個人輸入されるライフスタイルドラッグの実態に関する研究−主に美容関連薬及び脳機能調整薬について−

文献情報

文献番号
201925003A
報告書区分
総括
研究課題名
個人輸入されるライフスタイルドラッグの実態に関する研究−主に美容関連薬及び脳機能調整薬について−
課題番号
H30-医薬-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健学総合研究科 メディ‐クウオリティ セキュリティ講座)
研究分担者(所属機関)
  • 前川 京子(同志社女子大学 薬学部)
  • 秋本 義雄(金沢大学 医薬保健学総合研究科 メディ‐クウオリティ セキュリティ講座)
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
  • 大柳 賀津夫(北陸大学 薬学部)
  • 平賀 秀明(東邦大学 薬学部)
  • 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
美容目的の未承認医薬品に関する要望書が、薬害オンブズマン会議から提出された(H24)。また、スマートドラッグの個人輸入について、参議院厚生労働委員会(H29)で取組み強化が要請された。すでに行政的、専門的な施策が講じられてきたが、現時点において美容や脳機能向上等を目的とした個人輸入医薬品及び国内ネット販売化粧品について実態を明らかにし、今後の対策の参考に資する調査を目的とする。
研究方法
1)医薬品(全般)の個人輸入実態調査 平成30年度に実施したインターネットによる医薬品個人輸入の消費者実態調査の結果を詳細解析した。
(2)医師による美容関連薬個人輸入に関する実態調査 医療情報専門サイトの登録会員で美容医療経験のある美容外科、形成外科及び皮膚科を標榜する医師に、質問票を用いたアンケートによるインターネット調査を実施した。
(3)美容関連薬による健康影響に関する文献調査 ウェブによる文献と情報の収集・整理及びそれらを基にした今後の課題の検討。健康被害はPubMed等でのデータベースから検索ワードにより検出した論文を抽出した。
(4)脳機能調整薬の使用実態等に関するSNS調査 ウェブ上で交わされる脳機能調整薬の情報と文献の収集・整理及びそれを基にした今後の課題の検討。健康被害はPubMedで検索ワードによる文献の検出を行った。
(5)まつげ美容液に含まれるビマトプロスト等の医薬品成分の分析法の構築 ビマトプロストを含む10種のプロスタグランジンF2a(PGF2a)類縁体の標準物質を購入し、HPLC-MS/MSによる測定系を構築した。前年度に試買したまつげ美容液1種について、PGF2類縁体の含有の有無を確認した。
(6)アナボリックステロイドの試買・調査・分析 Google Japanで、メタンジエノン製品を扱う個人輸入代行サイトから購入可能なすべての製品を購入した。注文サイトの観察並びに入手製品について、外観観察、真正性調査、およびラマン散乱分析を行った。
結果と考察
(1)医薬品(全般)の個人輸入実態調査: 副作用様症状経験者には、通院が必要となるなど重篤な有害事象も生じていた。しかし、リスクの認識や副作用様症状の経験が、その後の個人輸入中止に必ずしもつながらないことが示唆された。 
(2)医師による美容関連薬個人輸入の実態調査 1年以上の美容医療経験医師の美容薬個人輸入の経験割合は33.9%であり、輸入経験ありの医師60名のうち今後も輸入意向者は73.3%であった。最多の輸入理由は、国内で承認・販売されていない医薬品の使用希望だった(38.3%)。添付文書が無い又は外国語のみの記載(10.0%)等の不具合もあった。注射用製剤であるボツリヌス毒素製剤(25.0%)及びヒアルロン酸製剤(18.3%)の輸入経験者が多く、両製剤によると考えられる通院加療程度の副作用・有害事象も発現した。
(3)美容関連薬による健康影響に関する文献調査 健康被害はアリストロキア酸、ウスニン酸、シブトラミン、ジニトロフェノール(DNP)、ハイドロキノンまたはコルチコステロイドを含む製品で生じた。死亡原因となったのはDNP含有製品とハイドロキノンだった。
(4)脳機能調整薬の使用実態等に関するSNS調査 脳機能調整薬の個人輸入に薬監証明が必要とされ、輸入代行サイトでは取り扱わない又は薬監証明が必要と掲載するなどの成果が見られた。ツイッター上でも投稿数の減少は見られたが、指定成分の入手や効果の紹介、原因不明の有害事象など引き続き高い関心が認められた。今後、原因成分及び被害状況を明らかにする。
(5)まつげ美容液に含まれるビマトプロスト等の医薬品成分の分析法の構築 10種のPGF2類縁体の標準物質を用いて作成した検量線は、0.1~5.0 Mの範囲で良好な直線性を示した。まつげ美容液モデルアイズ・モデラッシュを、本測定系で分析した結果、ビマトプロストを含有することを確認した。
(6)アナボリックステロイドの試買・調査・分析 個人輸入代行14サイトから、メタンジエノン製品4種15サンプルを入手した。ボトル包装の気密性や入数などに問題のあるサンプルがあった。ラマン散乱分析の結果、同一製品からは類似したラマンスペクトルが得られた。4製品のラマンスペクトルは目視で3通りあり、異なる2製品がよく似た含有成分組成・形状である可能性が示された。
結論
痩身など美容関連医薬品が一般人や医療従事者による個人輸入医薬品で最多であった。脳機能調整薬は一部が薬監証明対象とされた後も、SNS上で高い関心を集めていた。使用実態、健康影響を明らかにし、不良品、偽造品の同定・検出技術を高めた。

公開日・更新日

公開日
2021-12-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-12-23
更新日
2021-12-27

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201925003Z