食品に残留する農薬管理における方法論の国際整合に関する研究

文献情報

文献番号
201924025A
報告書区分
総括
研究課題名
食品に残留する農薬管理における方法論の国際整合に関する研究
課題番号
H30-食品-指定-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田友紀子(農林水産省)
  • 登田美桜(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,268,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、わが国における最大残留基準値(MRL)設定の国際整合の強化及び不整合な状態への回帰の防止を目的とし、FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)による最新の評価やその結果及び課題から、背景となる科学的考察を明らかにし、その結果に基づいて、MRL設定方法の基本と考え方をまとめた文書(MRL設定ガイド)の更新を検討する。示唆に富んだJMPR評価書を選定し、その翻訳と解析並びに解説を行い、わが国の評価者の能力向上に資する文書を開発する。MRL設定に必要なデータへの要件を明確に示した指針(MRL設定のためのデータ要件ガイドライン)の厚生労働省による策定を支援する。さらに、国内の評価者がより評価に直結した実務で活用可能な指針(評価者ガイド)を策定する。
研究方法
JMPRにおいて一部のデータ解析に関連する要望書が提出され、それへの回答が一般課題(General considerations)として取り上げられたこと及び、国内における現在あるいは今後のMRL設定の参考とすべきとの判断を考慮して2,4-Dの評価書を選択し、正確に翻訳し、MRL設定ガイドにも含めた原理・原則に関する留意点等を加えながら解説した。また、MRL設定ガイドの更新を検討するためにも、2015年~2018年の3年間に発行されたJMPR報告書により報告された一般課題について、議論の背景と動向を調査して要点をまとめた。さらにOECDガイドライン等の関連文書を活用し、農薬等製造事業者等に対しデータの要件を明確に示す指針「MRL設定のためのデータ要件ガイド」を厚生労働省が策定するにあたり、(1)特定し解決策を示した多くの試験に含まれる現在の問題点への厚生労働省による対応を分析し、(2)MRL設定に最重要である作物残留試験のさらに詳細な問題点の分析と解決策を提言した。
結果と考察
 2,4-Dにについて実施された1998年、2001年及び2017年の評価を対象に検討した。3年分の評価書全てを併せた約170頁を、原文に含まれる誤記等の特定と合わせ、科学的な完全性を損なわずに翻訳した上で、MRL設定ガイドに示された原理・原則のどの様な適用により各種データが解析され評価書にまとめられたのかといった解説を加えた。本文書を、各種試験の結果をまとめ評価した「Evaluation」から、リスク管理上必要となるMRL案等を勧告した「appraisal」へと読み進めることで、どのようなデータが求められそして整理され、何を原理・原則としてそれらデータが解析・評価され、さらには判断がされているのかについて、理解が深められることが期待される。その他、データ要件ガイド開発に関連し、農薬残留物の凍結保存安定性に関するOECDテストガイドラインの翻訳とキーポイントの抽出を行った。
 JMPRにおいて特定された新たな課題のうち、(1)果菜類(ウリ科以外)のグループMRLの設定プロセスと、(2)生涯よりも短期の暴露推定の2つの課題を抽出し、その科学的な背景を明らかにした。
 作物残留試験を対象とするOECDテストガイドラインのキーポイントをまとめ、今後のデータ要件ガイドの開発に向けて提言した他、(1)MRLの対象として容易かつ迅速に分析でき、使用基準に従って農薬が使用されたことを確認できる物質だけを含むこと。その際毒性は直接的な要因とはならないこと。一方、暴露評価の対象としては、毒性が懸念され、ある程度の濃度で存在する代謝物を含むこと。(2)使用方法が同じであれば、剤型が異なるごとに作物残留試験を2例ずつ要求することをやめ、最も残留濃度が高くなる使用方法に基づき同じ使用方法の作物残留試験データの全てを活用して、OECD MRL Calculatorにより MRLを導出する(プロポーショナリティの原則及び25%ルールの活用を含む)、(3)暴露評価においては推定暴露量をADIの80%ではなくADIと比較すべきこと、などをまとめ、基本原則を提示した。
結論
国内において、MRL設定を行う政府職員が、その際に従うべき原理・原則を実地で理解するための一助となることが期待される文書が、JMPRが発行する2,4-D評価書を素材として開発された。近年、JMPRにより新たに特定された課題の背景と議論の動向が調査され、これまでに開発したMRL設定ガイド更新のための基礎資料が作成された。これまでのわが国におけるMRL設定の課題がより明確にされ、今後どの様に「MRL設定のためのデータ要件ガイド」を開発すべきか、特に今年度研究では作物残留試験に関して、各種提言ともにその方針が具体的に示された。

公開日・更新日

公開日
2020-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201924025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,268,000円
(2)補助金確定額
2,268,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,242,466円
人件費・謝金 205,200円
旅費 163,158円
その他 657,176円
間接経費 0円
合計 2,268,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-11-09
更新日
2021-08-27