文献情報
文献番号
201925014A
報告書区分
総括
研究課題名
かかりつけ薬剤師の専門性の検討とそのアウトカムの調査
課題番号
H29-医薬-指定-008
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
今井 博久(東京大学 大学院医学系研究科 地域医薬システム学講座)
研究分担者(所属機関)
- 中尾 裕之(宮崎県立看護大学 看護学部 看護人間学Ⅲ)
- 松原 和夫(京都大学医学部付属病院 薬剤部)
- 益山 光一(東京薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,620,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまでに高齢者におけるポリファーマシーの現状、有害事象、改善方法などについては比較的多くの報告がある。その理由は日本版Beers Criteria、高齢者のガイドライン、STOPP/STARTなど高齢者における不適切な処方薬剤のツール開発が行われてきたからである。その一方で、同様なツールが開発されていない中壮年層(35歳以上65歳未満)の患者を対象にした調査研究や介入研究はほとんど行われて来なかった。こうした年齢層のポリファーマシーの実態は明らかにされておらず、また改善対策も行われていない。そこで、本研究では10種類以上の薬剤の処方を受けている中壮年層のポリファーマシー患者を対象(健康保険組合の加入者)とした。保険者からそうした患者のかかりつけ薬剤師や主治医宛に処方内容の再検討を依頼するレターを送付することにより、処方数の変化、指摘した処方薬の変更の有無、変化した薬剤の分析を行い、かかりつけ薬剤師の機能を検討することとした。
研究方法
対象者の設定には、健康保険組合全加入者の2018年7月から12月の調剤レセプトデータを用いた。対象となる6ヶ月間で一度でも処方歴のある者を抽出し、そのうち10剤以上の処方が3ヶ月以上連続している者を調査対象者とした。本研究では、漫然投与は主として急性疾患を適応にもつ薬剤や、添付文書で効果、有害事象の定期的な確認を推奨している薬剤を3ヶ月以上継続して投与している状態と定義し、処方内容の適切性評価を実施し、処方内容の再検討が必要と判断された患者を処方情報レター送付該当者とした。処方した医師、薬剤師への処方情報レター送付の可否を確認するための説明文書と同意書を健康保険組合より郵送した。
処方情報レターには、対象期間で最後に処方がされた月の処方薬の一覧表と、処方内容についての適切性評価を記載した。処方情報レターは、処方を行った担当医師と調剤を行ったかかりつけ薬剤師へ送付した。複数の医療機関をまたいで該当医薬品が処方されている場合は、薬局での調整を勧める文書を医師への処方情報レターに同封した。
処方情報レターには、対象期間で最後に処方がされた月の処方薬の一覧表と、処方内容についての適切性評価を記載した。処方情報レターは、処方を行った担当医師と調剤を行ったかかりつけ薬剤師へ送付した。複数の医療機関をまたいで該当医薬品が処方されている場合は、薬局での調整を勧める文書を医師への処方情報レターに同封した。
結果と考察
処方情報レター送付対象者36名のうち、21名に処方内容の変化を認めた。20名は1剤以上の減薬が行われ、最大で6剤、平均1.3剤の減薬であった。同種同効薬の重複、漫然投与が疑われる処方のコメントに対してはそれぞれ6名(35.3%)、16名(43.2%)に処方の削減、もしくは変更が行われたが、併用禁忌・注意および処方カスケードが疑われる処方のコメントへの対応は認めなかった。コメントへの対応の内訳をみると、胃酸分泌抑制薬と胃粘膜保護薬の併用は5名(45.5%)、鎮痛薬の長期使用例は3名(42.9%)、喀痰調整薬と鎮咳薬はそれぞれ5名(50.0%)、4名(50.0%)に減薬・変更を認めたが、経口血糖降下薬の複数使用例は1名(16.7%)に留まった。処方内容の変更がなかった15名のうち、3名は対象選定から送付までの間に処方数の大幅な減少があった(それぞれ14剤から7剤、14剤から2剤、17剤から8剤)。
処方情報レターの介入を行った36名の患者のかかりつけ薬剤師13名より事後アンケートの回答があった。かかりつけ薬剤師13名のうち、処方情報レターの提供文書を用いて処方内容の確認や服薬状況の話し合いなどを行った患者数は6名であったが、医師が事後アンケート回答をした患者は、その6名の内で3名であった。その3名について症例検討を行った。
また、3つの症例に共通するのは、かかりつけ薬剤師が処方薬剤の情報レターを利用しながら患者と面談して処方内容を確認し、更に処方した主治医と十分に連携していた点であった。
処方情報レターの介入を行った36名の患者のかかりつけ薬剤師13名より事後アンケートの回答があった。かかりつけ薬剤師13名のうち、処方情報レターの提供文書を用いて処方内容の確認や服薬状況の話し合いなどを行った患者数は6名であったが、医師が事後アンケート回答をした患者は、その6名の内で3名であった。その3名について症例検討を行った。
また、3つの症例に共通するのは、かかりつけ薬剤師が処方薬剤の情報レターを利用しながら患者と面談して処方内容を確認し、更に処方した主治医と十分に連携していた点であった。
結論
かかりつけ薬剤師は、保険者からの一元管理された処方情報を得て処方医師と連携することで患者の処方を改善する機能を有することが示唆された。今回の試みから明らかにされたことは、かかりつけ薬剤師の機能として適切な薬物治療を推進するためには「一元管理による処方情報」および「処方医師との連携」が必要不可欠な条件である点である。保険者からの処方情報は現状ではすぐに入手したり、活用したりすることは簡単ではない。そこで、かかりつけ薬剤師は薬局の現場において紙媒体あるいは電子媒体によるお薬手帳による一元管理を積極的に行い、ポリファーマシー等の処方の再検討が必要な状態であるという情報を、患者との面談で得た病状や意向と共に処方した医師に伝えることが重要である。医師は、そうした一元管理情報、処方した薬剤の薬効評価情報、患者の意向情報などを得ることで「処方薬の再検討や見直しの契機」にすることで適切な薬物治療を行おうとすることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2020-07-31
更新日
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