文献情報
文献番号
201925019A
報告書区分
総括
研究課題名
一般用漢方製剤の使用上の注意の整備と安全使用に関する研究
課題番号
H30-医薬-指定-010
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
袴塚 高志(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
- 政田 さやか(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
- 能勢 充彦(名城大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は,平成23年度に実施された一般用生薬・漢方製剤のリスク区分の見直しに伴う一般用漢方製剤の安全使用に資する環境整備のためのツールの普及・促進と,漢方製剤による副作用の原因成分の体内動態に影響を及ぼす要因の検討と,一般用漢方製剤の添付文書における使用上の注意等の見直しを実施するレギュラトリーサイエンス研究であり,厚生労働行政への貢献を通した国民の健康と安全の確保を目的とする.
研究方法
漢方製剤の安全使用に資するツールに関する研究では,一般用漢方製剤の情報提供サイト「漢方セルフメディケーション」の内容を改善し、約1年間のアクセス状況について解析した.
漢方製剤の安全性確保に関する研究では,雌性BALB/cマウスを80週以上長期間飼育して加齢マウスを作製し, GLあるいはカンゾウエキスをマウスに経口投与して一定時間後に採血し, 血中グリチルレチン酸(GA)濃度をHPLCにより定量した.加齢及び若齢の雌性BALB/cマウスより採集した盲腸内容物を用い、GL加水分解活性を測定し、また、腸内細菌叢の群集解析(アンプリコンシーケンス解析)を行った.
一般用漢方製剤の使用上の注意の見直しに関する研究では,日本漢方生薬製剤協会安全性委員会の協力を得ながら,医師,病院薬剤師,薬局薬剤師,大学教員,国立衛研生薬部員より構成された研究班を開催し,一般用漢方製剤の適用を考慮した使用上の注意の記載事項の見直しについて検討した.
漢方製剤の安全性確保に関する研究では,雌性BALB/cマウスを80週以上長期間飼育して加齢マウスを作製し, GLあるいはカンゾウエキスをマウスに経口投与して一定時間後に採血し, 血中グリチルレチン酸(GA)濃度をHPLCにより定量した.加齢及び若齢の雌性BALB/cマウスより採集した盲腸内容物を用い、GL加水分解活性を測定し、また、腸内細菌叢の群集解析(アンプリコンシーケンス解析)を行った.
一般用漢方製剤の使用上の注意の見直しに関する研究では,日本漢方生薬製剤協会安全性委員会の協力を得ながら,医師,病院薬剤師,薬局薬剤師,大学教員,国立衛研生薬部員より構成された研究班を開催し,一般用漢方製剤の適用を考慮した使用上の注意の記載事項の見直しについて検討した.
結果と考察
漢方製剤の安全使用に資するツールに関する研究では,平成28年1月に公開した「漢方セルフメディケーション」ホームページについて,漢方薬を選ぶためのページを改善し,虚実の証について直感的に理解できるイラストを掲載した.また,公開3年目のアクセス状況を解析したところ,令和元年5月をピークにアクセス数が減少に転じ,公開1年時の水準まで下がっていることが明らかになった.
漢方製剤の安全性確保に関する研究では,雌性の加齢マウスにグリチルリチン酸(GL)あるいはカンゾウエキスを投与し,血中グリチルレチン酸(GA)濃度について,若齢マウスと比較した.その結果,加齢マウスでは,予想に反して血中GA濃度は低値を示し,その要因として腸内細菌叢によるGLからGAへの加水分解効率の低下に起因することが示唆された.両マウスの盲腸内容物を用いた腸内細菌叢のアンプリコンシーケンス解析により,加齢によって腸内細菌叢の構造が変化していることが強く示唆するデータが得られた.
