安全な高吸収化機能性食品の開発支援を目指した、安全性評価のための指標の抽出と標準化に向けた研究

文献情報

文献番号
201924032A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な高吸収化機能性食品の開発支援を目指した、安全性評価のための指標の抽出と標準化に向けた研究
課題番号
H30-食品-若手-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
長野 一也(大阪大学大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、機能性食品の中でも、リスクに直結する可能性がある「吸収性を改善(曝露量が増加)した機能性食品」に着目し、独自の「物性-動態-毒性の連関解析手法」を適用することで、安全な高吸収化機能性食品を開発する際の指標(動態学的因子など)の抽出を目的とする。具体的には、独自処方の高吸収性非晶質クルクミンを開発する中で、吸収特性(水溶性/消失速度など)の異なる製剤を多数有しているため、それらの物性と動態、毒性を比較することで、高吸収化製剤の安全性を評価するうえでの指標を抽出し、開発する際の安全性評価の標準化・ガイドライン策定に資する知見の収集が期待される。
研究方法
物性評価には、1H-NMRを用いて、NOESYにより、分子間相互作用を解析した。また、安定性の評価には、40℃/75% RHによる加速試験を実施し、水溶性は溶出試験により解析した。動態評価のうち、吸収性はラットを用いて、Area Under Curveを比較し、蓄積/代謝は昨年度構築したLC-MS/MS系を活用して定量した。毒性は、90日間の反復投与後、体重・臓器重量、血球検査、生化学検査などにより評価した。
結果と考察
上記の目的を達成するため、昨年度は、各項目を解析するためのアッセイ系の足がかりが構築できた。そこで、本年度は、以下のように、アッセイ系を最適化するとともに、実際に、様々な非晶質製剤を比較することで、品質に関わる知見や評価指標を抽出できた。
1) 水溶性について、相互作用に着目し、NOESY解析した結果、「CUR同士の相関ピークの消失」を指標に、非晶質性の質を担保しうることを提示した。
2) 安定性について、PGFEの配合によって固化しやすくなるものの、水溶性には影響しないことを提示するとともに、高分子ポリマーや分散剤自体の吸湿性に違いがあり、固化の要因になりうることを示した。
3) 構築したアッセイ系で、様々な製剤を比較した結果、高分子ポリマーの使分けで、吸収プロファイル(速効型/徐放型)を制御しうることを提示した。
4) 蓄積性を評価した結果、組織分布したCURは、24時間以内に代謝/排泄され、蓄積性が少なく、CURは高吸収化製剤としても安全性が高いことを提示した。
5) CURの代謝物として、グルクロン酸抱合体、硫酸抱合体、グルクロン酸抱合/硫酸抱合体が見出され、特に、グルクロン酸抱合体が多くを占めていることを見出した。また、吸収されたCURは速やかに代謝され、末梢血中では殆どグルクロン酸抱合体であり、上記の蓄積性と同様、CURは高吸収化製剤としても安全性が高いことを提示
6) CURの毒性評価としては、肝臓に着目した系が適しうることが示唆された。
結論
これらの成果をまとめて考えることで、安全な高吸収化機能性食品の開発のためには、以下の対応策を講じることが重要な可能性を提示した。
1. [水溶性]と[安定性]の解析から、高水溶性非晶質製剤の品質を担保するためには、①アルミ蒸着袋のように、「包装」を考慮するか、②水溶性と製剤的安定性のバランスで「分散剤PGFEの配合量」を調整するか、③非晶質化させるための「高分子ポリマーや分散剤の吸湿性」を考慮することが、高吸収化非晶質製剤の品質担保に対する対応策になりうる。
2. [吸収]の解析から、高分子ポリマーを使い分けることによって、吸収プロファイル(速効型・徐放型)を変化させることができ、安全で有用な製剤設計を最適化することが可能である。
3. [蓄積性]と[代謝]、[毒性]の解析から、安全性評価では、単に、機能性食品を投与して、毒性を観察するのではなく、食品成分の蓄積性や代謝といった動態的要素をセットで考慮することにより、高確度で理論的な毒性発現予測につながりうることを提示した。
今後、本年度に最適化した評価系を用いて、安全性を担保するための指標の抽出をさらに図る。また、抽出された指標をもとに、様々な製剤を比較することで、安全な高吸収化機能性食品の開発のための対応策などを見出し、安全性評価の標準化・ガイドライン策定に資する知見の収集を目指す。

公開日・更新日

公開日
2021-11-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201924032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,512,400円
人件費・謝金 0円
旅費 454,000円
その他 733,600円
間接経費 2,300,000円
合計 10,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-10-18
更新日
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