文献情報
文献番号
201925009A
報告書区分
総括
研究課題名
規制薬物の分析と鑑別等の手法の開発のための研究
課題番号
19KC1002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
田中 理恵(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
- 花尻 瑠理(木倉 瑠理) ( 国立医薬品食品衛生研究所 生薬部 )
- 出水 庸介( 国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部 )
- 緒方 潤( 国立医薬品食品衛生研究所 生薬部 )
- 小林 典裕(神戸薬科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は,麻薬・向精神薬取締法,覚せい剤取締法,大麻取締法及びあへん法などで厳しく規制される薬物及び植物の効果的な鑑別法を薬物取締行政に提示するために実施する.令和2年3月時点で,医薬品医療機器等法下,指定薬物として規制されている薬物は2385種類となった.また,指定薬物から麻薬に規制強化された薬物は54種類にも及ぶ.これら薬物は,所持・使用が禁止されているが,構造類似体が多く存在し,また,ほとんどの薬物において代謝物情報が未知であるため,特に,生体試料中薬物の鑑別は困難を極めている.そこで,この研究では,主に生体試料中規制薬物及び代謝物の迅速で高感度,かつ選択性の高い鑑別法開発に焦点をあて,新規に開発された質量分析装置等を用いた検討を行う.また乱用される植物について,成分分析及び遺伝子分析による鑑別法の開発を行う.以上,本研究は,法規制薬物及び植物について効果的な鑑別を行うための手法を確立することを目的としている.
研究方法
フェンタニル及びその構造類似化合物について,市販のイムノアッセイスクリーニングキットを用いて,構造類似化合物の検出及び識別の検討を行った.大麻使用者の尿中に検出される大麻代謝物を目的化合物とし,LC-MS分析において誘導体化反応の条件検討並びに高感度分析を検討した.カチノン類とフェンタニル誘導体の標準品の合成を行なった.大麻の茎部分のカンナビノイドをLC-QTOFMSで分析した.DESI-MSイメージングで大麻草の各部位に含有されるカンナビノイドの局在を調べた.大麻草由来の高純度CBD製品のGC/MSによる純度分析を行った.CBD製品を原料としてΔ9-THCを化学合成し,GC/MS及び,LC/MSで分析し,GC/MSの分析については大麻リキッドとクラスター分析を実施した.大麻のSTR及びSNPsマーカーを用いたDNAアレルパターンによる識別法の検討として20種の大麻からDNAを抽出しアレル解析を行った.特異モノクローナル抗体を活用する法規制植物成分オンサイト分析法で3種のモノクローナル抗体を用いるELISAの至適条件を検討した.
結果と考察
法規制薬物の鑑別に関する研究では,フェンタニル及びその構造類似化合物について,市販の簡易スクリーニングキットで検討した結果,国内で規制されている30化合物のうち4化合物は,5 μg/mL以下の濃度で検出が可能であった.LC-MSによる尿中違法薬物の分析法を検討した結果,THC-COOHのDansyl誘導体の検出感度は約15倍となった.また,固相抽出法を用いた尿中大麻成分代謝物のスクリーニングにおいて,尿中THC-COOH-glucuronideを25 ng/mLの低濃度で本誘導体化でスキャン及びSIMモードで良好に測定出来た.フェンタニル誘導体のAcetyl-α-Methyfentanyl,α-Methyfentanylおよびα-Methythiofentanylを効率的に合成した.また,カチノン類のN-Ethylnorpentyloneを合成した.
法規制植物の鑑別に関する研究では,大麻の茎部分をLC-QTOFMSで分析した結果,drug-typeの茎はTHCAが,fiber-typeの茎はCBDAが,それぞれ上側の表皮に最も多く含まれていた.また上の区分の方が含量が多いことがわかった.国内在来種の大麻草各部位におけるカンナビノイドの局在をDESI-TOF MS及びDESI-IMS-Q-TOF MSイメージングで検討した.主に花穂,苞葉,葉でTHCAに由来すると考えられるイオンm/z 357の分布が観察され,蛍光顕微鏡での観察された腺毛の分布と相関することが示唆された.大麻草由来の高純度CBD製品を原料としてΔ9-THCを合成し,GC/MS,LC/MSで分析した結果,Δ9-THC,未反応のCBD及びカンナビノイド標準品に該当しないピークが得られた.これらと大麻リキッドのGC/MSによる分析結果について,多変量解析ソフトを用いてクラスター分析を実施した結果,これらを明確にクラスター分けすることができた.20種の大麻からDNAを抽出し,ミトコンドリアおよび葉緑体DNA上のSTRマーカー4種を用いアレル解析を行った.系統解析では嗜好用大麻1銘柄を除く9銘柄は国内栽培種と明確に分離した.3種のモノクローナル抗体,Psi,TBS-Psi,Pybを用いてシロシンとシロシビンのELISAの至適条件を検討した.幻覚性キノコの乾燥粉末を測定した結果, シロシンについて有意な測定値が得られた.
法規制植物の鑑別に関する研究では,大麻の茎部分をLC-QTOFMSで分析した結果,drug-typeの茎はTHCAが,fiber-typeの茎はCBDAが,それぞれ上側の表皮に最も多く含まれていた.また上の区分の方が含量が多いことがわかった.国内在来種の大麻草各部位におけるカンナビノイドの局在をDESI-TOF MS及びDESI-IMS-Q-TOF MSイメージングで検討した.主に花穂,苞葉,葉でTHCAに由来すると考えられるイオンm/z 357の分布が観察され,蛍光顕微鏡での観察された腺毛の分布と相関することが示唆された.大麻草由来の高純度CBD製品を原料としてΔ9-THCを合成し,GC/MS,LC/MSで分析した結果,Δ9-THC,未反応のCBD及びカンナビノイド標準品に該当しないピークが得られた.これらと大麻リキッドのGC/MSによる分析結果について,多変量解析ソフトを用いてクラスター分析を実施した結果,これらを明確にクラスター分けすることができた.20種の大麻からDNAを抽出し,ミトコンドリアおよび葉緑体DNA上のSTRマーカー4種を用いアレル解析を行った.系統解析では嗜好用大麻1銘柄を除く9銘柄は国内栽培種と明確に分離した.3種のモノクローナル抗体,Psi,TBS-Psi,Pybを用いてシロシンとシロシビンのELISAの至適条件を検討した.幻覚性キノコの乾燥粉末を測定した結果, シロシンについて有意な測定値が得られた.
結論
本研究は,厚生労働省の薬物取締行政に直接貢献する研究であり,国の乱用薬物対策に即したものである.また今後出現しうる新規の乱用薬物の鑑別についても有用であると考えられる.
公開日・更新日
公開日
2021-01-06
更新日
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