一般用漢方製剤の使用上の注意の見直しに関する研究では,副作用情報の調査を実施した上で、使用上の注意の記載事項の見直し案として、以下の4項目の最終案を作成した.1) 11処方(当帰散,温清飲,黄連解毒湯,香蘇散,柴胡桂枝乾姜湯,四物湯,逍遥散,川きゅう茶調散,抑肝散,抑肝散加芍薬黄連,抑肝散加陳皮半夏)において,使用上の注意の「相談すること」(相談項)の妊産婦に関する注意喚起を削除する.2)胃風湯においては,使用上の注意の相談項の高齢者に関する注意喚起を削除する(企業の考えで敢えて記載する場合はそれを妨げない).3) 麻黄湯において,使用上の注意の「してはいけないこと」(禁忌項)の「次の人は服用しないこと」に記載された「体の虚弱な人(体力の衰えている人,体の弱い人)」について,相談項に移す(可能な限り相談項の上位に配置する).4)八味地黄丸及び知柏地黄丸の禁忌項の「次の人は服用しないこと」に記載された「胃腸の弱い人,下痢しやすい人」については,相談項に移す.
漢方製剤の安全性確保に関する研究では,雌性の加齢マウスにグリチルリチン酸(GL)あるいはカンゾウエキスを投与し,血中グリチルレチン酸(GA)濃度について,若齢マウスと比較した.その結果,加齢マウスでは,予想に反して血中GA濃度は低値を示し,その要因として腸内細菌叢によるGLからGAへの加水分解効率の低下に起因することが示唆された.両マウスの盲腸内容物を用いた腸内細菌叢のアンプリコンシーケンス解析により,加齢によって腸内細菌叢の構造が変化していることが強く示唆するデータが得られた.
一般用漢方製剤の使用上の注意の見直しに関する研究では,副作用情報の調査を実施した上で、使用上の注意の記載事項の見直し案として、以下の4項目の最終案を作成した.1) 11処方(当帰散,温清飲,黄連解毒湯,香蘇散,柴胡桂枝乾姜湯,四物湯,逍遥散,川きゅう茶調散,抑肝散,抑肝散加芍薬黄連,抑肝散加陳皮半夏)において,使用上の注意の「相談すること」(相談項)の妊産婦に関する注意喚起を削除する.2)胃風湯においては,使用上の注意の相談項の高齢者に関する注意喚起を削除する(企業の考えで敢えて記載する場合はそれを妨げない).3) 麻黄湯において,使用上の注意の「してはいけないこと」(禁忌項)の「次の人は服用しないこと」に記載された「体の虚弱な人(体力の衰えている人,体の弱い人)」について,相談項に移す(可能な限り相談項の上位に配置する).4)八味地黄丸及び知柏地黄丸の禁忌項の「次の人は服用しないこと」に記載された「胃腸の弱い人,下痢しやすい人」については,相談項に移す.
結論
「漢方セルフメディケーション」ホームページのアンケート調査において得られた情報をもとに,サイトを修正,改善した上で広く周知活動を行い、国民の漢方製剤の安全使用のために貢献する.また、カンゾウやその主成分であるグリチルリチン酸(GL)の副作用である低カリウム血症の発現頻度が高くなる要因として,長期間の服用,高齢者,及び女性が挙げられているが、加齢マウスを用いた本研究において,若齢マウスと比較して加齢マウスでは、腸内細菌叢によるGLからGAへの加水分解効率の低下し、血中GA濃度が低値を示すことが分かった。血中GA濃度が減少しているにも関わらず、高齢者にて低カリウム血症の発現頻度が高くなる理由について別の角度から検討する必要性が示された。さらに、一般用漢方製剤の使用上の注意の記載事項について,妊産婦及び高齢者に対する「相談すること」の注意喚起,並びに,八味地黄丸及び知柏地黄丸の禁忌項について本研究で確定した見直し案は、薬事・食品衛生審議会等にて一般用漢方製剤の使用上の注意の改訂が審議される際の原案として活用され得る。
公開日・更新日
公開日
2021-01-27
更新日
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