安全な血液の安定供給を目指した血液事業の今後の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201925017A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な血液の安定供給を目指した血液事業の今後の在り方に関する研究
課題番号
H30-医薬-指定-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院政策科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中島一格(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター)
  • 日野 学(日本赤十字社  血液事業本部)
  • 津田 昌重(一般社団法人 日本血液製剤機構)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤の安全性の向上および安定供給、外資などの国内外の関係者との関係、さらには医療機関での適正使用などの諸課題を研究対象としたものである。今後の血液事業の在り方について政策提言することである。
研究方法
国立社会保障・人口問題研究所の資料を用いてコホート要因法により2030年の献血可能人口の増減を分析した。
血小板製剤における細菌培養試験および感染性因子低減化処理血小板製剤の最近の文献や薬事食品・衛生審議会安全技術調査会報告などの知見を整理した。
全国の300床以上の施設を対象として実施した、2010年~2018年の血液製剤使用実態調査の病態別血液製剤使用量の回答結果を解析した。
論文やWebサイトなどの公開情報等をもとに血漿分画事業をレビューした。
地図情報システムを用いて輸血用血液製剤の搬送の現状を調べた。
非売血推進組織のIPFAとEBAおよび売血組織のPathogen Safety World Asiaに参加し、各国の取り組みについて調査するとともに、IPFA,EFS,LFB各施設を訪問し聞き取り調査を行った。全国144の献血ルームに対して包絡分析法を用いて経営効率を評価した。
結果と考察
2030年には50歳以下の人口層は大きく減少するが、20歳代後半から30歳代前半の人口層が少しは増加する。男女ともに50歳以下の献血者の確保が困難となる。50歳代後半から60歳代前半である人口層は、2040年には献血年齢から外れることから、将来的に献血者の確保は大きな困難を伴うと考えられる。
インターセプトおよびミラソル処理血小板製剤のいずれも出血比率では非劣性は示さなかっが、処理群では輸血量が多い、輸血間隔が短い、24時間補正血小板増加数の低下などの結果が得られた。血小板製剤の安全対策は、細菌培養の導入が効果的である。安全対策の導入に際しては初期投資およびランニングコストが要するため、薬価への反映を考えねばならない。
医療機関での血液製剤使用状況は、赤血球製剤で1病床当たりの使用量が多い病態は循環器系疾患、悪性腫瘍、血液系疾患などであった。血小板製剤では1病床当たりの使用量が多い病態は悪性腫瘍、血液系疾患、循環器系疾患などであった。新鮮凍結血漿では、1病床当たりの使用量が多い病態は循環器系疾患であった。アルブミン製剤1病床当たりの使用量が多い病態は悪性腫瘍、循環器系疾患、消化器系疾患であった。各血液製剤とも多く使用する病態は限定されており、焦点を絞って適正使用を進めることは可能と考えられた。日本ではFFPとALBの適正使用が課題である。
血漿分画事業の企業収益力の向上については、血漿分画事業者自身による事業基盤の強化とともに更なる改良がなされた血漿分画製剤に対して改良を反映した薬価収載されることが不可欠である。
輸血用血液製剤搬送時間の全国平均値は、44.1分、中央値は34.1分であった。さらに、血液製剤の約90%は74.3分以内で医療機関に搬送されていた。都市部は良好な搬送体制が構築されている。搬送時間を要するところは、山岳地帯を超えたり半島部分に沿って搬送しなければならないなど、わが国特有の地理上の特性の影響も大きいと考えられる。
北米最大の消費国で2018年の消費は95.9tであったが、2026年には175.9tになると予測される。欧州の消費は、2026年でも92.6t程度と予測されている。アジア地域は2018年においては36.4tであるが2026年には70tを超す見込みである。
効率的であった献血ルームは、有楽町献血ルーム、松本公園通り献血ルーム、越谷献血ルームの3ルームあった。劣るところは、いわき出張所、諏訪出張所、会津出張所、都庁献血ルーム、熊谷駅献血ルームなどであった。全血と成分で最も効率的なルームは都市部に多い。逆に地方都市部のルームの効率性は悪い傾向にある。ルームの効率性の格差は、都市部と地方都市部に起因すると考えられる。
結論
今後、献血者確保は困難を極めることが予想されるが、血液事業の根源である献血者の確保の有効な手立てを早く打ち立てる必要がある。また、安定供給のためには献血ルームの効率的な運用が不可欠である。
 安全性の面だが輸血用血液製剤の安全対策として、NATの個別検査化は大きく貢献しているが、重篤化が予想させる血小板製剤による輸血後細菌感染は残されたリスクの一つになる。
 安全性とも絡む血液製剤の適正使用は、FFPとALBについて使用量の多い病態に注目して適正使用を推進することは可能と考えられた。
製造原価に占める割合が高い原料血漿費については、コスト抑制を期待するところである。今後、国内のグロブリン製剤を含めた血漿分画製剤の供給体制の方向性について、内外の状況も踏まえて考えていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201925017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 318,853円
人件費・謝金 3,735,198円
旅費 321,660円
その他 2,625,250円
間接経費 0円
合計 7,000,961円

備考

備考
支出超過のため自己負担したことによる。

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
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