外部精度管理の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
199800774A
報告書区分
総括
研究課題名
外部精度管理の標準化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 剛史(浜松医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 河合忠(国際臨床病理センタ-)
  • 河野均也(日本大学医学部)
  • 大澤進(千葉大学医学部付属病院)
  • 五味邦英(昭和大学医学部)
  • 伊藤啓(北里大学医療衛生学部)
  • 神辺真之(広島大学医学部)
  • 市原清志(川崎医科大学)
  • 田内一民(静岡健康管理センタ-)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
8,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床検査領域での外部精度管理調査は、検査施設(医療機関、衛生検査所など)の検査成績の施設間差を調査し、施設間差の解消を実現するものである。わが国においては、この調査は統一的な国家機関などで実施されていないことから多数の調査母体がこれを実施していることから、調査内容、評価方法などまちまちであり、相互に互換性を持って評価することが困難である。本研究の目的は、これらの調査を標準化し、かつ相互に評価可能とし調査内容を熟達度試験の内容を包含するところまでレベルアップし、国際的な評価に耐えるものとすることである。 
研究方法
外部精度管理調査内容の解析はアンケ-ト調査によった。測定値の"真値"の追求に関する解析は、日本医師会精度管理調査の中で日本認証酵素標準物質(JCERM)、およびJCCLS認証血漿蛋白標準物質(BCR-CRM470)を利用し、測定体系の確立された施設での計測値を対象に解析した。また、この解析調査は、各分担研究員の把握する外部精度管理調査母体においても基幹施設を対象として実施された。すなわち、測定体系を確立する中で、JCERMまたはCRM470を利用してトレーサビリティの確認を実施して体系の中で真値をえることを可能とした。この測定体系の確立に関しては臨床化学会学術連絡委員会からの勧告に従った。また、測定値の評価に関しては、日本医師会が採用した共通CVを利用した規準が適用可能か否かを解析した。
調査検査項目は、測定体系が確立しているものを真値の解析が可能な群として位置づけ、4群に分けて解析した。それらの4群は
第一群:基準(勧告)法が確立・提案・承認され、公的な標準物質が存在する測定法
第二群:公的な標準物質が存在するが、基準(勧告)法は存在しない群
第三群:基準法、標準物質は存在しないが、外部精度管理で施設間差が解消している群
第四群:いずれも存在せず、施設間差が解消していない群
この群分けは、評価規準の共通化などに重要であることが示された。
結果と考察
外部精度管理調査では、調査対象となる検査項目の計測値の評価に、測定原理などに基づいた同一測定法群を形成し、その計測値の分布状況から統計学的に平均値(M)、標準偏差(SD)を算出し、Mからの偏たりをもって評価規準を作成してきた。しかし、測定体系の概念が確立すると、測定体系を確立し真値の追求が可能となってくる。この考え方を利用すると、基準(勧告)法が存在するならば、測定法の分類は測定体系にしたがって分類され、かつ評価規準は得られた真値からの偏たりで評価することが可能となる。この考え方が現実に実証されれば、多岐にわたる精度管理調査の間で、真値を追求した調査が可能となり、かつ評価規準を共有化することが可能となる。このことが、日本医師会の精度管理調査で実証された。また、各分担研究員が担当する各外部精度管理調査で実証されつつある。評価規準の共有化に関しては、各施設での分析の水準が向上し、施設間差が解消していくにしたがって計測値のSDは小さくなり、評価規準が厳しくなるという現実が存在した。この点に関しては現状の分析水準に基づいた変動幅を設定する方法が提案されたので、その具体的な適用性を検討することが開始され、日本医師会の精度管理調査を中心にその適用性が実証されつつある。また、変動幅に関しては、分担研究員の中で、健診を分担する担当者の中で生体の生理的変動幅に相当する変動幅の設定も検討されつつある。
このように、評価の基準となる真値の追求と、評価規準の共通化が確立されると、共通の基盤で相互の精度管理調査を利用し合うことが可能となる。このことは、一年に複数回の外部精度管理調査に参加することで、複数回の計測値の評価が行われる熟達度試験を兼ねて精度管理調査が実施されることを可能とする現実が保証されつつあることを示すものである。
結論
外部精度管理調査の概念の中に、測定体系の概念を活用することを解析検討し、これまでの調査から、検査項目を四群に分けることで一から三群までは真値またはそれに近い値で計測値を管理することが可能であることを示した。今後評価規準の共有化が明確にされると、これまでばらばらに実施された外部精度管理調査が、相互に利用しあい、共通の評価を受けながら熟達度試験の実施にまで水準を向上することが可能であることが示された。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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