文献情報
文献番号
201925005A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグ等の乱用薬物に関する分析情報の収集及び危害影響予測のための研究
課題番号
H30-医薬-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部第3室)
研究分担者(所属機関)
- 田中 理恵( 国立医薬品食品衛生研究所 生薬部第3室 )
- 緒方 潤( 国立医薬品食品衛生研究所 生薬部第3室 )
- 諫田 泰成( 国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
- 出水 庸介( 国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
- 石井 祐次(九州大学 大学院薬学研究院)
- 森 友久(星薬科大学 薬理学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
指定薬物制度に対応し,具体的な化合物や植物を指定薬物として指定する際に考えられる問題点を科学的に解決し,規制化に必要な評価手法及び科学的データを監視指導・麻薬行政に提供することを目的とする.
研究方法
新規流通危険ドラッグについて,国連等の国際公的機関が発信する海外薬物情報を広く収集するとともに,問題となりうる製品を入手し,新規流通化合物の構造決定及び分析用標品の準備,各種分析データの整備,識別法等を検討した.一方,危険ドラッグの中枢神経系への影響を検討するために,in vitro及びin vivoの新規評価法を検討した.また,危険ドラッグのマウス脳メタボロームに及ぼす影響を解析した.さらに,危険ドラッグ市場に流通する植物製品のDNA分析による基原種同定及び活性成分分析を行った.
結果と考察
令和元年度に入手した危険ドラッグ製品から8種類の新規流通化合物を検出・同定した.シート状製品から極微量に含有される3種類の新規流通LSD誘導体を検出・同定し,定量NMRによる定量法を検討した.通常の測定では識別困難な規制薬物シクロプロピルフェンタニル及びクロトニルフェンタニル,未規制薬物メタアクリルフェンタニルの3異性体について,分析用標品がなくても識別可能なGC-CI-QTOF-MSを用いた分析法を開発した.指定薬物3-フルオロフェンメトラジン(3-FPE)と異性体2-FPEおよび4-FPEが,HFB誘導体化によるGC-MSおよびフェニルカラムを用いたLC-PDAで測定される保持時間により識別可能であることを示した.LSD(麻薬)及びLSD構造類似10化合物(指定薬物4化合物)について,オンサイトでの検出が可能なイムノクロマト法を原理とした簡易スクリーニングキットを用いた検出法を検討した.フェンタニル類146化合物を対象としたLC-IMS-Q-TOFMSを用いたスクリーニング法を確立し,尿中薬物の検出条件や検出限界,再現性等を検討した.さらにヒト尿実試料の分析に適用し,フェンタニル及びその代謝物を検出した.新規麻薬のフェンタニル誘導体3化合物及び新規指定薬物のLSD誘導体1化合物の分析用標品の合成を行った.また合成した3種類のフェンタニル誘導体について,μ-オピオイド受容体に対するリガンド結合領域の検出との結合様式解析を行った.
一方,危険ドラッグの中枢作用を科学的に評価することを目的として,新規活性評価法を検討した.マウス小脳スライス標本とパッチクランプ法によるin vitro評価法を用い,危険ドラッグF-phenibutの中枢作用性のメカニズムを解析した結果,協調運動と運動学習に重要な役割を果たす小脳の機能に対して運動障害等の有害作用を示す可能性が示唆された.ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いた多点電極アレイシステムにより,3種類の乱用薬物を評価した結果,メタンフェタミンの暴露により用量依存的にスパイクの頻度を示すmean firing rate が増加し,JWH-018及びケタミンの暴露により減少が認められた.合成カンナビノイドMDMA-CHMICAについて, 低用量での新奇物体認識試験による学習記憶能力への影響について検討したところ,作用濃度域が狭いことが推定された.また,バイオマーカーとして期待される内因性カンナビノイド濃度の定量を実施した.MDMAあるいは THCの弁別刺激効果に対する各種幻覚剤を用いた般化試験を行なうことにより,幻覚を誘発する薬物における感覚上の類似性を検討した.DMTが作用するsigma-1受容体の作動薬について検討した結果,一部のsigma-1受容体作動薬は,MDMAあるいはTHC様の感覚を示すこと明らかとなった.
植物由来危険ドラッグ製品について,42製品のDNA分析を行った結果,30製品が幻覚成分DMT含有植物Acacia confusaであった.沖縄県に定着しているAcacia confusaを採取し,DNA分析及び根皮等各部位ごとのDMTの含有調査を行い,流通製品と比較した.また,誤同定と思われる本植物種の公開塩基配列情報に関し,新たに塩基配列を登録してデータベース上に公開した.DNA情報を利用したマジックマッシュルーム判別法を検討するために,まず幻覚性成分であるサイロシビン合成に関与するPsilocybe cubensisの4種の遺伝子のクローニングを行った.
一方,危険ドラッグの中枢作用を科学的に評価することを目的として,新規活性評価法を検討した.マウス小脳スライス標本とパッチクランプ法によるin vitro評価法を用い,危険ドラッグF-phenibutの中枢作用性のメカニズムを解析した結果,協調運動と運動学習に重要な役割を果たす小脳の機能に対して運動障害等の有害作用を示す可能性が示唆された.ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いた多点電極アレイシステムにより,3種類の乱用薬物を評価した結果,メタンフェタミンの暴露により用量依存的にスパイクの頻度を示すmean firing rate が増加し,JWH-018及びケタミンの暴露により減少が認められた.合成カンナビノイドMDMA-CHMICAについて, 低用量での新奇物体認識試験による学習記憶能力への影響について検討したところ,作用濃度域が狭いことが推定された.また,バイオマーカーとして期待される内因性カンナビノイド濃度の定量を実施した.MDMAあるいは THCの弁別刺激効果に対する各種幻覚剤を用いた般化試験を行なうことにより,幻覚を誘発する薬物における感覚上の類似性を検討した.DMTが作用するsigma-1受容体の作動薬について検討した結果,一部のsigma-1受容体作動薬は,MDMAあるいはTHC様の感覚を示すこと明らかとなった.
植物由来危険ドラッグ製品について,42製品のDNA分析を行った結果,30製品が幻覚成分DMT含有植物Acacia confusaであった.沖縄県に定着しているAcacia confusaを採取し,DNA分析及び根皮等各部位ごとのDMTの含有調査を行い,流通製品と比較した.また,誤同定と思われる本植物種の公開塩基配列情報に関し,新たに塩基配列を登録してデータベース上に公開した.DNA情報を利用したマジックマッシュルーム判別法を検討するために,まず幻覚性成分であるサイロシビン合成に関与するPsilocybe cubensisの4種の遺伝子のクローニングを行った.
結論
指定薬物総数は令和元年3月末時点で2385となった.本研究成果の一部は,令和元年度に5回実施された指定薬物指定の根拠資料の一部として用いられた.また,分析データは監視指導・麻薬対策課長通知として発出されるとともに,国立衛研違法ドラッグ閲覧システムに登録され公開された.本研究結果は危険ドラッグの規制化に有用な情報を提供し,国の監視指導行政に直接貢献するものである.
公開日・更新日
公開日
2021-01-06
更新日
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