文献情報
文献番号
201925023A
報告書区分
総括
研究課題名
脂質異常症改善薬の臨床評価に関するガイドラインの合理化・国際整合化に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19KC2004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
山下 静也(地方独立行政法人りんくう総合医療センター)
研究分担者(所属機関)
- 木下 誠(日本動脈硬化学会)
- 荒井 秀典(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
- 秋下 雅弘(東京大学医学部附属病院)
- 浅田 祐士郎(宮崎大学医学部)
- 石橋 俊(自治医科大学内科学講座)
- 江頭 健輔(日本動脈硬化学会)
- 梶波 康二(金沢医科大学医学部)
- 神崎 恒一(杏林大学医学部高齢医学)
- 葛谷 雅文(名古屋大学未来社会創造機構)
- 斯波 真理子(国立循環器病研究センター病態代謝部)
- 島野 仁(筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科)
- 平田 健一(神戸大学医学研究科)
- 横出 正之(京都大学医学研究科)
- 吉田 雅幸(東京医科歯科大学生命倫理研究センター)
- 横手 幸太郎(千葉大学大学院医学研究院)
- 岡村 智教(慶應義塾大学医学部)
- 増田 大作(りんくう総合医療センターりんくうウェルネスケアー研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1988年に当時開発が進行中であった抗高脂血症薬の臨床評価方法の指針を示すガイドラインとして、「高脂血症治療薬の臨床評価の方法に関するガイドライン」(昭和63年1月15日薬審1第1号)が作成された。このガイドラインは抗高脂血症薬として開発される新規医薬品(経口剤)の臨床的有用性を検討するための臨床試験の計画、実施、評価方法などについての当時のコンセンサスをもとに一般的手順を提示したものであった。しかしこのガイドラインが発出された後も、脂質異常症については様々なアプローチでの治療が試みられている。例えば、従来からの治療のターゲットであったLDLコレステロールについては、前述のガイドラインが策定された時と比べて強力なコレステロール低下薬が開発されているほか、高TG血症に有効な薬剤の開発なども行われている。また、抗動脈硬化作用を有するとされるHDLのコレステロール、即ちHDLコレステロール(HDL-C)を上昇させる薬剤の開発も試みられるなど、原発性高脂血症を中心とする難治性の脂質異常症を有する患者は多く、そのための治療薬は我が国も含めて全世界で開発が行われており、低分子化合物のみでなく、核酸医薬や抗体医薬、遺伝子治療、細胞治療等も試みられていることから、新規脂質異常症治療薬に対する国際共同治験内容の確認、欧州医薬品庁発行ガイドラインといった既存の海外の医薬品評価ガイドラインの内容の研究、新規脂質異常症治療薬が海外において審査される際の論点の洗い出しを通じて、我が国における新たな「脂質異常症治療薬の臨床評価ガイドライン」の策定を行うことを目的として研究を遂行した。
研究方法
昭和63年(1988年)に策定された「抗高脂血症薬の臨床評価方法に関するガイドライン」(1988年)を踏まえて、現在そして今後の当該ガイドラインの望ましい姿を念頭に置き検討を進めた。医薬品の有効性・安全性の評価に際しての具体的な検討対象疾患患者としては、特定健診で肥満症・メタボリックシンドロームを指摘された患者および2型糖尿病や高血圧症、喫煙等の危険因子を有する患者、冠動脈疾患一次予防における心血管疾患リスク病態(慢性腎臓病、末梢動脈疾患、非心原性脳梗塞等)を合併している患者、冠動脈疾患二次予防における強力な脂質異常治療を必要とする患者、スタチンの継続服用困難患者、高齢者を含めた複数の薬剤の併用がされている患者、著明な高TG血症により急性膵炎などの重篤な合併症をきたしうる患者等としこれらの状況における臨床評価の注意点の洗い出し、動脈硬化病変のスクリーニングおよび病態把握のための生理学的検査・画像検査による評価方法や治療指針を検証した。これらを含めガイドラインに盛り込むべき論点を、班会議において意見交換を行った。
結果と考察
脂質異常症治療薬の臨床評価に関するガイドラインの策定に向けて、現在の診断基準、薬剤評価の方法や治療内容・安全性情報評価の観点から旧ガイドラインの各項目においての追加・変更必要項目、削除妥当項目を洗い出すための協議を行い、2020年3月時点で脂質異常症改善薬の臨床評価に関するガイドライン2020は完成し、英訳の作業を進め、EMAに対しても内容確認を行ったところである。新しいガイドラインの策定にあたって、動脈硬化性疾患の危険因子として十分なエビデンスのあるLDLコレステロール血症に注目することが、これまでの海外や国内の疫学研究より確認された。また、高TG血症は心血管疾患予防につながるエビデンスの蓄積の状況を反映した内容とすることが確認された。低HDLコレステロール血症については、イベントの発生を確認する必要があることが検討された。欧州医薬品庁によるGuideline on clinical investigation of medicinal products in the treatment of lipid disorders(2017)を検証した中で、画像診断の記載が検討され、CTによる冠動脈の石灰化の評価を追加した。併せて、日本の特異性から併用薬、新規機序の薬剤、女性を追加することが検討された。動脈硬化性疾患の主要危険因子である高LDLコレステロール血症などの脂質異常症を改善するための薬剤を開発するためのガイドラインでは、脂質異常症における低下目標値はサロゲートマーカーであることから具体的な数値を記載せず、心疾患イベントの発生率とともに真のエンドポイントである死亡率を記載することで、冠動脈疾患に対する新しい機序の薬剤の評価にも対応する内容とした。
結論
ガイドラインの構成を検討するにあたっては、策定途中となった前回のガイドラインと欧州のガイドラインの骨子を参照しながら策定した。当該ガイドラインに基づく臨床試験は医薬品開発に資するとともに国際整合性も図られるものと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2021-01-04
更新日
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