「専ら医薬品」たる成分本質の判断のための調査・分析及びその判断基準・範囲の整備に関する研究

文献情報

文献番号
201925016A
報告書区分
総括
研究課題名
「専ら医薬品」たる成分本質の判断のための調査・分析及びその判断基準・範囲の整備に関する研究
課題番号
H30-医薬-指定-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
袴塚 高志(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 合田 幸広(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 丸山 卓郎(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 内山 奈穂子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 大塚 英昭(安田女子大学 薬学部)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 辻本 恭(東京農工大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,991,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
無承認無許可医薬品は,医薬品としての承認や許可がないにもかかわらず,医薬品としての目的性を持たせた製品であり,これらの流通により,適正な医療機会の喪失等,様々な健康被害が予想される為,医薬品医療機器等法により,その製造,販売,授与,広告が禁止されている.本研究は,専ら医薬品たる成分本質を適切に判断するための調査・分析を行い,また,量的概念を含む判断基準の社会実装について検討し,同時に,既存の例示リストの見直し・整備を行うことで,無承認無許可医薬品の流通を防止し,国民の健康と安全を確保する目的で行われる.
研究方法
「食薬区分の判断に関する検討」では,1) 名称,他名等,部位等,備考,2) 学名,基原植物和名等,生薬名,英名等,3) 医薬品としての使用実態,4) 毒性データ,5) アルカロイド,毒性タンパク,毒薬劇薬指定成分等の含有,等の調査項目について検討し,「医薬品の成分本質に関するワーキンググループ」(食薬区分WG)に提案した.「遺伝子情報による「紅豆杉」製品の基原植物の同定について」では,「紅豆杉」と称する健康食品製品に使用されているTaxus属植物の遺伝子鑑別を行ない,「「紅豆杉」製品及びイチイ(Taxus cuspidata)の各部位におけるパクリタキセル(PTX)含量について」では,「紅豆杉」製品及びイチイの部位別のPTX含量をUPLC-UV分析により定量した.「リュウキュウガキの化学成分に関する研究」では,先島諸島で採集したリュウキュウガキの葉をMeOHで抽出し,含有化合物の単離構造決定を行った.「Dithiopropylcarbodenafil (DC)のLC-PDA-MS分析について」では, DCの標準品について,LC-PDA-MSを用いて分析条件の検討を行った.「LC-MS を用いた Cassia 属ハネセンナおよびセンナの分析に関する研究 (2)」では,日局センナとハネセンナをサンプルとして,その両者を化学的に識別する成分の探索を LC-MS データの多変量解析により行った.「非医リストの見直しに関する研究」では,従前の研究で専ら医薬品リストへの移行の候補として挙げた品目を中心として,主に含有成分の種類とその毒性,市場流通実態,健康被害情報,食経験等を調べ,専医リストへの移行を食薬区分WGへ提案する根拠資料を集めた.
結果と考察
我が国の専ら医薬品リストに例示される成分であるかどうか,依頼のあった成分本質について文献調査等を行い,天然物由来の6品目については,食薬区分WGでの議論が重要と考えられた.他方,ED治療薬類似化合物については専ら医薬品に指定すべき成分本質と判断されるべきと考察された.
「紅豆杉」製品の基原植物について,葉緑体DNAのtrnS-trnQ IGS領域の塩基配列解析を行い, Taxus wallichiana var. wallichiana と同定した.
イチイT. cuspidataにおける各部位のPTX含量は,樹皮>葉>種子>枝>心材>仮種皮の順であることが分かり,「紅豆杉」製品とイチイの心材の定量値は,ほぼ同程度であることから,イチイの種子及びコウトウスギの心材をは「非医薬品」から「専ら医薬品」に移行することが妥当と考えられた.
リュウキュウガキについて,成分検討を行い,4種のトリテルペン配糖体と2種のメガスティグマンを単離した.
強壮用健康食品への添加が危惧されるED治療薬類縁化合物DCへの対応に備え,同化合物の標準品を購入し,各種機器分析データ及びその分析法をまとめ, IS-CID法によるイオン化を利用したMSによる構造情報は,ED治療薬とその類縁化合物における構造推定やスクリーニングにも有効であることが分かった.
日局センナとハネセンナ葉を試料として LCMS データを用いた判別分析を行い,寄与成分として,センナについて 7 種,ハネセンナについて 2種の化合物を寄与成分として見出し,その中でも Vicenin-II がセンナ・ハネセンナ間においてセンナ特有の指標成分となり得ることを示した.
エンベリア,カイコウズ,カンレンボク,クジチョウ,ケイコツソウ,コオウレン,ハナビシソウ,ヒヨドリジョウゴ,ヒルガオ,ビンロウジ,ルリヒエンソウについて,専医リストへの移行を提案する根拠となり得る資料等について整備した.
結論
新規に「専ら医薬品」であるかどうか判断が求められた品目について,医薬食品局監視指導・麻薬対策課長が招集する食薬区分WGのための調査を遂行するとともに,既存の専ら医薬品リスト並びに,非医薬品リストの様々な項目について,同課の依頼に基づき検討を行った.また,イチイの種子及びコウトウスギの心材を,「非医薬品」から「専ら医薬品」に移行する改正案を作成した.

公開日・更新日

公開日
2022-01-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201925016Z