号
201925030Z