医薬部外品成分の白斑誘導能の評価体系に関する研究

文献情報

文献番号
201925024A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬部外品成分の白斑誘導能の評価体系に関する研究
課題番号
19KC2005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 伊藤 祥輔(藤田医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
白斑を引き起こしたロドデノール(RD)や白斑誘導性の4-置換フェノール類はチロシナーゼにより代謝され、オルトキノン体に変換されること及びRDユーメラニンやその前駆体など、多くの代謝物の構造と性質をこれまで明らかにした。また、感受性の増強を図った各種細胞の代謝物による細胞応答を指標とする方法を検討し、白斑誘導性化合物の代謝は必ずしも細胞毒性の増強をもたらさないことが判明した一方で、ヒトチロシナーゼ強制発現細胞を用いて代謝物の解析を検討し、細胞レベルにおいてヒトチロシナーゼによるRDの代謝とグルタチオン(GSH)付加体の産生を追跡することができた。更に、各種4-置換フェノール類の代謝物を、生成するオルトキノンをSH含有ペプチドを共存させて、in vitroでペプチドと結合したカテコール体として検出することができた。これらの性質を利用した医薬部外品成分の白斑誘導能の評価法を構築し、更に他の生物学的あるいは物理化学的性質を指標に加えた評価体系を検討する。
研究方法
(A)フェノール類をチロシナーゼで酸化した後に共存させたSHペプチドと結合させ、ペプチド付加物として生成物を検出する方法について、様々な置換基を持つ4-置換フェノール類を基質として用い、LC-MSにより反応生成物を検出して同定することにより、基質の反応性と基質による反応機構の違いの有無を検討する。(B)白斑発症と強く相関する細胞応答に着目し、その評価系を構築する。RDや白斑誘導性4-置換フェノール類に共通して認められる「チロシナーゼによる代謝活性化」を、代謝物解析、細胞毒性増強により評価する方法の検討を進める。(C)RDと同様に4-置換フェノール構造を有する物質で、医薬部外品の有効成分として配合される可能性のあるものとして、サプリメントとして広範に摂取され、皮膚適用時のシミに対する効果が期待されているエクオール(EQ)について、チロシナーゼの基質となってオルトキノンを産生するかどうか検討する。
結果と考察
(A)4位にメチル基又は第一級アルキル基を持つ基質の場合、基質量が大きく減少し、SHペプチドが1個付加したカテコールが生成した。4位にアルコキシ基を持つ基質の場合、SHペプチドが1個又は2個付加したカテコールが生成した。オルトキノンの生成とSH基の結合というメカニズムは共通している。4位が第二級アルキル基、第三級アルキル基又はアリール基の場合、生成物は非常に少ないか、あるいは基質とSHペプチドのみが検出された。酸化反応が起きにくいと考えられる。(B)ヒトチロシナーゼ高発現293T細胞を用いると、MBEHならびに4-TBPのオルトキノン体のグルタチオンあるいはシステイン付加体の検出が可能であることを示した。白斑誘導性フェノール類の評価方法として、ヒトチロシナーゼ発現293T細胞を用いた代謝活性化の解析について有用性が示された。メラノーマ細胞B16BLのメラニン合成系下流遺伝子TYRP1のノックダウンにより細胞感受性増強を試みたが、TYRP1低下は4-S-システアミニルフェノール(4SCAP)の細胞毒性発現に全く影響を与えないことが判明した。TYRP1は4SCAPの細胞毒性に関与しないことが判明した。(C)EQはチロシナーゼにより酸化されてオルトキノンになることが、400 nmに吸収極大を持つスペクトルが得られたこと及び還元したときに2種類のモノカテコールと1種類のジカテコールが生成したことから判明した。2個のフェノール性OH基がいずれも酸化されたことは興味深い。さらに、N-アセチルシステイン(NAC)あるいはGSHと反応して5位又は5’位にSH化合物が付加した一付加体及び二付加体が生成した。更に、酸化により生成させたEQオリゴマーはGSHをGSSGに酸化させるプロオキシダント活性を持つことが判明した。先行研究で検討したRESオリゴマーよりも高い活性をもつことも興味深い。モノカテコール体の一つ6-hydroxy-EQがRDの酸化により生成するRD-環状カテコールと同じクロマン骨格を持つことから、同様に細胞毒性をもたらす可能性が示唆される。
結論
SHペプチドを共存させて4-置換フェノールのチロシナーゼによる酸化を行わせたとき、4位の置換基の構造により反応性及び生成物の構造に明らかな違いが見られた。白斑誘導性4-置換フェノール類に共通する代謝活性化の評価方法として、ヒトチロシナーゼ高発現細胞を用いた代謝物解析の有用性を示した。メラノーマ細胞のチロシナーゼ下流遺伝子発現を低下させての細胞感受性増強を試みた。EQのチロシナーゼ酸化はEQ-キノン、次いでEQオリゴマーを産生し、前者は細胞内タンパクと結合することにより、また後者は細胞内抗酸化物質を酸化(枯渇)することにより細胞傷害性を惹起する可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
2023-07-18

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201925024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,600,000円
(2)補助金確定額
2,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,352,465円
人件費・謝金 0円
旅費 52,854円
その他 197,760円
間接経費 0円
合計 2,603,079円

備考

備考
自己資金により3079円を支出した。

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
-