腸管粘膜バリア破綻条件下での高分子化合物の経口暴露による毒性影響の解明

文献情報

文献番号
201924038A
報告書区分
総括
研究課題名
腸管粘膜バリア破綻条件下での高分子化合物の経口暴露による毒性影響の解明
課題番号
19KA3004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
井手 鉄哉(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 松下 幸平( 国立医薬品食品衛生研究所 病理部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,234,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年,ポリスチレン等の高分子化合物が様々な食品類から検出されているが,これら高分子化合物の経口暴露によるヒトへの生体影響を評価するためのデータは乏しい.一方で,腸管は粘液や上皮細胞から構成される粘膜バリアで保護されていることから,経口暴露によって高分子化合物がヒトの体内へ吸収される量は少ないと予想されるが,腸管の炎症性疾患により粘膜バリアが破綻した条件下では,明確な評価に足るデータは乏しいものの,高分子化合物は直接腸管の深部組織に接することとなり,通常とは異なる生体影響を示す可能性がある.本研究では,デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の自由飲水投与による腸炎モデルラットを作製し,健常ラットと腸炎モデルラットへ高分子化合物を反復経口投与した際の毒性影響や体内動態の差異について比較・検証する.
研究方法
本年度は,健常ラットと腸炎モデルラットを用いた高分子化合物(本研究ではポリスチレン粒子を用いる)の反復経口投与実験を実施するための条件設定を行った.腸炎モデルラット作製のためのDSS自由飲水投与の条件設定では,6週齢の雄性F344ラット各群4匹に,DSSを1.0または3.0 %の濃度で1週間自由飲水投与し,投与終了後に腸管を摘出し,病理組織学的検査を実施した.ポリスチレン粒子の投与条件設定では,雌雄F344ラットに平均一次粒径0.3 μmまたは0.03 μmのポリスチレン粒子を0(対照群),200または1000 mg/kg 体重の投与量で単回強制経口投与し,投与後14日間経過後に主要臓器を摘出し,臓器重量測定を実施した.
結果と考察
DSS自由飲水投与の条件設定では,直腸においては3.0 % 濃度群でび漫性の潰瘍性病変がみられた一方で,1.0 % 濃度群では散在性の糜爛性病変が認められた.結腸においては3.0 % 濃度群で固有層及び粘膜下織におけるび漫性の炎症細胞浸潤がみられた一方で,1.0 % 濃度群では固有層における散在性の炎症細胞浸潤が認められた.小腸ではいずれの投与群においても著変は認められなかった.腸炎モデルラットを用いたポリスチレン粒子の反復経口投与実験を行う上では,若干軽度の腸炎が持続的に誘発されたラットを用いるのが適切と考えられたことから,3.0 %の投与濃度は不適と判断した.
また,ポリスチレン粒子の投与条件設定では,実験期間を通して,いずれの群においても死亡動物は認められず,一般状態の変化も認められなかった.実験期間中の体重推移については,ポリスチレン粒子投与群と対照群間に有意な差はみられなかったが,粒径0.03 μmの1000 mg/kg体重群では雌雄ともに体重増加抑制の傾向が認められたことから,粒径の小さなポリスチレン粒子ほど毒性影響が強く発揮される可能性が示唆された.
結論
DSS自由飲水投与の条件設定により,腸炎を持続的に誘発するには3.0 %より低い濃度が適切であることが明らかになったことから,現在,3.0 %よりも低濃度のDSSを用い,ポリスチレン粒子の反復経口投与実験の実験期間中に軽度な腸炎を持続的に誘発できる自由飲水投与の条件を検討している.また,ポリスチレン粒子の投与条件設定により,今後実施する反復経口投与実験では,毒性影響がより強く発揮される可能性がある粒径0.03 μmのポリスチレン粒子を使用し,高用量を1000 mg/kg 体重/日に設定し,公比5で除して中間用量を200,低用量を40 mg/kg 体重/日とする方針を定めた.来年度は健常ラットと腸炎モデルラットを用いたポリスチレン粒子の反復経口投与実験を実施し,健常ラットと腸炎モデルラットそれぞれについて無毒性量を決定し,毒性影響の比較を行う.

公開日・更新日

公開日
2020-10-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201924038Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,234,000円
(2)補助金確定額
3,234,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,110,437円
人件費・謝金 0円
旅費 95,984円
その他 28,242円
間接経費 0円
合計 3,234,663円

備考

備考
差額は自己資金での支払い

公開日・更新日

公開日
2021-08-27
更新日
-