危険ドラッグ及び関連代謝物の有害作用解析と乱用実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
201925006A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグ及び関連代謝物の有害作用解析と乱用実態把握に関する研究
課題番号
H30-医薬-一般-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原正明(国際医療福祉大学 薬学部)
  • 浅沼幹人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科神経情報学分野)
  • 北市清幸(岐阜薬科大学薬物動態学教室)
  • 嶋根卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,192,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
危険ドラッグとして合成カンナビノイドが流通している。合成カンナビノイドのうち、JWH-018などをはじめとするnaphthoylindole 類については包括指定の対象となり、流通が激減した。一方、合成カンナビノイドにおいて、包括指定対象外の薬物の流通が台頭しており、現行の包括指定対象範囲については、再評価を行い範囲拡大等の対応が急務である。現在までに、carboxamideを有する合成カンナビノイドが多く検出されており、包括的な規制対象として機能解析が重要となっている。同様に、救急医療の現場での対応を考えた場合、危険ドラッグの検出に関しては、更なる検討が必要である。本研究では、carboxamideを有する合成カンナビノイドの包括指定の可能性、フェンタニル活性予測法の確立、細胞毒性の検出手法に関する研究を実施した。また、合成カンナビノイドについては、生体からの検出を可能にするため、代謝産物の検出およびその機能解析を行った。さらに、危険ドラッグおよび大麻の乱用状況に関する実態調査を実施し、危険ドラッグ対策手法策定に関する考察を行った。
研究方法
新規精神活性物質であるcarboxamideを有する合成カンナビノイドの行動薬理学的解析および細胞による毒性評価を行い、有害作用予測法の妥当性を検討した。コンピュータシミュレーションによる危険ドラッグの有害性予測法に関する研究としては、フェンタニル類縁化合物について、オピオイドμ受容体を標的にしたドッキングスタディを行い、ドッキングスタディの評価関数と実際の活性値との相関を調べた。検出系の研究としては、毒性発現における核内DNA結合タンパク質high mobility group box-1 (HMGB1)の役割を検討した。また、合成カンナビノイドの主要な排泄経路の同定を試みた。疫学調査:音楽系の野外フェスティバルをフィールドとして、危険ドラッグならびに大麻乱用実態に関する携帯端末を活用したオンライン調査を実施した。
結果と考察
合成カンナビノイドのうちcarboxamideを含有する化合物について、動物実験とカンナビノイドCB1受容体発現細胞による解析により、中枢作用強度ならびに毒性発現を予測できると考えられる。同様に、コンピュータシミュレーションによる有害性予測では、フェンタニル類縁化合物について、オピオイドμ受容体を標的にしたドッキングスタディを行った。ドッキングスタディの評価関数と実際の活性値にはある程度の相関を示すことが明らかとなった。昨年度のQSARモデルでの解析と比較すると、予測に関する確度はQSAR解析>ドッキングスタディと考えられた。現時点では、QSAR解析を適切に利用することにより、フェンタニル類縁化合物の包括規制への展開が効果的であると考えられる。また、モノアミン系培養神経細胞を利用して、危険ドラッグの細胞毒性を評価したところ、毒性の発現には核内DNA結合タンパク質HMGB1の誘導が関与していることが明らかになった。HMGB1の発現および核外移行は神経障害、特に神経炎症の鋭敏な指標になると考えられた。さらに、合成カンナビノイドの排泄経路については、尿サンプルからは未変化体および代謝物はほとんど検出されなかった。一方、胆汁中からは未変化体と代謝物の検出が可能であり、合成カンナビノイドの主要な排泄経路としては胆汁である可能性が示唆された。疫学調査:音楽系の野外フェスティバルをフィールドとして、危険ドラッグおよび大麻乱用に関する実態調査を行った。437名より有効回答を得た。大麻の生涯経験率(過去1年経験率)は、12.6%(2.5%)であった。使用経験のある大麻の形状は、乾燥大麻に加えて、大麻ワックス、大麻クッキーなどの加工品が増加していた。
結論
本研究より、合成カンナビノイドのうちcarboxamide を含む基本化学構造を元に、包括指定対象範囲を定義できる可能性が示唆された。コンピュータシミュレーションによるQSAR解析を利用することにより、フェンタニル類縁化合物の有害作用の推測が可能となり、包括規制への展開が期待できる。また、合成カンナビノイドの主要な排泄経路としては胆汁である可能性が示唆された。更に、本検討で見出したHMGB1は危険ドラッグにより惹起される神経細胞毒性発現の共通分子となりうる可能性がある。本研究の評価システムは、危険ドラッグの中枢作用および有害作用発現の迅速な評価法として有用であり、得られる科学データは規制根拠として活用できると考えられる。同時に、様々なイベントを通じて、危険ドラッグや大麻などの薬物依存症からの回復へ向かうための対策が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201925006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,492,000円
(2)補助金確定額
3,492,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,477,922円
人件費・謝金 174,448円
旅費 1,009,623円
その他 530,007円
間接経費 300,000円
合計 3,492,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
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