文献情報
文献番号
201925018A
報告書区分
総括
研究課題名
かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究
課題番号
H30-医薬-指定-008
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
安原 眞人(帝京大学 薬学部 地域医療薬学研究室)
研究分担者(所属機関)
- 赤池 昭紀(京都大学 薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国は、地域包括ケアシステムによる医療・介護の総合的な展開において質が高く良質な医療提供体制の構築を推進しているが、適切な薬物療法を提供するためには、薬局や薬剤師等が、医療の高度化にも対応できる専門性を持ちながら、多職種と連携することが必要となる。近年、提唱されている「プロトコールに基づく薬物治療管理」(PBPM)は、医療機関と薬局の連携にも効果的な枠組みである。本研究では、地域包括ケアシステムの下で、かかりつけ薬剤師・薬局が、多職種・多機関と連携したPBPMに基づく高度薬学管理機能を患者に対して発揮する方策を検討し、その実践によるアウトカムを評価検討する。また、分担研究班では、登録販売者のあり方およびオンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤について検討する。
研究方法
本研究は、日本医療薬学会、日本臨床腫瘍薬学会、日本病院薬剤師会、日本薬剤師会の4団体を中心に、関連諸団体の協力を得て実施した。先行研究となる「薬剤師が担う医療機関と薬局間の連携手法の検討とアウトカムの評価研究」で開始した2種類の経口抗がん薬(S-1、カペシタビン)に関するPBPMの実証研究を継続するとともに、上皮増殖因子受容体阻害薬とマルチキナーゼ阻害薬を対象薬に追加した。がん性疼痛管理にPBPMの手法を導入するために、疼痛アセスメントシート、トレーシングレポート、病院と薬局の緩和PBPM手順書などを作成した。平成28年度の「薬剤師が担う医療機関と薬局間の連携手法の検討とアウトカムの評価研究」において作成した2枚組DVD「病院薬剤師、保険薬局薬剤師の相互理解」の続編として、薬機法改正に伴い、今後急速に整備が進むことが期待される抗がん薬治療患者に対する医療機関と保険薬局との連携について、望ましい連携のモデルケースをドラマ仕立てで映像化したDVDを作成した。登録販売者の業務、研修内容を把握するため、店舗販売業者等の関係団体及び外部研修実施機関にヒアリングを実施した。オンライン診療における緊急避妊薬を調剤するために薬剤師が受けるべき研修内容を検討し、作成した教材を用いて研修会を開催し、改善点等を抽出した。
結果と考察
医療機関と地域薬剤師会の連携に基づくPBPMの実践例として、長崎大学病院と長崎県薬剤師会の連携で実施したアンケート調査では、薬局薬剤師が電話フォローアップで副作用の確認または相談対応をすることについて、患者から肯定的な評価が示された。栃木県立がんセンターと地域薬局の連携では、10カ月間で32名の患者に対して103件のトレーシングレポートが報告され、その内10件(9名)は病院の外来担当薬剤師による再介入に繋がった。これまでの経口抗がん薬のPBPMに関する収集事例などを参考に、PBPMに基づき薬局と医療機関が連携することの有用性の具体例を提示するシナリオを練り上げ、約10分のDVD「がん治療における医療機関と保険薬局との連携」を制作した。令和2年2月11日に開催したシンポジウムにおいて本DVDを公開し、参加者に実施したアンケート調査では、回答者の約9割が、DVDが参考になった、病院と薬局の連携に役立つと肯定的な評価が得られた。本年度制作したDVDは、各都道府県の薬剤師会、病院薬剤師会と全国の薬科大学・薬学部に配布したので、各地区での医療機関と薬局の連携や薬剤師教育の現場での活用が期待される。
登録販売者に関するヒアリングの結果、登録販売者の資質を確保するために、現在のガイドラインの周知徹底を図るとともに、その内容を充実させていく必要があること、登録販売者の役割・意義を地域住民や多職種に周知する必要があると考えられた。
緊急避妊薬に関する標準プログラムによる研修会開催にあたり、各都道府県で講師となる産婦人科医及び薬剤師を対象とした研修会を開催した。その後、14府県において標準プログラムによる研修会が開催され、当該研修内容は薬剤師の資質向上のために適切なものと考えられた。
登録販売者に関するヒアリングの結果、登録販売者の資質を確保するために、現在のガイドラインの周知徹底を図るとともに、その内容を充実させていく必要があること、登録販売者の役割・意義を地域住民や多職種に周知する必要があると考えられた。
緊急避妊薬に関する標準プログラムによる研修会開催にあたり、各都道府県で講師となる産婦人科医及び薬剤師を対象とした研修会を開催した。その後、14府県において標準プログラムによる研修会が開催され、当該研修内容は薬剤師の資質向上のために適切なものと考えられた。
結論
医療機関と地域の薬局が連携して実施する外来経口抗がん薬のPBPMは患者から肯定的に評価された。PBPMに基づき薬局と医療機関が連携することの有用性を映像化したDVDは、全国各地の医療や薬剤師教育の現場での活用が期待される。
登録販売者の資質確保には、現在のガイドラインの周知徹底とその内容を充実させていく必要があること、また登録販売者の役割・意義を地域住民や多職種に周知していく必要があると考えられた。
オンライン診療における緊急避妊薬を調剤するために薬剤師が受けるべき研修の標準プログラムを構築し、その適切性が確認された。今後、さらに多くの薬剤師が受講できるよう研修の開催方式を含め標準プログラムの検討を重ねる必要がある。
登録販売者の資質確保には、現在のガイドラインの周知徹底とその内容を充実させていく必要があること、また登録販売者の役割・意義を地域住民や多職種に周知していく必要があると考えられた。
オンライン診療における緊急避妊薬を調剤するために薬剤師が受けるべき研修の標準プログラムを構築し、その適切性が確認された。今後、さらに多くの薬剤師が受講できるよう研修の開催方式を含め標準プログラムの検討を重ねる必要がある。
公開日・更新日
公開日
2020-08-03
更新日
-